岐阜県中部飛騨地方、長良川とその支流吉田川が合流する吉田川の辺に開けた小さな城下町である。 その街は、今に残る江戸の昔の面影を色濃く残した町々のひとつだ。 古い大きな看板を載せた引き戸の木造商店や、黒い板壁に白の漆喰の粋な造りの宿屋等が通りの両側を埋める。 都会から来ると悠久の時間が流れる異次元の世界にワープするのである。 名水が周辺の山から湧き出て、通りには清水が流れ、水の町として名高い。 そして踊りである。 行って初めて知ったのだが、ここの夏盆踊りは半端ではない。 7月の12日に始まり、9月の6日の踊り納で終わる。 この間、1ヶ月以上もの間、ほぼ連日踊るのだ。 特に8月の中頃、世間ではお盆と呼ばれる4ヵ日は、徹夜(夕方8から朝の5時迄)で町民も観光客も踊り通すのである。 このエネルギーと文化の伝承は凄い。
今年(03年)の夏休みも、昨年に引き続き出張でつぶれた。 と言っても今年は幸いにもつぶれたのは半分で済んだ。 成田から相模原の家に着くや、地図を眺める。 これでは家人に愛想を着かれるのも文句は言えまい。 年に数回一人で出掛ける(サバイバル)キャンプの場所選定である。 数年前のバイク雑誌に記事にあった、郡上八幡が目にと留まった。 距離的にも1泊で行ける、丁度良い距離にある。 この夏のサバイバル・キャンプの目的地は郡上八幡にしよう。 翌日と言う訳にも行かないので、翌々日皆が寝静まっている夜明け前、そっとリュックを抱え自室から抜け出す。 (この時不覚にもテントと寝袋の入ったサックを積み込んでいないのに気付いていなかった。)
さて、郡上八幡に到着して驚いたのが、冒頭に書いた郡上踊りである。 町中に浴衣姿の女性が目立つ、数百メートルの通りの端から端まで連なる夥しい屋台がいそいそと準備に余念がない。 町にある3本のメイン通りの内今日(8月15日)は、新町、栄町通りが徹夜踊りの会場になるらしい。 4ヶ日の徹夜踊りは、毎夜会場の通りを変えるのだそうだ。 街の中心にある旧庁舎記念館にある案内書で貰った案内書には、踊りは8時からと書かれている。 未だ小1時間ある。 少し夕闇が垂れ込めかけた古い町並みを散策する。 田舎(淡路島)の町の長屋風町並に似た感じで懐かしさがほのかに沸く。 セブン・イレブンもなく、ネオンも無い。 ちょうちんの薄い明かりが店の前を照らす。 未だ8時にならないのに、人々は通りの真ん中広場に陣取った山車から流れる民謡を節に、誰と無く踊りだした。 1ヶ所で踊りだすと、ほぼ一斉に、数百メートルの通り全体が踊りの輪に変身する。 ステップは割りとシンプルなので、飛び入り観光客でも直ぐ踊りの輪に入れる訳だ。 長く続くものには共通の仕組みがある。 シンプルと言う仕組みもその一つであろう。 街の店屋で踊り鉢巻を1本350円で買えば準備はOK。 さー、これから朝5時迄、踊りは延々と続く。 もっと長居をしたiいところだが、夜も更けてきた。 この辺でキャンプ場へ移動しよう。
15/Aug/2003 林蔵@岐阜 (updated on 4/Jun/'08)#155 |
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