テームズ
@Oct/'98 London UK


Hungerford Bridgeから見るEmbankment Parkの緑



全長346km、その下流152kmが潮の影響を受ける。 テームズは、今も昔も変わらぬロンドンの生命線であり続ける。 事務所のある Hammersmith からテームズの河畔までは歩いて5分程度で行ける。 テームズの水位は潮の干満で激しく変わる。 実に8mにも及ぶことがあるそうだ。 事務所がある Hammersmith の辺りでは、満潮時川岸すれすれまで水位が昇るが、干潮時にはその水位は川底まで下がる。 干上がった池の如くの様を呈す意外なテームズの姿に一寸驚く。 テームズの川向に渡る一番近い橋はハマースミス橋。 車両の通行が禁止されて久しいらしいが、その理由を聞き忘れた。 恐らく老朽化でよる強度不足だと思うが。 感じの良い旧式の装飾鉄橋は、辺りの緑濃い景色にうまく溶け込んでいる。 そんなテームズが目の当たりにできる、ここの川岸パブはお気に入りの場所の一つだ。 酒類の殆ど飲めない私であるが、場所としてのパブは好きで落ち着ける。 ビールを注文しテーブルに置き、周囲の取りとめの無い会話を耳にしながら、時間の過ぎるのを楽しむ。



トラファルガー広場


テームズは、今でも大切なロンドンの水運路としてその役割を果たしている。 河口からロンドンの中央部までは、途中大規模な水門が設けられているが、生活物資を満載した貨物ボート、人々で鈴成りの観光ボート、豪華なレジャー・ボート、軍艦等がひっきり無しに行き交う。 ある時、干潮から満潮へ潮の流れが変わった時である、貨物船が下流から荷を満載にしてやってきた。 良く見ると様子が少し変。 そうなのです、手漕ぎ船だ。 漕ぎ手が3-4人船尾に居て、交代で威勢の良い声を出しながら、その貨物船は川上へ過ぎ去った。 中世にワープしたような一瞬の出来事だった。 エンジンの付いた船に混じり、唯1船だけの手漕ぎ貨物船。 潮が満ちる時、川の逆流速度は相当な速度になる。 人力でも充分に大きな貨物を川上に運び揚げることが出来るのをこの眼で見ることができ感激、テームズに喝采。 

ロンドンの中央部、ウエスト・ミンスターから少し下った辺りが最もテームズらしく、好きな場所の一つである。 名門サボイ・ホテルから川岸に下ると、そこは、エンバンクメント公園。 テームズに沿い細長い、ベンチの多い小さな公園である。 この公園に付随しているオープン・レストランが気に入っている。 夏場、軽食と飲み物をカウンターで注文する。 大木の広く枝を張った木の下、丸く白いテーブルにアパートから持ってきた新聞か本を広げる。 さまざまな人々の行き交いを眺めながら暫しのスナック・タイム。 公園は無料の人物博物館。 




Canari Warf この辺りは湾の入り江の如く広い川幅



ネルソン提督が1805年、ナポレオンの仏西連合艦隊をトラファルガーで打ち破ったのを記念して造られた トラファルガー広場から、直ぐ東にあるシャーリング・クロス駅。 鉄道橋と平行しテームズに掛かる人道橋、Hungerford Bridge を渡り、テームスの川向へ渡る。 狭い橋には、様々な人種の人々がさまざまな言語をしゃべりながら身を交わす。 マルチ人種都市ロンドンの素顔である。 橋から川下に目をやると、一際緑濃いエンバンクメント公園とその向こうの川側にエジプトから贈られた、クレオパトラ・ニードルが白く輝きそびえている。 紀元前1500年頃に製作されたと言われる花崗岩のオベリスクである。 

川向はロイヤル・フェスティバル・ホール。 ここの地上階にあるカフェテリアは、広くて見通しが効いて感じが良い。 カプチーノとマフィンをトレーに乗せ適当なテーブルに席を取る。 リュックから無料の観光地図を取りだし眺める。 川辺りのプロムナードを川下に5分位歩くと、ロンドン・アクアリアム(水族館)があるらしい。 早速歩いて移動、7ポンドの入場券を買って中に入る。 水槽の中の幻想の世界を眺めるのは、何度経験しても面白い。 子供連れの家族客が目立つ。 特に大水槽の中を気儘に泳ぐ夥しい種類の魚を見ていると、この歳になっても時間が経つのを忘れてしまう。 生物の多様性に改めて感謝。

ロイヤル・フェステイバル・ホールから川上に、狭く短い Upper Ground ストリート、Park ストリート、Clink ストリート等をできる限り風景に溶け込む感じで歩く。 およそ怪しい店の看板等が路地の壁にぶら下がっている一角がある。 前衛アートの古巣であろうか。 Jail の言葉の発祥地である刑務所 Clink Prison の廃墟が狭い路地にポッカり空間を空けている。 今は片面の壁のみが残っていて Winchester Palace と呼ばれているらしい。 その壁の上部にある大きなローズ窓が印象的だ。 

ロンドン・ブリッジを南から北に渡り、川上に川縁を歩く。 幾つかあるフローテイング・レストランの一つに入り食事を楽しもう。 今は引き潮、桟橋に掛かるかなり急なタラップを降りて行く。 小さめの極カジュアルなレストラン。 イタリアンである。 屋根の付いたデッキで行き交うボートを眺めながらの食事はまんざらでも無い。



観光名所Tower Bridge






Oct/'98 林蔵 @London UK (Updated on 13/Oct/'09)#135

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