高尾山飯縄大権現火渡祭り
@Mar/'03 高尾山、東京


激しく燃え上がる火の神


今日は高尾山飯縄大権現の火渡祭がある。 拙宅から高尾山迄は比較的近い。 マラソンの練習コースにしている程で、10km程度の道程だ。 運動を兼ねて自転車で行こう。 町田街道を高尾まで走り、国道20号を下る。 下ると言っても、実際には登りだが。 高尾山口にある東京都の高尾自然博物館で,1時間半ばかり展示物や季節の説明に見入る。 ここは無料であるが結構本格的な展示がされている。 3階には図書館や講堂もあり、様々な自然科学教室が開かれる。



高尾自然博物館内の展示: 東京にも住んでいたナウマン象


自然科学館で暫く時間を過ごしたあと、国道20号を大垂水峠まで昇り、セブン・イレブンで仕入れたおにぎりを峠の山で頂いた。 野外で頂くお弁当は旨い。 運動をした後の野外でのお弁当は又格別である。 お弁当の後は坂を来た道を一気に駆け下り、火渡祭の会場へ向かう。 午後1時頃から修行僧が白装束や派手な作法着に身をくるみ、神輿と法螺で山から下り来、祭の舞台に入場する。 厳かに事前作法が長々と続く。 白装束や、派手な衣装を身に付けた男女の修業僧が神輿と、古式ゆかしき道具(刀、弓斧、等)を肩に法螺を吹きながら、静々と或いはけたたましく作法は続く。 修業僧全員に無線マイクが付けられており、作法のやり取りが会場に設置された大型スピーカーから荒々しく高尾の山にこだまする。 作法のやり取りは古い言葉で激しく取り交わされる。 一通りの作法が終わると、いよいよ中央に設けられた木材(青々した檜の枝で角材を覆った縦横5mくらい)に火が放たれる。 おりしも風が強い。 瞬く間に炎は天空に舞い上がる。 風が真正面から来ると、見物席からでも熱くて居れない程だ。 木材が燃えきると、いよいよ火渡である。 燃え残った火の付いた炭の上を歩くのである。



火を携え、腰に猪の皮を巻いた修業僧の入場


修行僧達が渡り終えた後、一般の人も経験できる。 私も並んだ。 列には外国人の姿も少なくない。 列は2方面から長々と続く。 多くの人々が御利益にあやかろうと靴を脱ぎ、靴下を脱ぐ。 その間、修業僧は五穀豊穣、家内安全、良縁成就、交通安全、等、マイクを通じて場内に響き渡る音響効果を出し民の安全と幸せを祈念する。 帽子を脱ぎ、塩の山に立ち、両脇の修業僧から肩を叩かれ火の道に進む。 火の道と言っても既に土の上を歩くのである。 火の上とは程遠い。 それでも途中、一般人用に火の付いた炭は掃き除いた後に残っていた本当に火の付いた炭を踏んだ。 さすがに熱かった。 火の道を通ると、又反対側の塩の山に立ち両脇の修行僧から肩を叩かれ、中央の祭壇に進む。 そこには寄付盆があり何がしかの寄進をする。 初めての体験だったがなかなか面白かった。 古くから、人々の安全と健康な生活を願う心と厳しい修業に身を削る修道士達の触れ合いの場が自然な形で残っているのは、何か素晴らしい気がする。 ややもすると、怠惰と享楽に身を社会を滅ぼす戒めだろうか。 



法螺を吹き鳴らしながら入場する修業僧






9/Mar/'03 林蔵@東京 (Updated on 19/Nov/'10)#145

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