ガーデン・シテイー
@Nov/'06 Singapore, Singapore


既にクリスマスの飾り付がされたコロニアル風のラッフルズ・ホテル
サマーセット・モームがこよなく愛したホテル、現在は隣に超高層のラッフルズ・ホテルが聳える


ガーデン・シテイーを訪れたのは1985年の丁度今の頃であった。 21年ぶりの再訪である。 日本ではこの時期相当寒いが赤道直下にあるこの都市は暑い。 今回はジャカルタからの移動だ。 ジャカルタも赤道に近い、しかも今は南半球が夏場である。 ジャカルタはもう直ぐ盛夏、と言っても一年中暑いのであまり盛夏に近ずいた実感はないが。 赤道直下のシンガポールのほうが若干涼しい気もする。 ジャカルタ発シンガポール行きLH779便の席は何時ものお気に入り窓側である。 チャンギ空港に降り立つ前、B747の窓からは稲妻がしきりに見える。 この時期特有の夕立が発生しているのであろうか。 ジャカルタからの便はフランクフルト行きのルフトハンザ便だ。 シンガポールへ行くのだからシンガポール・エアーが安かろうと思ったが、何とルフトハンザ便が最も安値だったと言う訳である。

20:18分にジャカルタを飛び立ったルフトハンザ機は予定通り、約1時間の飛行後、シンガポール、チャンギ空港に降り立つ。 案の定、ターマックは濡れている。 B747の窓にも水滴が付く。 




リトル・インデイアにある宿舎のアルバート・コート・ホテル
辺りはサリー専門店等が並ぶ、流石リトル・インデイア



シンガポールの玄関、チャンギ空港は1991年、当時の首相ゴー・チョク・トンに寄ってオープンされた。 アジアのハブを目指すだけあって大変垢抜けている。 殆どの壁はガラス張りになっており、大変すっきりし、またスペースの広がりを感じさせる。 イミグレは簡単、カスタムズも係官は見当たらず、殆どスルー。 申し訳程度に端の方にレッド・カウンターがある。 ホテルへは何で行こうか。 シャトルバスがある筈だ。 案内で聞いてみた。 確かに有った。 7シンガポール・ドル(約500円)だと言う。 ルフトハンザの機内で配られたシンガポール案内には、タクシーで25-30US$(38シンガポール・ドルー45シンガポール・ドル)と有った。 随分安く上がったと一人悦に入る。 

30分程度待合場で待つと、係員(実は運転手だった)が呼びに来た。 係員に従って駐車場へ移動する。 そこには真新しいベンツ製のシャトル・バンが幾つも駐車している。 その一つのバンに乗り込む。 既に先客が5人居た。 バンなので7人乗りだ。 6名の乗客を乗せシャトル・バンはゆっくりと、市内へ向けて発車する。 運転はあくまで丁寧だ。 香港で経験したのと同じ感じを受ける。 カーラジオの音量は微妙に絞ってある。 充分音楽は聞こえるが、乗客が室内で小さな声で話しても全く気にならない程度の音量である。 9月迄居たリビアのタクシーと何と差の大きいことか。 インドネシアに来る前3ヶ月あまり滞在したリビアでは、カーラジオはボリュームを目一杯大きく上げられている。 乗客同士の会話など到底成り立たない。 この辺にサービスの真髄を感じる。 サービス面だけを取って言えば日本だって遜色はない気がするが、空港からの街までの距離、料金は比べるべくも無い。 まして日本は極東と言う地理的に大きなハンデイーがある。 アジアのハブを目指すなど、何たる我が身を知らざることか。

20分程で、シャトル・バンはホテルに到着した。 リトル・インデイア地区にある3つ星のホテルである。 ホテル前の道は行き止りで、アルバート・モールに面している。 落ち着いたロビー、朝食を取るカフェは2階にある。 私の部屋はカフェの隣だ。 至極便利が良い。 



ホテル前のアパート、以前は洗濯物が窓一杯にぶら下がっていたが、
今は洗濯物を隠す揃いの専用フレームが備わっている
洗濯物は外から殆ど見えない



翌日、土曜日。 今日、丸一日シンガポールの休日だ。 ホテル2階のアルバート・カフェでバイキングの朝食。 アルバート・カフェの窓から外を観ると高層アパートが道路とアルバート・モール越に見える。 昔も高層アパートは既に沢山あったが、各家庭の窓からカラフルな洗濯物が無秩序にぶら下っていたものだ。 だが今日の高層アパートは違う。 洗濯物が見えない。 干してない訳ではない。 見えないのだ。 良く観ると、洗濯物を隠す専用のフレームが各戸の窓に取り付けられているのだ。 赤い色の統一規格のフレームが整然と取り付けられている。 唾を吐いても500ドルも罰金を科せられる国だ。 洗濯物隠しはガーデン・シテイーの面目を見事に保っている。 

徒歩で街に出た。 暑い。 街は20年前とは随分変わっている筈だ。 当時の記憶は今や私の脳味噌の何処にあるのか判らない。 チャンギ空港で入手した無料の観光案内兼地図を頼りに大通りに出た。 暫く歩くとビーチ・ロードに出た。 観光地図によると、之を西に歩けばラッフルズ・ホテルやシンガポール川河口のマーライオン公園に行ける。 植民地時代の名残を色濃く残すラッフルズ・ホテル本館は、今も昔と変わらずその白亜に輝く姿を見せる。 既に大型のクリスマス飾りを纏っている。 21年前の出張時、家族4人、海外で食事を楽しんだ数少ない思い出が蘇えってくる。 現在では、超高層のラッフルズ・ホテル別館が直ぐ傍に聳える。 



ビーチロード、クリケット場に面する最高裁判所



ビーチ・ロードをそのまま進むと、右手にセント・パトリック教会、最高裁判所、左手にクリケット場が見える。 この辺りもかなり変わっているが、昔の感じが大分残っている。 フラートン・ロードに掛かる鉄橋を渡り、シンガポール川の河口側、左手にあった昔のマーライオン公園。 こんな狭い場所に有ったのかと思う。 現在は、立派な専用観客デッキの備わったマーライオン公園が川の西側に佇む。 昔ながらのマーライオンは、今日も大勢の観光客に囲まれて変わらぬ姿を見せる。 多くの観光客の中には、我同胞の日本人も多い。 



シンガポールのシンボル、マーライオン公園のあるシンガポール川に掛かるFullertonロードに掛かる橋 



シンガポールの観光名所の一つ、マーライオン公園。 ところでこの公園の名前を、タクシーの運転手や現地の人に判るように発音するのは一寸難しい。 ”マリオン” と言えばOKだ。 
 


 


昔はシンガポール川の河口部の小さな公園にあったが、
今は100m程河口から離れた処に移された、ギャラリーが沢山居ても大丈夫な専用デッキ付きである



マーライオン公園で定石の写真を撮り、再びクリケット場を通り、オーチャード・ロードへ足を向けた。 昔のレストラン、カパー・ケットルはあるだろうか。 オーチャード・ロードは既に派手なクリスマスの飾りが始まっている。 昔ほどの電飾はない気もする。 通りの地下には地下鉄も通り、様々な新たしい商業設備も増えている。 マリオット・ホテルの対面には伊勢丹の大きな看板も見える。 ここにも大型のカール・フールが進出している。 

それにしても、暑い。 リビアで仕入れた薄手のロング・パンツだが、汗が内部から吹き出る。 ショート・パンツを手に入れよう。 早速洋品屋に入った。 店員にサイズを測ってもらい、黒色のショート・パンツを試着した。 ぴったりだったので、ロングパンツはバッグに入れてもらい、そのまま着用し街を歩くことにした。 



オーチャード・ロードの始まりの部分にある綺麗な芝生に囲まれた美術館



オーチャード・ロードを一通り端から端迄歩いた。  カパー・ケトルは遂に見つからなかった。 スタバやコーヒー・ビーン等のテラス喫茶が適度にあり、空気は澄んでおり、大木の木陰でコーヒーの香りを楽しみながら人物ウオッチングも悪くない。 



オーチャード・ロードの最北端から更に30分程度歩くと広大なシンガポール植物園がある


シンガポールと言えばラン(英名:オ-キッド、目抜き通りのオーチャード・ロードとは、ラン通りの意味)。 シンガポール植物園の中に、1995年当時の首相、リー・クアン・ユー氏によって開園された国立ラン園がある。 地図でみると、オーチャード・ロードを南から北の端迄行った更に先にある。 ゲートは大通りに面しているようだ。 歩いてみよう。 オーチャード通りを抜け、その先の通りに入る。 歩道は広く、日本等では室内に観葉植物として大事に育てられる植物が、惜しげもなく通りに茂る。 ガーデン・シテイーの趣を欲しいまにする。 約1時間半で植物園のゲートに到着。 大きな病院に隣接する。 病院前バス停の自動販売機で水を買う。 (1.7シンガポール・ドル、約120円)



シンガポール植物園内にある国立ラン園
入場料S$5、珍しい様々なランが咲き乱れる



植物園は無料だ。 多くの老若男女がランニングやウオーク、はては家族団欒、デートを楽しんでいる。 ロンドンのハイド・パークを思い出す。 ハイド・パークよりは若干街の中心から離れる気がするが。 シンガポールは、ロンドンと違って、街の何処に居てもガーデンの中に居るのである。 広大な植物園・パークが街の中心部になければならない理由は全くないのである。 

園内を数百m進むと、National Orchid Gardenの看板に辿りつく。 5シンガポール・ドル(約350円)で入場券を買い、園内に入る。 入園のゲートはシンガポールの地下鉄と同じ構造のものだ。 ここはシンガポールの観光スポットの一つ。 流石に多くの外国人観光客を見る。 多くは観光バスで駆けつけるのだ。 そんな観光客に混じり、園内を散策する。 見事なランがこれでもか、と言う程に園内に咲き乱れている。 其の一部を以下に列挙したいと思う。 とくと御堪能くだされ。 





国立ラン園に美しく咲き乱れる様々なランの一部


思わぬシンガポール小旅行が降って沸いた。 20年を経たガーデン・シテイーは益々その輝きを増していた。 そして我が国と同じくアジアのハブを目指す、拮抗の競争相手であることも再認識した。 利便性と良質のサービス、更に低コストの運用費。 どれをとっても大変手ごわい相手に違いない。 この種の競争は多いにやって戴きたい。 そして多くに人々にその恩恵があらんことを切に願ってやまない。 








11/Nov/'06 林蔵 @Sinagpore (Updated on 29/Sep/'08)#277

{林蔵地球を歩く}[頁の始めに戻る]