渦の道
@大鳴門橋 Nov/'03 鳴門、徳島


兄弟姉妹が集合


瀬戸内海が狭い海峡を太平洋に流れ落ちる。 まさに落ちると言う言葉がぴったり当てはまる。 その落差は、時に1m以上に及ぶ。 そこは古の昔から潮が渦巻く海峡として土地の漁師たちから恐れられているが豊かな海の幸を生み出す海域でもある。 今この海峡には近代的な吊り橋が架かり、最近橋の下に観潮用プロムナードができた。 渦の道である。



大鳴門橋にぶら下がる渦の道


45mの眼下に激しい潮流が大きな渦を巻く:観潮船が小さく見える


03年11月、この渦の道を歩く機会を得た。 いつも田舎に帰るとゆっくりしたいと思いながら、トンボ帰りで相模原に戻る。 今回は特別だ。 目的は淡路観光に行くのである。 朝の3時に相模原を出発。 田舎に行くと交通の便が極めて悪い。 車で出かけた。 名古屋からは東名阪高速で桑名に出、桑名からは今は償還期限が過ぎ無料となった名阪国道(国道25号)を西に走り、奈良を経て大阪に入る。 大阪で阪神高速に乗り須磨へ向かう。 阪神淡路大震災で横倒しになった阪神高速も今はすっかり復旧している。 阪神高速はさらに西に伸びるが、須磨で一般道に降りる。 山が海岸に迫る狭い須磨の街を走りたかったのである。 高速を降り国道2号線に出る。 ここは大阪湾に面して山がせり出し狭い街道沿いの街である。 この狭さが何とも心地良い。 海の魚も磯の入り組んだ場所がお気に入りらしいと釣り好きの末弟がいつか言っていた。 人間も所詮動物、居心地の良さを感じる空間は似たようなものだろうか。 明石でフェリーに乗る為もあって、この狭い海際の道を選んだ。 世界最長の吊り橋、明石海峡大橋はフェリーに乗り、のんびりした気分でと下から見るのが、とても感じが良く好きだ。



明石海峡を渡るタコフェリーの乗り場


たこフェリーから見る世界最長サスペンション橋4kmの明石大橋


淡路島に上陸、島の東側を走る国道28号線を南下する。 最近は道が整備され、走りやすい。 田舎では、神戸にいる弟一人を除き兄弟姉妹が全員揃っていた。 偶の機会である。 親父が皆を呼んだらしい。 普段は親父と末弟夫婦のみが広い敷地に住みんでいるが、何か行事めいたことが無ければそれぞれ生業を持っている兄弟姉妹は集まらないのである。 こんな機会は親父を始め兄弟達に取っても大変な楽しみの一つなっているに違いない。 広い田舎の家である。 子供たちがそれぞれの家族を連れてきても、十分に座ることができる部屋があるのである。 都会でがとても考えられない贅沢と言えないでもない。 今回は20名余りだ。 大勢の子供とその連れ合いや孫、曾孫に囲まれ、親父は何時になく華やいで見える。 親父は82歳にしてまだバリバリの現役百姓であるが、またこうして親父と皆が集まれるのは後何回あるだろうか。 田舎の東と西に見える低い山は空気が澄んで綺麗にみえた。 今回の帰省では、子供のころとあまり変わらない田舎の風景をみ、一時心が洗われる思いに浸ることができたのは幸いと言うべきだろう。

島に着いた翌日、鳴門海峡に掛かる鳴門大橋にぶら下がる格好の渦の道を訪れることにした。 南北に50km、東西に一番広いところで25kmの島には、高速道路が明石海峡を世界最長の明石大橋(全長4km)で跨ぎ、島を縦断し鳴門大橋を経て徳島へ延びる。 早速島の少し南よりにある洲本インターから、高速に乗り進路を南に取る。 低い山間部を越えると、すぐ三原平野に出る。 玉葱の生産地で名高い三原平野を横断し、再び低い山間部に入る。 淡路島は、北部と南部に山があり、中間部がわずかに開けている。 その南部の山間部に差し掛かったのである。 暫く走ると、高速道路は鳴門海峡を跨ぐ大鳴門橋に差し掛かる。 眼下に激しく流れる海の滝を見下ろしながら、徳島側へ渡る。 鳴門北インターで降り、鳴門公園がある孫崎方面へゆっくり海沿いに走る。 車を駐車場に置き、展望台から、渦潮を眺める。 今日の大潮は12時+・-1時間だと言う。 丁度良い時間だ。 この展望台に着いたのが11時だった。 海面から45メートルの橋げたの下に遊歩道が整備され、渦巻く潮の流れを真上から眺めようと言う志向だ。 迫力満点の鳴門の渦を足下のガラス窓から見ることができる。 ガラス窓の下では、渦潮観潮船が激しい潮流に翻弄されている姿が、手に取るように見える。 この渦潮は世界広しと言えども、この鳴門海峡でしか見ることができない。 地球と月とこの瀬戸内海と大阪湾の地形が織り成す一大ロマンである。 満潮時、太平洋の海水が淡路島の東側の紀伊水道を北上し明石海峡を越え、瀬戸内海に流れ込む。  その海水が淡路島を一周して鳴門海峡に辿り着く時、鳴門海峡は、干潮を迎える。 この自然のシステムが、狭い海峡に滝のように流れる落差を生むのである。

翌日、義姉に案内され大鳴門橋の近く福良にある、「大鳴門橋記念館」を訪れた。 複雑な地形の小さな山の頂上にある立派な記念館だ。 ここでは2つの常設イベントがある。 ひとつは、鳴門海峡の渦潮を神話と科学で開設する立体パノラマ映画。 ほのぼのとした神話と、立体画像の渦潮は迫力満点で知的な刺激を味わうことができる。 もうひとつは、淡路が誇る人形劇の芝居を観劇することができる。 本格的な人形劇の舞台で、黒子3人による人形劇が上演される。 その日の出し物は、日高川入相花王「渡し場の段」であった。 淡路で18年間育ったが、人形劇を観るのはこれが始めてである。 なかなか味のある芸術作品だと、改めて人形劇の面白味を知ったのは、遅きにしても大きな収穫であった。



国生み神話のいざなぎ神社


貢酒


樹齢900年の夫婦大楠


桧皮葺の本殿




23/Nov/'03 林蔵@兵庫 (Updated on 8/Jun/'08)#159

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