ウルムチ
@Mar/'07 烏魯木斉(Urumqi), China
かつてのシルクロードの要であった街も、今は近代化(?)の波が押し寄せる
雨模様の西安。 この時期雨が続くのは珍しいことらしい。 気温4度。 東京と変わらない寒さである。 予定通り10時に会社のアウデーがホテルの車寄せにやってきた。 既に3度目の西安である。 顔見知りのの運転手だ。 安全運転の模範のような運転をしてくれるので安心して後部座席に身を任すことができる。 何とも贅沢な計らいに悪い気はしない。 市内から西安空港へは立派な高速道路が完備されている。 以前は1時間程掛かっていたのが、今では30分程で行ける。 渋滞も無く30分きっかりで西安空港に到着した。 西安空港は国内便が殆どの空港であるが、国際空港並みの設備が整っており、ショップやカフェ、レストランが完備している立派な空港だ。
実はこれからウルムチ経由でパキスタンのイスラマバードへ行こうとしている。 中国海南航空、12:00発HU7897便に乗り込もうとしているのである。 今は世界中の空港でスタンダードになっている厳しいセキュリテイーを通過して19番ゲートへ向かう。 19番ゲートはグランドレベルだ。 つまりバスでターマックに駐機している飛行機へ向かうのである。 バスでターマックに駐機している比較的新しいB757型に着いた。 機体には新華航空のロゴがある。 海南航空と機体の融通をしているようだ。 機内に乗り込んだ。 満席である。 私の席は19E。 そこには既に土地の家族が3人並んで座っているではないか。 どうもダブルブッキングらしい。 客室乗務員に事情を説明する。 幸いにも近くに1席空席があった。 やれやれ、これで予定通り今日中にウルムチ迄移動することができる。
雨模様の西安空港: ハイナン(海南)航空HU7897便、新華航空と機体を融通している
これからウルムチ経由でパキスタンのイスラマバードにに向かう
3時間20分の順調な飛行後、B757機は遠くに天山山脈の雪景色を望みながらウルムチ空港にすべり降りた。 気温3度。 街路には根雪が黒い埃を被り残っている。 ここまで来ると、空港内の表示には、懐かしいアラビア文字も使われている。 中国語、英語、アラビア語で書かれているのである。 かつての東西の文化と通商の道シルクロードの道筋にもあたるこの街。 この地は遠い昔から通商の要地として栄えた場所である。 同じ中国でも、その国土の広さを改めて実感する。 宿はシェラトン・ウルムチを取って頂いている。 ホテルへはタクシーで行こうか。 バゲージターンテーブルの前で預けた荷物を待ちながら考える。 無事荷物も出てきた。 出口ではチェックイン時の荷物半券で荷物の確認をしている。 あれ、どうしたことだ。 荷物の半券が無い。 荷物の確認ができなければ、係りのおねーさんは私を外に出してくれない。 最後のお客が出るまで脇で待たされる。 私が最後の客になって、私の持ち出そうとしているスーツケースの持ち主が現れないのを確認した後で、やっと外に出ることができた。 出口の出迎え用ゲートには、何と私の名を書いたボートを持った人が待っているではないか。 これで、タクシーを捜す手間も、料金交渉の心配もしなくて良いのでほっとする。 その人はシェラトンの運転手だった。 西安の事務所が気を利かして手配してくれたものだろう。 何とありがたい。 案内された駐車場に留めてあった車は真新しいトヨタ・クラウンだった。 内部は革の匂いも抜けないレザーシートである。 20分程度で街中にあるシェラトン・ホテルに到着。 ウルムチは人口100万と言われる内陸の大都市だ。 ホテル界隈は街の中心にあたり、様々な商業設備が軒を並べる。
シェラトン・ウルムチはそんな中心街にある一際大きな新しい建物である。 広いロビーのレセプションでチェック・イン。 11階の部屋が与えられた。 スターウッドのメンバーなので、他よりも少し大きい部屋だそうだ。 内部の設備は流石に新しいだけあって近代的な最新の設備が備わっている。 テレビは日本の私の家にもない大型液晶だ。 バス・ルームとベッド・ルームは大きな1枚のガラスで隔てられている。 インターネット接続が高速ランでできるスタデイーがコーナーに備わっている。 インターネット接続料は無料。 これは助かる。 早速安着連絡を会社と家にメールを入れた。 新しい土地に来ると、決まってすることがある。 それは家に電話を掛けてみることだ。 世界の電話事情の確認の為でもある。 日本に居るのと何ら変わることなく簡単に通じた。 音質も悪くない。 言わば、この偏狭地でいとも簡単に日本の家に掛かる。 中国モバイルのサービスは立派なものである。 北京で買った中国の携帯SIMカードだが、ここでも当然使えるのである。 パキスタンやイランに近い土地であるが、ここはれっきとした中国本土なのだ。
シェラトン・ウルムチ: 目抜き通りに一際新しく大きな建造物
内部は超近代的
ちなみに、広大な国土を持つ中国であるが、時間帯はひとつである。 北京も西安もウルムチも同じ時間なのである。 ウルムチは北京等に比べると4時間位の時差があってもおかしくない。 だから、ここウルムチでは、太陽の沈む時間が冬である今でも遅い。 この原稿はホテルの前の大通りにあるKFCで打っている。 時刻は午後の7時半を過ぎているが、外は未だ昼間のように明るい。 西安ではこの時間はもうとっくに日が暮れて、通りは街灯の明かりでしか歩けないのだが。 その分朝太陽が昇るのは遅いのは言うまでもないが。
部屋は広い、 ベッドはお気に入りのキングサイズベッド
翌朝6時起床。 シェラトンのベッドは生理曲線と人間工学に基ずいたものらしい。 そのお陰か昨夜の眠りはすこぶる快調だった気がする。 寝付きも寝起きも清清しいのは此処暫く味わったことがない。 朝食は7時からだと言われている。 身支度をして1階ロビー横にある超近代的なカフェバーが、朝食のバイキングを提供している。 西安ではレストラン等のサービスは決まって女性であるが、ここウルムチでは、イスラム圏に近い、あるいは圏内なのであろうか、フロントやレストラン、何処も男性によるサービスが殆どだ。 サービス員は概して若い。 スタンダード英語で話してくれる。 それにしても、このホテルのレストラン・カフェは何だ。 フランスのパリにある前衛アートのレストランかと勘違いしそうである。 間接照明のロビーと一体になった広い空間。 白が基調の調度品、食器類。 その形はおよそ中国的でもなければ、伝統的な食器の形でもない。 料理を盛ってあるトレーも何時も見るホテルの銀製の丸みを帯びたコンテナではない。 それはハイファッションの料理教室で見るような器である。 幾何学の教室に居るかのような形をそれらは呈している。 ここはかつてシルクロードの要地、通商の要であった場所だろうか。
広いバスルームにはシャワーとバスタブの両方が備わる、
寝室との仕切りは大きな一枚ガラス
コーナーには高速ラン接続ができるスタデイーが備わっている
大型液晶テレビではNHKも観ることができる
11階の部屋の窓からウルムチ市街を望む
背の高いポプラ並木が北国を思わせる
8時に空港へ向かうホテルショーファーを予約しておいた。 スーパーサイバーカフェバーで朝食を済ませ、チェックアウトをする。 丁度良い時間だ。 ホテルショーファーは既にロビー外の車寄せで例の真新しいクラウンを留めて待っていた。 8時だが、外は未だ暗闇の中。 クラウンは闇に包まれたウルムチの大通りを静かに空港へ向かう。
ホテル前の商業設備: シン・キアン太平洋百貨店
ウルムチ空港は国内線ターミナルと国際線ターミナルは少し離れている。 運転手に何も告げていなかったら、運転手は私に何も聞かず国内線ターミナルへクラウンを着けた。 私はおもむろに、パキスタンのイスラマバードに行きたいのだが、と告げる。 運転手は少し慌てた様子で、直ぐに国際線ターミナルへクラウンを移動した。 国内線ターミナルは大きく大変立派な造りで、多くの旅客で溢れていたが、ここ国際線ターミナルは小さく若干年季の入った設備だ。 此処からの国際便は少ないらしい。 カザフスタンのアルマータ行きと、パキスタンのイスラマバード行きの2便の表示しかない。 電光掲示板等は無い。
無事チェックインを済ませた。 パスポートコントロールは通らない。 後程判るのだが、この便はカシュ経由で国境越境のパスポートコントロールはカシュで行うのであった。 セキュリテイーコントロールのみを通り待合室へ進む。 此処にはカフェが1軒、と免税店が2軒ある。 免税店で白酒をパキスタンんで活躍している我々の中国人スタッフの為に2本仕入れた。 先日西安のスタッフから2本迄パキスタンには持ち込めるからと聞いていたからだ。
ウルムチを発ち、約1時間半でB757機はパキスタンの国境に近いカシュに到着
そろそろ、搭乗時間が迫ってきた。 この空港カフェを引き上げよう。 カプチーノの代金50元を支払って二つある搭乗ゲートの一つへ向かう。 9時50分きっかりに搭乗ゲートドアーが開かれる。 B7575 機に乗り込む。 それにしても先ほどから気になることがある。 この搭乗ゲートにも表示があるが、イスラマバードと併記してカシの名がある。 此処に来るまで、イスラマバードには直行するものとばかり思っていたのである。 カシュとは何処にあるのだろうか。
(後で知るが、カシュとはカシュガルの中国名だった。 そうなのだ、あのシルクロードの要所カシュガルである。 つまり、現代の飛行ルートも何のことはない、古のシルクロードをそのままなぞって飛んでいるに過ぎない。 カシュガル - イスラマバード間はカラコルムハイ・ウエーとして4600mの峠超えをする危険と困難を伴う歴史的な幹線ハイウエーとしてその名を世界に知られ、現代もなお空と陸でその重要性を失っていない。)
トランシットで一旦空港 にに降りるのだろうか。 機内放送で判ったことだが、カシ迄は約1200km、飛行時間は1時間半らしい。 この時点でやっと様々な合点が行く。 ウルムチの空港でチェックインを済ませ、パスポートコントロールに向かおうとした時だ、係官がイスラマバードは此方と指示された。 そのゲートにはイミグレーションの審査官が居ない。 フリーパスだったのである。 中国を出るのに、パスポートにスタンプを押さなくて良いのかと不思議に思っていたのである。 パスポートコントロールはカシで行うことが、機内放送でやっと判明した。
カシュに降り立った。 気温7度。 ウルムチよりかなり南に来たらしい。 B757機はターマックに駐機した。 タラップを降りて、ターマックを歩き、空港ビルへ行く。 空港ビルの要り口でトランスファーのチケットを手渡される。 一時間のストップオーバーだと説明を受ける。 国際便到着ロビーに入る。 小さい部屋だ。 此処から隣の部屋へ移動する。 此処は健康検査、パスポートコントロール、セキュリテイーチェック、更に後でお世話になるチェックインカウンターまでがコンパクトに収まっている。 パスポート審査が結構時間が掛かる。 ようやく自分の番になった。 パスポート、出国カード、搭乗券、トランスファー券、チケットを渡す。 女性の審査官だ。 私のパスポートに押された14日に北京で入国した際の入国スタンプが見つけられないらしい。 何度もパスポートのページをめくる。 その為に実は出国カードをそのページにはさんであったのに気が付かなかったらしい。 やっと14日に北京で押されたスタンプを発見し、その傍に中国出国のスタンプを押してもらった。 そしてセキュリテイーチェックの前にもう一度、パスポートとチケットの確認がある。 そしてして最後の関がセキュリテーチェックだ。
ここで厄介な問題が発生する。 私は何も知らずにウルムチの出発ゲートにあった免税店で購入した中国のお酒2本をエックス線検査機に入れた。 係員がお酒の袋をエックス線検査機の向こうから返してきた。 そして何やら私に言っている様子。 どうもお酒は機内に持ち込めないから、バゲージの中に入れてチェックインカウンターに預けるように言っているらしい。 チェックインカウンターと言ってもすでにウルムチでチェックインしており、しかも、カシのパスポートコントロールも過ぎている。 どうすれば良いのかなすすべを知らず、おどおどしていると、係員がパスポートコントロールを逆戻りし、エックス線検査の済んだキャリーバッグ等全て戻してもらったものを抱えてチェックインカウンタへ連れていってくれた。 幸いキャリーバッグを持っていたのが幸ををそうした。 キャリ-バッグの中身を入れ替えろと言う。 酒をキャリーバッグに詰めてカウンターに預け、その他の溢れるものを手持ちすれば良いとの示唆だ。 やれやれ何とか危機を乗り切った。 内心、預けた荷物は無事荷物室に入ったのだろうか、心配でならなかったのであるが。 イスラマバード空港のバゲージベルトにカシュで預けたキャリーバッグが無事出てきた時、改めてカシュの空港スタッフに感謝の念が沸いてくるのを抑えることはできない。
今回も中国は短い滞在であったが、多くの人々に大変お世話になった。 中国ともこれでひとまずお別れだ。 旅行客の安全をあの手この手で守ってくれるひたむきな若い国境管理スタッフにお礼を言わねばなるまい。
16/Mar/'07 林蔵 @ Urumqi, China (Updated on 3/Oct/'08)#283
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