マリー(Murree)
カラコルム・ハイウエー
@Mar/'07 Murree,Pakistan



高度2500メートルの山腹に一際豪華な5つ星ホテルBhurban Intercontinental hotel
遠くに見える万年雪をいただく山々はカシミール地方、インドとの国境線は今だ引かれていない
ここではテラスから景色を楽しむだけ、飲食は沿道の土地のレストランへ移動する 


カラコルム・ハイウエー、現代のパキスタン領イスラマバード(ラワルピンジ)と中国のカシュガルを結ぶ 1,400km に及ぶ幹線道路である。 その道はシルクロードと呼ばれる世界最長(?)の街道の一部でもある。 街道の最高地点、中国との国境に横たわるKhunjerah峠は 4、700m の高度を有し、昔と言わず現代でも超えるのは大変な峠であるに違いない。 もっとも現代の航空機なら簡単だが。 ハイウエーとは名ばかりの崖淵にはガードレールも無い、舗装は至るところで途切れる登り下りの車がやっとすれ違う狭い険しい山道である。 だがこの道は歴史に名を馳せる、西洋と東洋が遭遇した、あるいはギリシャ文明と仏教文明が遭遇した、はたまた古代の通商ルート、シルクロードの舞台なのである。 中国から絹や陶器が、インドから仏教がギリシャから彫刻や壷が行き交った道である。 インドで発祥した仏教は偶像を持たなかったと言う。 このガンダーラ(現代のパキスタン東北部、ペシャワールがその中心地だたと言われる))でギリシャ文明と遭遇した際に、ギリシャ彫刻の影響で仏像が彫られたらしい。 仏像は正に東西の文明が融合したその産物だったのか。

休日、イスラマバードから120km程東北に位置するMurreeへ出かけた。 カラコルムハイウエーのほんのはしりのバイパス道である。 信頼が置ける土地の運転手を頼んでレンタカーを運転してもらうことにした。 パキスタンは危険度が極めて高い国の一つである。 危険情報は常に新しいものを入手して事故に巻き込まれないように細心の注意を払って行動しなければならない。 



途中のお茶休憩所でだされたポテトてんぷら、私用された油の鮮度は知らぬが旨い



ホテルを出て暫く平坦な良く整備された幅の広いを運転手付きのレンタカー、カローラは快適に走る。 Murree道に入る地点に料金所がある。 この料金所を過ぎると、途端に道幅が狭くなり中央分離帯の無い狭い2車線道となる。 そして曲がりくねった勾配のきつい山道になる。 それでもれっきとした幹線道路なのである。 冬季雪が積もれば朝には軍が除雪を済ませてハイウエーは何時でも使える状態にしてあるらしい。 荷を満載したトラックや年期の入ったバス等がひっきりなしに行き交う道でもあるのだ。 荷を満載したトラックはローギアーでうなりながら超低速で坂道を登りまた下る。 その後には身軽な乗用車やピックアップが延々と金魚の糞の如く繋がってしまう。 所謂幹線道路である。 当然対向車は多いのだ。 遅いトラックを狭いワインデング道で追い越すことは極めて困難な仕事である。 此方の運転手は最高のサービスは早く安く人や物を運ぶことと信じ疑わない。 安全と言う概念は2の次にしてしまう傾向が強い。 狭いワインデングの登りを2重、3重追い越しは決して珍しいことではない。   




茶屋の軒先でポテトてんぷらを揚げる少年
大型トラックやバスがローギアーで噴煙を上げて上る狭い道の傍で揚げている



スリル満点のドライブを1時間くらい楽しむ(?)。 高度は2000mに達した。 湧き水の一際多い場所に茶屋が数件狭い街道の両脇にひしめいている。 一軒の茶屋に入った。 お世辞にも清潔とは言えない。 入り口で少年が使い古しのオイル(多分)でポテトにころもをからげて揚げている、ポテトてんぷらである。 あまりお勧めではないが食べてみた。 味は新鮮なポテトの味でなかなかいける。 7人分のミルク珈琲とポテトてんぷら一皿で120ルピー(約240円)は高いのだろうか、安いのだろうか。 狭い駐車スペースではバケツに汲んだ湧き水で洗車サービスを受けることもできる。 

 


高度2000m近くの茶屋: 7人でミルク珈琲とポテトてんぷら1皿で120ルピー(約240円)
このあたりは湧き水がいたる場所で湧き出ているので長い登り坂の休憩地になっている休憩



コーヒーブレークの後は、再び狭い曲がりくねったハイウエーを荷を満載の大型トラックの後に付きデーゼルの排気ガスを被りながらひたすら高度を稼ぐ。 下りの対向車線からはエンジンブレーキをウンウン唸らせた、これまた荷を満載した大型トラックが僅かの隙間をクリアーしてすれ違う。
  


ガードレールも無い崖淵を走る狭いカラコルムハイウエー:
下りの派手な装飾を施した大型トラックとすれ違う



2時間余りで2500mの峠を越える。 このハイウエーはパキスタン国内の多くの峠を超え最大の難所中国との国境に横たわる標高4700mを跨ぐKhujerab峠を通過するとカシュガル迄は一気に下る道になる。 我々はこのハイウエーのほんのさわりの部分を走ったに過ぎない。 峠を越え少し下った山腹に凡そ周囲の村の佇まいとは、或いはこれまで走ってきた貧弱で危険なハイウエーに比べ、掛け離れた豪華な五つ星ホテルBurban Intercontinental Hotel が姿を現す。



Burban Intercontinental Hotelのテラス:
遠くインドとの国境も定かでない万年雪を懐いたカシミールを望む



このホテルのテラスからは眼下の盆地の遥か遠くに万年雪を懐いた7000m級のカシミールの連山が連なる素晴らしい景観を楽しむことができる。 このリゾートでは、広大な敷地の急な斜面を利用したトレッキングコースを楽しむこともできる。 この辺りは2000mを越すのであるが、松等の深い樹林覆われている。 日本ならとっくに樹林帯は無くなっている高度であるのに。 それだけ緯度が低いことを物語っている。 




昼はこの土地の急な崖に張り出したレストランで取る:
お客は我々だけ、メニューはチキンカレーのみ



高級ホテルのテラスで絶景を暫く楽しんだ後は、直ぐ来た道を引き返す。 途中の道端にあったローカルのレストランで昼食を取る為である。 10分ばかり戻った場所に見晴らしの良い場所に簡単な宿泊設備を整えたモーテル兼レストランがある。 車を止め様子を伺う。 モーテルにもレストランにも客は居ない。 レストランの窓からは、3つの地殻が押し合い今なお1年間に5cm北に移動を続け、7mm高度を増している雄大な山々と、ライオン河(インダス河)で刻まれた渓谷を一望できる。 厨房にはコックらしき者がいる。 食事が出来るか聞いてみた。 メニューはチキンカレーしかできないが食事はできるらしい。 飲み物はペプシとミランダがあるらしい。 この辺りには他にレストランはなさそうである。 ここでテーブルを囲むことにした。 厨房では早速ストーブ(ガスレンジ)に火が付けられ、鶏が2羽素早く処理される。 小一時間待つと、チキンカレーがテーブルに運ばれてきた。 ライスは無い、チッキンで焼かれたばかりのナン(薄い大きな円形のパン)を添えてある。 ナンは無くなると直ぐに焼きたてのものが補充される。  



山間のレストランからの眺め:
3つのプレートが押し合い世界の屋根を形成すると同時に
3つの文明が合流するクロスポイントでもある







25/Mar/'07 林蔵 @ MurreePakistan (Updated on 18/Jul/'07)#284

{林蔵地球を歩く}[頁の始めに戻る]