奥の細道2:山寺
@Jan/'04 山寺、山形県


険しい岩山に建つ五大堂


そこには無念にも、「台風による土砂崩れのため通行止め。」 の看板が立っていた。 この先へは残念ながら車を進めることはできない。 秋保温泉から芭蕉ゆかりの山寺へ行く予定であったのである。 4年前の春は無念の思いを胸に、途中で引き返さざるを得なかった。 宝珠山阿所川院 立石寺(りつじゃくじ)、清和天皇の勅命で860年、円仁(慈覚大師)が開山したとされる。 また芭蕉が出羽越えの際訪れた山としても名高い。

今年の元旦、思わぬ明報が飛び込んできた。 友人夫妻とJR東日本の元旦パスで初詣を兼ね山寺へ行こうという趣向である。 願ってもない、一も二もなく賛同した。 元旦24時間、JR東日本の全区間、急行特急を含め乗り放題と言うチケットである。 大変格安なのである。 更に3、000円追加すればグリーン車にも乗り放題となる。 友人に頼んでグリーンパスを取っていただいた。



お正月からグリーン車に乗れてささやかな幸せに浸る


元旦、我が家で東の窓越しに昇る初日の出を拝み、徒歩で最寄のJR駅へ向かう。 抜けるように晴れた元旦の空。 今年は良いことがありそうだ。 友人夫妻と駅で落ち合い、フリーパスのミニ旅行の出発である。 
東京駅で2階建て仕様の東北新幹線 “山彦” に乗り換え仙台にやってきた。 絶好の日和に恵まれ、途中平和な日本の山河を心ゆくまで堪能することができた。 山彦のグリーン席は2階席で眺めが極めて良いのである。 秩父山塊、筑波山、男山、安達太良山、那須連山、蔵王等々が車窓を埋める。


 
立石寺本堂                       参道の途中にあった芭蕉の像


仙台からはローカル列車の仙山線の旅が始まる。 仙台では乗り換え時間が数分だと言うので、新幹線ホームからまっしぐらに仙山線のホームへ向かう。 ドアー開閉用プッシュボタンが付いた車両が短時間でローカルに来た感じをことさら強くする。 慌てて乗り込んだが列車は発車する気配がない。 程好い混み具合である。 すこし損をした気持ちで待っていると列車は10分ほど遅れてゆっくりホームを離れた。 山形からの列車の到着が遅れた為の時間調整だったようだ。 列車はやがて急峻は山肌に両脇を挟まれた山間を作並街道沿いに広瀬川の谷をどんどん高度を上げ、更に奥へと分け進む。 長いトンネルに入った。 面白山トンネルである。 約5kmのトンネルを抜けると面白山高原駅がある。 ここからは最上川に開けた山形盆地に向けて駆け下るように列車は高度を下げながら山寺駅に到着した。


       
趣のあるJR山寺駅                         奥の院: 如法堂と大仏殿    



風情のある小さな駅である。 駅の前には紅葉川が流れ、川向こうに門前仲見世が並ぶ。 その門前の後ろに切り立った岩山が屏風の如くそびえており、岩肌にへばりつくように幾つもの仏閣伽藍を仰ぐように見上げる。 元旦と言うこともあり人出はかなりある。 友人は既に訪れたことがあり道案内役をかってくれる。 彼は本当に地理に詳しい。 一度訪れた場所は確実に間違うことなくすいすいと行ける。 あだ名は人間GPS。 バイクでも一緒に出かけることが多いが、いつもそうなのである。 仲見世の並ぶ門前には幾つもの蕎麦屋が軒を連ねており、そんな蕎麦屋の1軒に入り山登りの前に腹ごしらえ。 山の蕎麦は旨い。 いよいよ山登りコースに差し掛かる。 登ってみると予想に反し然程でもない。 駅から仰ぎ見た寺院群には難なく辿り着いた。 険しい山は逞しい生命力と聖霊が宿る。 静けさに秘めた力を持つ。 自然と心の調和と闘いの場がある。 心が洗われると供に鼓舞される。 高僧達はこの魅力に獲りつかれ、世の泰平と豊穣を願い、より深い真理を求め真理を世に広めようとするのだろうか。 1、200年に及ぶ山の歴史の余韻に浸りながら帰路の新幹線のグリーン・シートに身を沈めた。



重要文化財 3重小塔(2.4M )の前で






1/Jan/'04 林蔵@山形 (Updated on 13/Jun/'08)#162

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