スイス、エンガデン地方。 イタリア北部と国境を接する Grisons州の山深い風光明媚な地方として名高い高級保養都市ダボスやサン・モリッツはこの地方にある。 そしてスイス南部には、もう一つの観光地名所マッター・ホルン、モンテ・ローザ、そしてその登山口の街ツエルマットが有名だ。 Gracer
Express(氷河特急)と名の付く列車は、この2つの街、 サンモリッツとツエルマットを結ぶ FO(Furka-Oberalp)鉄道のサービスだ。
宿のある Susten からは、途中の駅 Brig、或いは駐車場のある Tasche から乗ったほうが便利だが、せっかくの経験である、始発の Zermatt から乗ることにした。 独特の赤い車体の列車は、Zermatt を定刻8時に出発した。 Tasche、Visp、Brig迄は、普段の休日に食事等に足を延ばす町村。 見なれた車窓の風景が流れる。 Brigを過ぎると、いよいよ旅の感動が湧きあがってくる。 フルカ峠はトンネルで超える。 長いトンネルを抜けると、そこにはアルプスの少女ハイジーの世界が広がる。 冬場は白一色の雪景色に覆われるアンデルマットの7月は、あくまで緑。 緑の絨毯に様々な野花が咲き乱れている。 背景は険しいアルプスの山々。 アンデルマットを過ぎると、景色は豹変する。 山が迫り、谷はいよいよ狭くなる。
9時間の鉄道の旅を終え、列車はサン・モリッツ駅に到着した。 標高1,856mの高原保養地である。 予約を入れてあったホテルへ向かう。 Hotel Corbatsche、3星のエコノミークラスだ。 我々の小旅行には丁度良い宿である。 当時のロシアの大統領ゴルバチョフみたいな名のホテルは、サンモリッツの中心Bad(風呂)地区にある。
客室100程の豪華ではないが小綺麗なホテルだ。 Bad(風呂)地区と言う地名から想像がつくように、ここは温泉地である。 と言っても日本の温泉街とは大分趣が異なる。 温泉は温水プールなのだ。 また、ホテルに温泉を引きこんである訳でもない。 スポーツ施設、あるいは、リハビリセンターに温泉湯が使われているのだ。 従って温泉街の宿(ホテル)に泊まっても、温泉に入れる訳ではない。
翌日は、Bad からロープ・ウエーで、サン・モリッツ湖とサンモリッツの街を一望に見下ろす展望台 Signal へ昇った。 美しいエンガデンの山々に囲まれたサン・モリッツ湖と街が夏の太陽に抱かれ輝いて見える。 スイスはほんとに何処に行っても期待通り、抱いたイメージ通りの感動を与えてくれる。 午後は
Muragl山の頂上2,456mにある展望レストラン Muottas Muragl へ行った。 800mの標高差をケーブル・カーで一気に昇る。 素晴らしい景観が眼前に広がる。 目の高さにエンガデンの山々。 サン・モリッツの街が宝石のように谷間に輝く。 黄昏時の満ち足りた時間をゆったり味わい楽しんだ。
今回はたまたま夏場に訪れることになったが、Gracer Express の旅は、本当は冬場の方が良いに違いない。 雪に埋もれたサン・モリッツの街は、更にその輝きを増しているに違いない。 9時間の列車の旅も、また様々な夏とは違った感動に満ちているのを想像するだけで楽しい。
5/Jul/'85 林蔵@Leuk Switzerland (Updated on 20/May/'13) #085 |
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