再びサウジ鉄道でダンマンにやってきた。 週末の列車は満席だ。 キャンセル待ちでかろうじて席を確保できた。 今回は2人掛けの席が向かい合う4人用席だ。 隣は土地の中学生程度の男の子、対面は杖をついた御老人(男性)。
彼は生粋のアラビア人だ。 イスラムの教えでは、自分のものと他人のものを厳密の区別しない部分がある。 富者が貧者を救う掟であり習慣である。 林蔵は、夕食の代わりと思って残り物の果物をプラスチック袋に数種類数個ずつ入れて持ってきた。
その御老人は何か言って、林蔵の承認も得ずに袋の中の果物を取出し食し始めた。 実におおらかである。 食べかすは、列車の床に何の躊躇もなく捨てる。 一等席に乗車しているのだから、かなり裕福な方に違いない。
それは持っている杖の上品さからしても想像がつく。 そんな訳で林蔵の夕食はなくなってしまった。
海岸通り:
緑の植え込みにススキ、灼熱の地にも秋
この真っ直ぐ伸びるプロムナードを2km程進むと、波止場の先端に魚釣り公園がある
ダンマン駅を降り、タクシー乗り場に行った。 相変わらずタクシーの呼び込みが激しい。 その時だ。 多くの運転手の中から少し見覚えのあるかなり歳をめした運転手が、握手を求めてきた。
なんだ、前回利用した運転手だ。 タクシーはそうとう年期が入っているが、既に行き先を知っているし、値段の交渉も既に前回終わっているので、 そのタクシーを利用することにした。 行き先は言わない。 間違いなく目的のホテルの前で止まった。
40SAR(約880円)を支払ってタクシーを降りた。 このホテルを利用するのは3回目だ。 既にフロントのおにーさんは私を覚えている。 しかし、驚いたことに今回の宿代は前回2度の滞在時に比べ倍の値段だ。 どうしたことだ。 同じシングルルームである。 聞くとシーズンだと言う。 そうだ、来週からハッジが始まる。 今週は既に学校も休みになており、丁度日本のクリスマス・年末シーズンとような感じだ。 世の中はお休みモードなのである。 そんな訳で宿代も高くなるのだそうだ。 こういうことろはしっかりしている。 それでも値切ってみた。 550SAR(一万二千円)を500SAR(一万千円)にしていただいた。
この防波堤の先端が魚釣り公園だ
今回のダンマン入りの主な目的はビザの延長だ。 アラビア湾に浮かぶ小さな島国バーレンに一旦入り、同日に再びサウジに戻る算段である。 バーレンで一泊と言うプランも有ったが、ダンマンで仕事の内部打ち合わせを入れたので、ダンマン2泊になってしまった。 バーレンはイスラム国だがお酒は飲める。 多くの人が週末バーレンに行くのはこの為だ。 林蔵はお酒を嗜まないから、関係ないが。
早朝、湾岸沿いに歩いた。 埋め立て護岸に沿って真っ直ぐな緑のプロムナードが伸びる。 1km程進むとプロムナードは防波堤に変わる。 その境目には遊園地(水族館も内部に併設されている模様)がある。 ゲートから内部の写真を撮らせていただいた。 アラブ世界にコーヒーポットは欠かせない。 ここにも大きなコーヒーポットの張子がある。 リアドと違って汗が噴き出す。 1時間の散歩でトレーナーは汗でびっしょりになった。
だが、海岸通りのウオークは気分が良い。 アラビア湾は海の幸が豊富だ。 この海の幸は油だけでなはない。 魚類の育ちが著しく良いのだ。 散歩の途中でも海面から魚の飛び跳ねる様が随所で見られる。 海に感謝。
海岸通りのプロムナードが防波堤に変わる境目にある遊園地:
ドルフィン・ワールド、 水族館も併設されているのだろうか
宿に戻り、現地マネージャーとの簡単な内部打ち合わせをロビーで済ます。 彼は、これから自分の車でリヤドへ戻る予定だ。 私は、明日バーレンへビザの延長に行く。 朝食を部屋で済ませ、街歩きに出かけた。 列車のターミナル駅からタクシーで宿へ移動中に見かけた超大型モール、スーパーパンダへ行ってみようと思ったのだ。 多分歩いて一時間程度だろう。 思った通り、約一時間でスーパーパンダに到着した。 だが、モールは閉まっている。 午後の一時過ぎだ。 そうか、今日は休日だ。 お店は午後4時にならないと開かない。 スーパーパンダの対面に凄く流行っていそうなレストランがある。 Shawaya と言う鶏専門店だ。 モールも開いてないし、お昼でも食べよう。 Shawaya に入った。 内部は清潔で衛生的だ。 多くの客がレジに並んでいる。テークアウト客も多い。 ファーストフード店のようにレジの上に大きな写真のメニューがある。 其のうちの一つを選んで注文した。 22
SAR(440円)を払って、席を探す。 席は殆どが床席だ。 絨毯が敷き詰められており、手枕が用意されている。 アラブ式の座って手で食べるスタイルである。 外国人用にテーブル席も幾卓か用意されている。 少し待って空いたテーブル席に陣取る。 注文の品が運ばれてきた。 うわー、でかい。 これはとても一人で食しきれない。 ウエーターが御一人ですかと聞いた意味が今わかった。 半分をテークアウト用の紙ボックスに詰めてもらった。 それでも残りの半分も平らげることができなかった。 残したことに大きな罪悪感(百姓の息子の癖が抜けない)を覚えながらも、店を出た。
ダンマンのチキン専門店 Shawaya のメニュー、
鶏丸々一羽分、22SAR(約440円)
数名で食するのが普通らしい
Shawayaを出て、未だ開いていないスーパー・パンダへ入ってみた。 内部のテナントはすべて閉まっているがウインドーショッピングはできる。 数組の完璧な黒装束の女性グループが中央コンコースで午後4時の開店を待っている。 林蔵は、ゆっくりグランドフロアーとファーストフロアーのお店をウインドーショッピングして回った。 店種はリヤドのそれと余り変わらない。 スイート屋、高級夫人服飾品店、インテリア店。 だがリヤドでは見かけないお店を一軒発見した。 日本のダイソーだ。 高級ブランド店に混じり店を構えている。 こんなところでも100円ショップが頑張っているのかとちょっとした感動ものだ。
宿に戻り明日のバーレン行きのバスの予約をする為、バスセンターの場所を尋ねた。 バスセンターは歩いて15分程度の場所にあるらしい。 勿論、宿のクラークは私が歩いて行くとは思っていない。 タクシーの利用を勧めてくれた。 10 SAR(220円程度)だと教えてくれる。 林蔵は歩いて行ってみた。 海岸通りを南へ10分程歩くと、立派なマリーナモールが通りに面してある。 バスセンターはこのモールの後ろ側だと聞いた。 バスセンターで明日の切符を購入する為、列に並んだ。 こういう場合、パスポートの提示を求められる。 林蔵はパスポートを出した。 スタッフはしげしげと林蔵のパスポートのページを繰り返し見る。 其のうち、サウジのビザは何処だと聞いてきた。 林蔵のパスポートは各国のビザだらけで、しかも出入りが激しく、どのページもスタンプが所せましと押されている。 サウジのビザのページを示した。 スタッフはそれでも林蔵のビザをしばらく見つめていた。 そして言う、これは空路用のビザ(そんなものある訳がない)で陸路では使えない、と言う。 事務所のスーパーバイザーに相談するようにと言い渡された。 何てことだ。 こんな場合、逆らってもどうにも埒が明かない。 事務所のスーパーバイザーを探す。 席には居ないようだ。 暫くすると、それとおぼわしき恰幅の良い人物が現れた。 切符売り場スタッフの説明を繰り返し、明日バーレンに行きたい旨を伝えた。 スーパーバイザーは、林蔵のパスポートのビザ欄を見ながら、ポストイットに何かをアラビックで書いて張り付けた。 そして言う、”タエブ、ハラス”(OK、良いよ)。 問題ないと言うことだ。 やれやれ、再び列に並ぶ。 無事バーレン行きのチケットをゲット。 行きが60 SAR(約1300円)戻りが40 SAR(約880円)、行き帰り同じ道程だが何故か料金が違う。
チケットの購入に予想外に時間が掛かり外はすっかり暗くなってしまった。 日の入りのお祈りの時間は既に過ぎている。 商業設備のシャッターも上がっている。 宿へ戻る道、マリーナモールに寄ってみた。 多くのショッパーで大賑わいである。 だがお店の多くは女性用高級ファションを扱うものばかり。 林蔵には用がない。 ファーストフロアー(日本では2階)のフードコートからの夜景が素晴らしい。 フードコートは一面ガラス張りで海岸公園に面している。 ビーチ公園と港湾設備の織りなす光のページェントが眼前の水平線上に広がる。 ペルシャ湾に喝采。
林蔵@Dammam Saudi Arabia 18/Oct/'12 (Updated on 26/Aug/'12)
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