@Jun/2005 Frankfurte, Germany
フランクフルト空港からフランクフルト中央駅に向かう地下鉄の1番目の駅である。 これまで何度も空港から中央駅に行くのに通った駅であるが、この駅で降りることはなかった。 日本での3週間の一帰国休暇を過ごした後、息子一家の住んでいるフランクフルトにやってきた。 毎年6月の第3日曜日は、父の日で富士五湖の一つ西湖で西湖ロード・レースが開催される。 今年は丁度一時帰国で日本に居る筈であった。 ヨルダンからインター・ネットで参加のエントリーをしておいた。 ところが、ドイツの息子から訪独日程変更の依頼が入ったのである。 我ながら、考えの浅はかさには呆れざるを得ない。 ドイツでの滞在予定は週末を外していたのである。 これでは日本企業の海外勤務者である息子及びその家族に逢うには、至極不便になること必至であるのも考えずに。 息子一家の助言と計らいで、コンフェデレーション・カップ、日本VSギリシャ戦を生で観戦と言う
素晴らしい父の日プレゼントを頂いたのである。 何と幸せなことであろうか。
早足で90分程、川の北岸そして南岸を歩く。 のどかな風景に包まれた平和な時間を楽しむことが出来る。 ジョギングをする人、サイクリングをする者、乳母車を押す御婦人、犬と散歩する御年配、公園の掃除をする労働者、観光客、様々な時間を楽しんでいる。 私を追い越して行った土地の人らしき男性ジョガーが居た。 私の前を数メートル過ぎた時だった。 その男性のポケットから鍵束が落ちたのである。 男性はウオーク・マンを聞きながら走っており、鍵束を落としたことに全く気付かずに走り去ろうとしていた。 私は急いで鍵束を拾った。 鍵束にはアパートの鍵と思しきもの、車のキーと思しきもの様々な鍵が連なる。 即男性の後を追った。 幸い、男性の走るスピードはゆっくりしてたので、直ぐ追いついた。 男性の肩を後ろから叩くと、男性は一瞬怪訝な顔をして振り向いた。 私はドイツ語ができない、英語で、”貴方の鍵束です。” と男性に差し出した。 瞬間男性の表情が変わり、たどたどしい英語でお礼の言葉を言う。 一寸良い事が出来事に遭い、良い気分でマイン川べりの空気を吸ったのである。
街には運河が流れ、水のある風景が落ち着いた風情を醸し出す。 観光客用であろうゴンドラが運河沿いに浮かんでいる。 御者はあまり商売熱心とは言えない風。 悠々と岸辺のパラソルで寛いでいる様子。 おのぼりさんである。 早速ゴンドラに乗り込んだ。 運河の水は余り綺麗とは言えないが。 だが、石橋の下を潜ったり、古い木造の家の間を抜ける時は、かなり雰囲気が出る。 ゴンドラの御者はどうも本場からやってきたイタリア人らしい。 夕食はこれまたおのぼりさんであるが、ニュルンベルグではニュルンブルグ・ソーセージを頂かない訳にはいかないらしい。 教会前中央広場の傍にある、名の知れたソーセージ・レストランに入った。 細い、一寸塩味の効いたソーセージはなかなか行ける。
次の日、6月第3日曜日。 折りしも来年のワールド・カップ前哨戦とも言えるコンフェデレーション・カップが、今ドイツ各地の会場で行われている。 その日は、日本 vs ギリシャ戦がフランクフルトのスポーツ・フィールドにある競技場で行われるのである。 幸運なことに息子一家の計らいで、私も一緒にこの試合を生で観戦する機会を得たのである。 試合開始は午後8時、未だ陽は高い。 それまで、この地方(Hesse州)の州都である Weisbaden へ行くことにした。 温泉とカジノがある街だ。 欧州のカジノは、何処もお城のような華麗な建物が特徴だ。 1月にフランスのエビアンに行った時も同様な建物を見たような気がする。 中に入るには勿論ドレス・コードがうるさい。 カジノは紳士淑女の社交場なのである。 裏庭にあるテラス・カフェでお茶休憩にする。 池の公園が前に広がり、如何にも欧州のテラス・カフェと言った洒落た趣がある。
空港駐車場に車を停め、電車で競技場へ向かう。 空港から一つ目の駅、スポーツ・フィールドで降りる。 小さな駅は既にサポーターの群れでごった返している。 ギリシャのサポーターが圧倒的に多い。 何れも大きなギリシャ国旗を身に纏ったり、掲げたりして競技場へと練り歩く。 日本からもかなりの数のサポーターが来て居る筈だが、多勢に無勢と言った感である。
8時きっかりにゲームは始まった。 初めての実戦観戦である。 観客は競技場を埋め尽くしては居なかったが、両国のサポーター達の熱気や感動は伝わってくる。 私の席は中段の少し後ろ位の位置にある。 そして周囲はギリシャ・チームのサポーターに囲まれていた。 此処から観客席を見渡すと、観客席は殆どギリシャの国旗で埋まっているかのように見える。 ギリシャ・チームは流石欧州チーム、欧州で勝ち抜いて来ただけあって、パス回し等華麗なプレーを見せてくれる。 そのギリシャと戦っている日本チームもなかなかやる。 ギリシャ・チームに決定的な攻撃チャンスを与えない程度に完成しているのには、多少感動しないでもない。 日本も此処まで来たかと言う感じである。 結局、決定的瞬間を迎えたのは日本チームであった。 その瞬間、私は喜びよりも、私の周囲を占めるギリシャ人サポーターの方が気になった。 彼らは暴徒になることはないのだろうか。 少なくとも日本人より血の気が多い筈である。 しかし、そんな私の心配は徒労であったことを知るに時間は掛からなかった。 彼らも日本チームのプレイを素直に讃えてくれたのである。 私にはこの相手を讃える気持ちの方が嬉しかった、そして感動した。
19/Jun/'05 林蔵@Frankfurt Germany (Updated on 28/Jul/'08)#204 |
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