偕楽園
@Mar/'03 水戸、茨城


偕楽園の梅の花


日本3大名園の一つに数えられるほどの名庭園である。 水戸藩9代藩主の斉昭公が水戸藩の藩政建て直しの一事業として建設したものらしい。 藩の民皆と楽しむ為に建設した庭と言われる。 又2代藩主、光圀公は水戸黄門として余りに有名だ。 そんな水戸を、バイクで仲間と訪れることにした。

3月21日、春分の日。 この日は殊の外良く晴れ、バイク乗りにはたまらないほど良い天気である。 常磐道、守屋SAで8時に待ち合わせだ。 相模原の家を5時15分に出発。 途中大黒埠頭で休憩、守屋SAには7時20分に到着。 かなり早めに着いたと思ったら、Wさんが6時から守屋SAで待っているとのこと。 昨夜は気分が騒ぎ、3時くらいから目が覚めてしまったらしい。 他のメンバーを待っていると、BMWのバイクが次ぎから次ぎへと守屋SAに滑り込んで来た。 BMWに関する何かの催事があるに違いない。 道理で、今日はBMWのレースが何処かで開催されるとのこと。 日本にもバイク道楽に金を掛けることの出来る輩がこんなに居るのかと驚き、反面安心もする。

水戸ICで高速を降り、水戸市内方面へ向かう。 初めての道だ。 未知への期待で胸が踊り、わくわくする。 偕楽園の標識が見えた。 バイクを駐車場に停めようとしたが駐車場は車専用でバイクは停めてもらえない。 係員に尋ねてバイクの置く場所を教えてもらう。 梅園の端のコーナーに小さな空き地がある。 そこに我々のバイクを並べた。



梅の木の下で頂いた梅弁当


偕楽園から小川のような沢渡川を隔てて反対側にある偕楽園公園センターで水戸藩にまつわる前知識をインプットする。 センター内では名物おじさんらしき初老の侍風紳士が、偕楽園や水戸の歴史を、板に付いた早口でまくし立てる。 水戸を大変誇りにして居て、年老いても衰えぬ豊富な知識をよどみなく披露してくれている。 近くに徳川博物館があることを教えてくれた。 何でも興味を待つ仲間である。 早速訪れた。 受付が大変モダンな造りなのに驚く。 1000円の入場券を買い内部を拝見。 丁度、徳川家の雛人形展を特集で行っていた。 昔の手の込んだ職人芸を見事に成就させた作品が数多く展示されている。 博物館で何時も思うのだが、このような品物は、当時は極限られた特権階級しか手にし楽しむことができなかったであろう。 しかしこれ程芸術性の高い品物が作られたのは、やはり文化であり、そのような文化は一握りの金に糸目を付けない特権階級が要求しない限り、生まれないものかもしれない。 洋の東西を問わず、飛び切りの芸術価値は、強力な特権階級が生まれた時と同じく創出されているように思う。

さー、いよいよ偕楽園の本園に入る。 偕楽園は沢渡川の北側の斜面と高台に広がる。 斜面を登りきると、土産物屋や焼きいか、焼き蕎麦などを売る店が沿道の両脇に立ち並ぶのは私の感覚からは多少頂けないが、斉昭の庶民と供にと言う思想からすると、これもまた適ったことなのだろうか。

丁度お昼時間だ。 梅林の入り口で売っていた梅弁当を買い梅林の中で頂くことにした。 なかなか豪華な弁当だ(1000円)。 梅林の端、千波湖を見下ろす場所でお弁当を広げた。 陽気も良く素晴らしい眺めを楽しみながら梅弁当に舌堤を打つ。

梅林の奥に一際目立つ瀟洒な建物がある。 好文亭だ。 9代藩主斉昭の別所であるが、己一人が楽しむのではなく、広く民と供に楽しんだ場所と言われる。 幾つもの部屋があり、その一部屋一部屋に、大変趣向が凝らされている。 襖いっぱいに描かれた絵が、それぞれの部屋の雰囲気を色濃く表現している。



弘道館内に展示された百姓に感謝する大きな置物


偕楽園を楽しんだ後は、市内にある弘道館を訪れた。 これも偕楽園公園センターの名物おじさんに教えてもらった場所だ。 ここもやはり9代藩主斉昭が藩の建て直しを掛けて、旧武家屋敷を全部打ち壊し、新しく教育の場として建設したものと言われる。 その中心的な建造物がこの弘道館であった。 綺麗に保存されており、歴史解説ボランテイアーが訪れる人々に優しく説明してくれる。 ここに掲げられている言葉が気に入った。 “芸に遊ぶ” なかなか水戸藩らしい言葉ではないか。 人間の心の奥底を見据えた言葉だと思う。 ちなみに芸とは、音楽、弓、礼、書、馬術、数学の6芸を言う。 弘道舘は、徳川幕府最後の将軍、15代将軍、慶喜が若き頃勉学に励んだ場でもあり、大政奉還後、謹慎した場でもある。



15代将軍慶喜が謹慎した部屋“至善堂”


水戸の文化と歴史を堪能した後は、銚子に向け鹿島湾岸沿いに南下。 銚子の地球が丸く見える丘公園にあるカフェに辿り着く。 丁度大きな太陽が西の水平線に沈もうとしていた。 真っ赤に染まった日没がコーヒーの味をこの上なく旨くしてくれた。 



カフェから見る屏風ヶ浦に沈む夕日(F氏撮影)








21/Mar/'03 林蔵@茨城 (Updated on 25/Nov/'10)#148

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