ノースショアー
@Mar/'04 Hawaii, USA


サーファー憧れの大波が打ち寄せるノースショアー


イミグレーション、カスタムを抜け、エスカレーターで2階レベルのバス停にやってきた。 此処までくれば、日本人の群れから解放される。 定期便のバスに乗るのは、この車社会では車を持たないマイナーな人々か、空港で働くパート・タイマーかであろう。 こんなローカルな雰囲気がたまらなく僕にはしっくりくる。 程なくワイキキ方面行き19番の黄色いザ・バスがやってきた。 2ドル前払いでバスに乗り込む。 バスはダウン・タウン経由で多くの停留所を経由してワイキキに至る。 約1時間のバスライドを楽しむ。 

アラモアナのフード・コートは何時行っても面白い。 庶民の光景に出くわすことができる。 もっとも日本人が多過ぎるのは玉に疵だが。 昼を取るには様々なメニューが手頃な値段で楽しめるのに加え、様々な人間模様を見るのが特別メニューである。 メキシコ料理のコーナーに行った。 米国本土からの旅行者であろうか、上品な御婦人。 勿論、言葉に何の不自由があろうか。 選択のシステムに戸惑っている様子。 ひとつのプレートに3種のメニューを選択するシステムである。 恐らくこの御婦人は、米本土ではこのような庶民フード・コーナーには来たことがないのではないだろうか。 斜め向かいに中学か高校生位の娘さんが一人、大きなリュック(ランドセル代わりか)を隣の席に置き何やら書いている。 ルックスは日本人。 暫くすると娘さんは立ち上がり、“マミー”と大声で母親を呼ぶ。  “マミー”がやってきた。 その後の会話である。  “マミー”は、席に着くなり突然、バリバリの大阪弁を喋りだした。 娘さんはそれに、“米語”で応えている。 日本語英語では無い、れっきとした“米語”なのである。 このアンバランス。 ハワイならではの光景に面白く見入ってしまった。 



多くの漁船や釣り船がひしめくケワロ湾から望む夕陽


ハワイに来ればノース・ショアーに行かない訳には行かない。 私のお気に入りの場所である。 アラモアナのバス停で52番のバスを待つ。 運よくバスは直ぐにやってきた。 ノース・ショアー迄約1時間半のバスライドだ。 これで2ドルなのである。 ハワイのザ・バスは実に頼もしい。 パウマル衛星通信地球局の大きなパラボラ・アンテナが右手の丘に見えたら目的地、サンセット・ビーチだ。 ガイド・ブック片手の日本人客も乗っている。 乗客はほとんどが土地の人々である。 バスはホノルルの市街地を出るとカメハメハ高速に乗り、島を一気に横断する。 途中の停留所で運転手の交代がある。 ハワイ人特有の体格の良い女性ドライバーが乗り込んできた。 ノース・ショアーに近い停留所では土地の中学のガキ共が波乗りボードを抱えて乗り込んできた。 流石、波乗り、サーフィンの本場である。 バスはドリンク、フード持込禁止の筈。 彼らはお構い無し。 若者のマナーは何処も変わりは無いらしい。 リュックからハンバーグやコーラを取り出しては、大声で喋りながらあっと言う間の平らげてしまう。

左手の丘に大きなパラボラ・アンテナが見えてきた。 目的の場所である。 停車合図の紐を引く。 運転手席の前の大きな表示板に "Stop Requested" のサインが点灯する。 バスを降りた。 この辺りはハイウエー(カメハメハ高速:高速と言っても高架式ではなく、柵も無く普通の道である。) 沿いに別荘が立ち並び、自転車道が両脇常緑樹に覆われて続く。 所々道幅が広くなった場所に駐車スペースがある。 サーファー達と見物人の車が並ぶ。 ライフ・ガードの監視台と専用駐車スペースもある。 白い砂浜に出た。 何時も不思議に思うのだが、ハワイは火山島であり、日本の関東と同じ黒い砂浜を連想するのだが、実に白い砂浜なのである。 関西の白い砂浜があたりまえの淡路島で育った私には、この白い砂浜がなんとも嬉しい。 他の人には何でもないことかも知れないが、人間には生まれ育った環境とはそれ程に愛おしいらしい。 広い砂浜で不規則に打ち寄せる大波の様を眺めては、また歩く。 今日は日没までは居まい。 

ふと砂浜の奥の木陰を見ると、よれよれのアロハ・シャツにショート・パンツ姿ではあるが、その手つきがプロと思われるカメラマンがカメラを入念にセットしていた。 その瞬間、彼を思い出した。 アラモアナのバス・センターで、同じバスに乗り込んだ色の黒い50台後半と見られるビーチ・サンダルを履いた男性である。 彼は、今日一日中、特大の波に乗るサーファーのベスト・ショットを1枚でも撮れることを願いファインダーを覗き続けるのだろう。 或いは1枚も撮れず、苦い想いで又バスに乗り込むのかもしれない。 厳しいプロの仕事の一厘を見る思いがする。 



ノースショアーの歩道はまるで森林浴場



バス停で来た時と同じ方向のバス52番を待つ。 小一時間待ったらバスはやって来た。 バスに乗り込む。 バスは更に島を時計方向に回る。 乗り込んできた生徒の中に裸足のハワイアン学生を見かけた。 彼ら彼女らは、靴を無造作に手に持っている。 彼らは貧しくて裸足居るのではなかろう。 多分文化なのだろう。 もともとローカル・ハワイアンは靴等履かなかったのに違いない。 その習慣がこの現代にも残っているのかと思うと、改めて生物の保守性を思わざるを得ない。



海鮮レストラン: Fisherman’s Warf(2階席は船橋スタイル)


"Fisherman's Warf"、観光案内には必ず出てくるレストランである。 一度試してみよう。 アラモアナから海岸沿いの公園を東に歩く。 外洋フィッシング・ボートが多く繋留されているケワロ湾に差し掛かる。 この湾の東側桟橋に "Fisherman's Warf" がある。 外観は然程目立つ訳ではない。 むしろ港の管理棟のような建物である。 "Fisherman's Warf" の看板が無ければ見過ごしてしまうくらいだ。 中に入った。 店内は船室を思わせる狭い造りになっている。 狭いと言う意味は、テーブルとテーブルの間、仕切りのことである。 部屋全体は広い。 黒い太い木が基調のインテリア。 大きな魚の剥製が暗い室内の上部から渋い光を放つ。 2階席はキャップテン・ブリッジ席になっているらしい。 太い飾り縄が2階席への螺旋階段へ導く。 豪華客船の船室入口を連想させる。 船内レストランのようなボーイが注文を取りにきた。 先ず飲み物の注文である。 土地のビールにしよう。 ツナミと言うのが土地のビールらしい。 ツナミとは津波のことで日本語から取った名らしい。 そう言えば、環太平洋津波予報センターはここハワイにあるらしい。 飲み心地は悪くない、軽いのである。 アルコールに極めて弱い私には大変嬉しい。 メインは "Mahimahi" と言う白身の魚を注文した。 何でも、壁いっぱいに掛かっている大きな剥製の魚だと言う。 付け合せはフレッシュ野菜にピーマンの炒め物、マッシュポテトにパンとバターがつく。 窓際のコーナー席で黄昏の残光に淡く光り、浮かぶ様々な釣り船を借景に料理を楽しんだ。



上級サーファーにはたまらない大波が打ち寄せるノースショアー







Mar/'04 林蔵@Honolulu Hawaii (Updated on 19/Jun/'08)#167

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