正月Ticket
@Jan/'07 JR東日本, 福島、新潟



白虎隊の像が立つ会津若松駅前: 時代を感じさせる駅舎によくマッチしている


駅のデッキから拝む初日の出



数年前にもこの企画を利用した。 昨年の元旦はヨルダンのアンアン滞在中で、一人住まいのアパートで過ごす羽目になったが、 今年は運良くインドネシアのビザ更新の為、丁度一時帰国中にお正月を迎えることができた。 かくして親しい友人御夫婦と、出かける運びとなった。 JR東日本が企画する、元旦、24時間乗り放題、グリーン車を4回利用できる元旦特別チケットである。 大変手軽なお出かけ切符だ。 翌々日にはインドネシアへ再渡航する身である、あまり遠出はできない。 鉄道マニアが過ぎる息子のことは言えないが、元旦に小さい列車の旅に出ることになった。 計画段階では行き先は三陸海岸を候補に挙げていたが、既にグリーン席は空きがない。 そんな訳で行き先は、会津若松と新潟になった。

07:09 最寄の駅で待ち合わせた。 天気は良い。 日の昇る少し前の時間白い息を吐きながら早足で駅へ向かう。 駅に着くと、丁度初日の出の太陽が横浜に伸びる線路の上の雲間から昇っていた。 幸先の良い小旅行になりそうだ。




日本が誇る新幹線車両(東京駅) 
空気抵抗を極度に押さえた長いノーズ、沿線への騒音対策にも様々な工夫がこらされている


東京駅から郡山間は東北新幹線を利用する。 東京駅09:00発のつばさ107号列車だ。 グリーンの指定席なので慌てることはない。 発車少し前、改札レベルの待合室からホームへ上がると、列車は既にホームに到着していたが、車内の清掃中だった。 それを示すキャラクターを使ったわかり易い表示があるのは、日本ならではのサービスだろうか。 



これから乗り込む ”つばさ107号” は、お掃除中

 


JR東日本の元旦切符はグリーン車に4回乗れる
今回は東京-郡山、新潟-東京、東京-八王子間を利用した


東京駅を定刻に発車した ”つばさ107号” は宇都宮迄は自慢のハイスピードは出せない。 線路がそのスピードに設計されていないのか、沿線の住民に対する騒音対策なのかは、筆者はその訳は知らない。 宇都宮を出ると巡航速度にスピードアップされる。 郡山駅には、1時間程度で到着する。 相模原の家を出てから僅か3時間程で郡山迄来れるのである。 日本の鉄道システムの高速、安全、正確さを改めて実感する。
 

 
郡山から磐越西線に乗り換える


郡山で磐越西線に乗り換える。 これが本日のメインだ。 郡山と新潟を結ぶ単線普通列車である。  グリーン席も指定席も無い。 運が良ければ座席にありつける。 真っ赤な車体の磐越西線の車内に乗り込んだ。 車内は向かい合わせになった4人掛けの座席が並んでいる。  東京近辺で見る普段の通勤時の混雑はないが、元旦にしては多くの客が乗り込んでいる。 運良く向かい合わせになった4人分の席を確保できた。 




冬の磐梯山:盆地は一面の雪景色


 

郡山駅を出ると列車は徐々に高度を上げてゆく。 郡山では雪は北側の日陰になった部分に僅かに見える程度だったが、平地にも積雪量が次第に増え、辺り一面が雪景色の様相を示してくる。 一際その雄大な姿を見せる磐梯山がどんどん近くに迫りくる。 数日前に降った雪だろうか。 盆地に積もった雪が一面美しく輝く銀世界を眼前に演出する。 



会津若松市: 正月装いのお店 



11:48、会津若松駅に着いた。 ここで更に新潟に向け磐越西線を乗り換える。 新潟行きの列車は14:32分の発車である。 2時間半程度の街散歩ができる。 歴史の街を意識した駅舎を出ると、白虎隊の像が迎えてくれる。 駅を出て右手に暫く歩くと、野口英夫青春通りに出る。 この通りは歴史建造物の多い通りだ。 10数年前に裏磐梯へ家族旅行に行った時にも会津若松を訪れ、この通りを歩いたはずだ。 だが、さっぱり思い出せない。 こんな通りだっただろうか。 通りの最後辺りになりやっと、記憶の糸を辿り寄せた気がする。 見覚えのある古い黒壁の屋敷があった。 あの時お昼に食べた蕎麦屋はやっているだろうか。 少し入り組んだ場所にある蕎麦屋は元旦営業をやって居なかった。 そう言えば、殆どのお店は閉まっている。 開いているのは、マックと吉野家くらいだ。 

 


会津若松市:街角にあった明治戊辰の役西軍戦死者墓標



仕方なく、駅の方へ向かって戻ることにした。 通りには多くの歴史建造家屋が立ち並ぶ。 街角には、戊辰の役戦没者の墓標も見ることができる。 

 


会津若松市は蔵の街:街には多くの蔵造りの家屋を見ることができる



会津若松市:蔵造りの家



会津若松市:感じの良い商屋


 


会津若松市:古い商屋


駅に近くなった街角に、営業している蕎麦屋があった。 元旦から旅人の便宜を図ってくれる、ありがたいサービスである。 入ってみた。 夫婦でやっているのであろうか。 江戸の蕎麦屋の威勢の良さは微塵もない。 主人はもくもくと、かまどに向かう。 奥さんであろうか、客の注文を聞く。 店の内部は、さして広くもなく、カウンター席と数卓のテーブル席がある。 先客がテーブル席に居る。 カウンターに4人は陣取った。 内陸の土地だ、ニシン天ぷら蕎麦を注文した。 料理は注文を聞いてから作る。 その分時間が掛かる。 しかし、このスロー・フードこそ、これからの時代に求められているものではないだろうか。 ニシンは柔らかく、蕎麦は腰があって旨かった。




郡山-新潟間は磐越西線で行く、途中会津若松で車両を換える
会津若松からは、2両編成となる



会津若松からの列車は2両編成だ。 新潟へ向け単線上を2両の列車は進む。 磐梯山はずんずん遠くなる。 雪深い山中に分け入るのかと思いきや、以外と線路の高度は上がらない。 雪の深さも少しも増さない。 増すどころか、雪は次第に少なくなる。 




会津若松-新潟間にある津川駅:狐の嫁入りで有名らしい


新潟にはすっかり夜の帳が降りた頃到着した。 ここで東京行きの新潟新幹線に乗るのであるが、ここでも約2時間の乗り継ぎ、夕食タイムがある。 友人のアレンジしてくれた1日の旅程は完璧である。 新潟の町は信濃川の中州に発展した。 新潟駅からは、西に大通りを600mばかり進むと中州との間に掛かる萬代橋に行き着く。 1929年竣工の6連アーチのコンクリート造りの堅牢で美しい新潟を代表するランドマークの一つであるらしい。 2004年には国の重要文化財に指定されている。 今日の旅はここ迄である。 旨い夕食でも食べて戻ろう。 と思ったが、ここも元旦は殆どの店が閉まっている。 結局、駅前の大衆居酒屋、北海道庄屋で、ねたも揃わぬ料理を頂くことになる。 お正月から、そんなサービスを望む方が間違っているに違いない。 天気に恵まれ、充実した一日を過ごせたことに感謝せねばなるまい。 美しい日本に、そして楽しい時間を与えてくれる友人に喝采。 

 


新潟市 萬代橋:6連アーチの堅牢で美しいコンクリート橋
1929年竣工、2004年国の重要文化財に指定される
正面はホテル・オ-クラ、右手河口は新潟港、北朝鮮からの船も停泊する







1/Jan/'07 林蔵 @JR東日本 (Updated on 30/Sep/'08)#279

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