グリニッジ
@Oct/'98 London, UK


Greenwich天文台: ここが世界の時間の始まり


[世界遺産 Maritime Greenwich 文化遺産 1997年登録]  The ensemble of buildings at Greenwich, an outlying district of London, and the park in which they are set, symbolize English artistic and scientific endeavour in the 17th and 18th centuries. The Queen's House (by Inigo Jones) was the first Palladian building in England, while the complex that was until recently the Royal Naval College was designed by Christopher Wren. The park, laid out on the basis of an original design by Andre Le Notre, contains the Old Royal Observatory, the work of Wren and the scientist Robert Hooke.(UNESCOホームページより)  


小学校の社会か理科の授業で、英国にあるグリニッジ天文台のことを習った覚えがある。 北緯52度13分、経度0度、海抜30m。 世界標準時の基準になる地点である。 世界の時間はここから始まる。 思えば奇妙な場所である。 

10月4日(日)、欧州の寒くて暗い冬の季節に入る前の秋晴れ。 今日はグリニッジに行ってみよう。 ノッテイン・ヒルのアパートに一番近い地下鉄(Tube)の駅 Notting Hill Gate からサークル・ラインに乗り、Embarkment駅で降りる。 駅から地上に出ると、そこは駅と同名の Embarkment公園。 テームズの川辺と英国鉄道のターミナル駅の一つシャーリング・クロス駅に挟まれた小さな公園、サボイ・ホテルの裏にあたり、面積は小さいが大木が小道を覆っていいて、まるで森の中を思わせる。 片隅のテラス・カフェで、コーヒーと贅沢な時間を楽しむ。 ここはロンドンで私のお気に入りの場所の一つである。 テームズの川岸に沿ったプロムナードを、川下へ数Km歩く。 水と街が解け合った風景がとても感じが良い。 シテイー(金融街)、ロンドン・タワー(元刑務所、今は博物館)とプロムナードは続く。 更に暫く下ると、グリニッジ行きのボート乗り場がある。 ボートに乗る。 この辺りのテームズは、湾の入り江のように広い。 



テームズのドライ・ドックに佇むかっての快速船「カテイー・サーク」



30分位でボートはグリニッジに到着。 上陸、そこはやや広い広場になっている。 黒人路上楽師が得意のアフロ音楽を披露し、僅かの生活の糧を得ている。 その広場の一角には、かつてインド航路で船足の速さを誇った茶運搬船(テイー・クリッパー)、”カテイー・サーク”  が係留されている。 938トンの木造船。 スエズ運河が開通した1869年に進水し、当時インド航海の最速船の名を欲しいままにした船だ。 積荷は600トンの茶。 今ではウイスキーのラベルで知っている人のほうが多いかもしれない。 本物のカテイー・サークである。 乗船して内部を見ない訳には行かない。 何がしかの入場料を払って中に入ってみた。 小博物館になっている。 当時の大事な積荷のお茶箱(今は空の模造箱)が、船室に無造作に積んである。 イギリス特有のトラスト制度(寄付や、税の優遇で文化財を護る制度)でカテイー・サークも保存資金を得ているらしい。 内部には、大きな寄付箱が設置されている。 滅多に接することの無い本物のカテイー・サークに触れることができたのである。 感激と感動のお返しに、入場料に加え1ポンド(少ない?)を箱の中に入れた。 船内には小さな売店がある。 ここで薄い冊子を記念に買って、カテイー・サークの保存に少しでも貢献できたかなと思うと少し気分が晴れる。



グリニッジの街



グリニッジは芸術と庶民の街、古い町並みのフリー・マーケットには小さなブースが広場一杯に立ち並び賑わいを見せる。 フリー・マーケットや蚤の市は、洋の東西を問わず人が多い。 がらくたかと思うような物に混じって高価な航海用具を売っている店が幾つも点在する。 フリー・マーケットは眺めるだけでも面白い。 おおよそ役に立ちそう無い日用品か、芸術品か判らぬ物が並ぶ簡易店舗が並ぶのである。 アパートのノッテイン・ヒル近くにある世界最大級の蚤の市、ポート・べローとは大部趣が違う。 ポートべローはグリニッジに比べると、蚤の市でも高級店の集合体と言えるだろうか。 

グリニッジと言えば天文台だ。 天文台の近く迄行ったが時間の都合で中には入らなかった。 古いグリニッジの街を見るのがとても面白く、歩き回っている内、つい天文台を訪れる時間が無くなってしまったのである。

グリニッジにはテームズの川底を横切るトンネルがある。 人専用トンネルで、エレベータで地下に降りる。 降りた所からは坂やステップは全く無い。 人専用のトンネルであるが、広く天井は高い、実に明るく歩き易い。 随分前に造られたであろうが、人に優しく障害者は何の抵抗もなく利用できるバリアー・フリーの設計だ。 福祉先進国の技を見せつけられた思いである。 もう帰りのボートが出る時間になってしまった。 グリニッジで下町アートの雰囲気をたっぷり味わい、再び連絡ボートに乗りこんだ。 満潮で水かさが増し、逆流しているテームズをボートは軽快に川風を切ってロンドン・タワー近くの船付場を目指して遡った。



パラメント(国会議事堂)







JUL/'98 林蔵 @London UK (Updated on 18/Jun/'08)#166

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