何ということだ。 レンタカーを借りることができない。 今回の旅はシチリア島の北沿岸に敷設された古代ローマ街道バレーリア街道を偲ぶものが目的だった。 ローマ Fumicino空港、 Europcarのカウンターでのできごとである。 夏のバカンス時期、足の踏み場の無いくらい込み合っているのカウンター前。 番号札を取り、ナポリ迄行く時間を酷く気にしながら4時間待った。 この事態を突き付けられたのは5時過ぎだ。 いくら欧州の陽は長いとは言え、この場でこの時間から、全ての予約をキャンセル・変更する気力も時間もない。 唯呆然としていても始まらない。 とりあえず今夜のナポリ泊は諦めよう。 今夜は空港敷地内にあるヒルトン ローマに投宿しよう。 予約は無いがオナーズ会員だ、それに空港内ホテルは緊急対応が可能な筈だ。 何とかなるだろう。 急遽組成した旅程は以下のものだ。 各拠点の宿とシチリアからナポリへのフェリー移動もそのまま利用したい。 結局、ローマ ― (空路)− パレルモ ー (フェリー)− ナポリ ー (列車)− ローマ、と言うものだ。
さて、明朝のパレルモ行きのフライト チケットを買わなければ。 空港内のチケット・カウンターは直ぐ見つかった。 中年のイタリア(地元)女性だ。 対応は悪くない。 英語も普通に通じる(当たり前か)。 明朝のパレルモ行きのフライトを尋ねる。 ほぼ一時間毎にあることが分る。 10時のフライトを予約、チケットをその場で購入した。 233ユーロ(約3万円、税金と手数料で27%も追加される。)、かなり高い。
チューブ状のウオーキング デッキで繋がったHilton Romaへ向かう。 ローマは暑い。 温度は30度程度だろうが湿度があるの。 長いトンネル状の専用デッキを歩く。 吹き出す汗を抑えつつ、Hiltonの一般カウンターへ。 予約はないが部屋は準備できると言う。 だが林蔵の希望するキングサイズベッドの部屋は無いとつれない。 財布の中に偶々入っていたヒルトン・オナーズのゴールド会員カードを提示する。 すると途端にスタッフの接客態度が変わる。 すんなりとキングサイズ ベッドの部屋が準備できるのである。 しかも専用サロン、レストラン完備のExecutive Floorである。 大変ありがたいが、こんな待遇を受ける度に、つくずく西洋社会は階級社会であると感じる。 林蔵には向かない。 翌朝、お好みのヒルトン朝食を有り難く頂き、早々に宿を後にする。
朝、ターミナルへの専用ウオークウエーは、昨日の夕刻のような暑さはない。 むしろを、適度の気温で清々しい。 第3ターミナルへ向かう。 キャリーバッグにフェザーマンの万能ナイフを入れたままだった。 大混雑の国内線(欧州全域)セキュリテイー・ゲートで見つかってしまった。 イタリアのセキュリテイーは捨てたのもではない。 安全管理に感謝。 長蛇の列を逆戻りし、通常のチェックインカウンターでキャリーバッグを預け、再びセキュリテイー・ゲートへ。 幾つもあるセキュリテイー・ゲートの内、偶々同じ列でチェックを受ける羽目に。 先ほどの屈強なセキュリテイースタッフがウインクで応えてくれる。 さー、2時間弱のパレルモへのフライト。 地中海上空、久しぶりにアリタリア航空の機体に身を任せよう。
穏やかな地中海上空を順調に飛行後、パレルモに降り立った。 山が険しい。 空港はパレルモの西20km程度の位置にあるらしい。 市内へはバスが有る筈だ。 バス停は空港出口の左側、タクシー乗り場から遠く離れた見えない場所にある。 表示に従って歩いていると、途中で乗り合いタクシーの運転手が声を掛けてくる。 「バスは6ユーロ、(乗り合い)タクシーなら7ユーロ、乗ってゆかない?」 と言っている。 既に2名の客が側にいる。 林蔵も加わる。 後2名で5名定員になる。 直ぐ2名の追加客がやってきた。 街までは、海沿いに専用高速道路が走っている。 混むことはない。 20分程度でパレルモ市内に着く。 ホテルの通りと番地を運転手に告げると、ホテル玄関に横付けしてくれる。 意外と親切だ。 領収書もきちんと切ってくれる。
このホテルは古い。 だが格調が高く気品が漂う。 年季の入った木製の調度品。 大理石の床。 高い天井。 何気なく置かれたギリシャ風彫刻。 中世の社交場を想わせる。 古風な丸味を帯びた、濃い色調の余り大きくない木製レセプション。 先客が一名、年配のマネージャーと思しき紳士が対応している。 他に客はいない。 そのマネージャーと思しき男性が、私を見るや素早く奥の執務机で作業中の女性スタッフに、林蔵の対応を指示する。 こんな対応を受けるのは久しぶりである。 すこぶる気分が良い。 チェックインには未だ早い午前の時間であったが、部屋が準備できていると言う。 有り難い。 こちらから何も訊ねなかったが、若い女性スタッフは、街の地図を出し、ミニ観光講義までしてくれる。 このホテルは実にロケーションに恵まれている。 主要観光スポットは全て徒歩範囲内にある。 部屋は大きくはないが古風で凝った造りだ。 大変落ち着ける。 木の格子窓からは、樹木に覆われた隣の中庭が望める。
シャワーを浴び、林蔵の趣味である街歩きに繰り出す。 宿はローマ通りに面する。 この街をほぼ二分する大通りだ。 北に5分も歩けば港。 東に歩けば歴史地区。 西に歩けばニュータウン。 ワンブロック西の通りは全体がテラス・レストランカフェ ゾーンになっている。 中ほどのカフェ・レストラン GIGIMANGIOでカプチーノと軽いお昼を頂く。 林蔵のもっともお気に入りの時間だ。 様々な年代の男女が出入りする独特のざわざわ感を楽しむ。 このような心地良いざわざわ感のある寛ぎタイムは、リヤドでは決して味わうことができない。
Open Cafe: GIGIMANGIO
ホテルから西にワンブロックの通り
通り全体がカフェ、レストランになっている
様々な人々の出入り、心地よいざわざわ感、南欧の雰囲気を楽しむ
欧州はバカンスの季節。 この街も欧州北部からの観光客で溢れている。 ここではホームレスも大型犬を連れていたりする。 3匹の大型犬を連れたホームレス。 ポケットにあったコイン1.7ユーロを路上に置いた帽子にそっと置いた。 すると、それまで大人しく石畳の路上にへばりつくようにうずくまっていた3匹の大型犬が急に立ち上がり、じゃれついてきた。 お礼のかわりだろうか。 1.7ユーロでは、犬の餌は買えないだろうなァ
PaLazzo Reale (王宮)
ノルマン統治時代の王宮、今もパレルモ議会に使われる
Capella Palatinoは是非見ておこう。 パレルモ空港に降り立ち、バゲージクレームエリアに入るや、大きなアド・ボードを見たのだった。 パレルモの観光目玉でもあるらしい。 Parazzo Reale の一部らしいが、何処から入ればいいのだろうか。 正面からは人の出入りが殆ど見られない。 主要観光スポットだから、それなりの人の流れが有る筈だ。 王宮の脇道を回り後側に出てみた。 やはりそうだった。 いかにも旅行者風の訪問者が数名専用ゲートでチケットを購入している。 林蔵も並んだ。 礼拝堂と特設展示場のセット チケットだ(12ユーロ)。 ルネッサンスが当国フィレンツェで爆発する直前の時代のものだ。 キリスト教がローマ帝国の権力を奪い、強大な権力と財力を有していた時代。 芸術は人間のエゴのようなものが強烈にはびこるところに、共に大きく傑出するのであろうか。
歴史地区の石畳路地
実に絵になる
このテアトルは是非観ておきたかった。 だが一寸残念。 プッチーニの ”La Boheme”は9月公演だった。 どうせ訪れるなら、この劇場はオペラ観劇を予定に入れたかった。 この街のランドマーク的存在である。 正面ゲート左側にツアー オフィスがある。 ここでガイド ツアーのチケットを買う(8ユーロ)。 ツアーガイドは10分後に始まると言う。 10名ほどの一行である。 殆どが仏語圏人、それに林蔵は英語(日本語の案内はない)。 総木造の音響効果は抜群だそうだ。 マイクを一切使わない役者の声が広い劇場内に響き渡るのである。 そして圧巻は、かつては王族や超セレブしか座ることが出来なかったロイヤル ボックスの席に座り、説明を受けることができるのである。 観劇こそできなかったが、この建造物を生で見ただけでも感動ものだ。 パレルモに喝采。
フェリーは20時発だ。 チェックアウト後預けてあった旅荷を受け取り、昨日確認してあったフェリー会社のチケット オフィスへ向かう。 ここで、予約してあった車両込のE−TicketをiPADの画面で提示し、車両が無いことを告げる。 乗船券のみを貰う。 BMWの大型バイクにキャンプ道具満載の御夫婦がやってきた。 見ると結構御年配である。 バイク乗りでもある林蔵はカップルに話しかけてみた。 ベニスから来たらしい。 休暇を満喫している御様子、微笑ましく、羨ましくもある。
フェリーは外洋仕様の大型船だ。 6階までが車両デッキ、7階から11階が客室デッキになっている。 諸設備も完備。 ラウンジ、バル、カフェ、本格レストラン、セルフレストラン、遊技場、ライブステージ、乗船客カウンター、等。
約8時間の夜間航路。 日が暮れるまではデッキで、西日に映え遠ざかるシシリーの風景を楽しむ。 古くはギリシャの植民地、カルタゴの勢力が及び、古代ローマ帝国が属州化した。 その後も、ノルマン、イスラム、スペイン等に翻弄された万華鏡のように折り重なる歴史を持つ魅力満点のシシリー。 一旦お別れしよう。 又来る機会があることを想いつつ。
キャビンはモロッコからきた37才の青年と同室になる。 パレルモには研修でやってきたらしい。 今は南イタリアで働いていると言う。 なかなか誠実そうな好青年だ。 キャビン内のシャワーを浴び、カフェ・ラウンジへへ向かう。 彼は直ぐに就寝すると言う。 さてそれでは、明朝ナポリ着まで洋上スリーピング。
林蔵@Palermo Italy 15/Jul/'15 (Updated on 30/Jul/'15)
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