アジルーン城
Feb/'06 @ Qalat Al Rabad, Jordan


今年も昨年と同じ場所に居た羊飼いの御バーさん
自称60歳のクリスチャン、人に媚びない悠々自適のシンプル・ライフ、実に良い顔をしている
ワジ・ナウムの谷間で


お花見ピクニック第2弾の日である。 先週に引き続き今日も参加した。 今週は先週と打って変わって、朝から素晴らしいピクニック日和である。 空は飽くまで青く、空気が澄んでおり、遠く迄見通しが効く。 行き先は今週もヨルダン北部である。 ワジ・ナウムとアジルーン城(カラート・アル・ラバド)だ。

先週と同じく、国営バス会社JETT社の大型観光バスは事務所前を8:00、予定通り発車した。 途中ザルカ川を渡る。 この川は聖書にも出てくる川で、聖書ではヤコブ川と呼ばれているらしい。 しかし現在のザルカ川は酷く汚染されている。 バスを止めて川を見たが聞きしに勝る汚染度に驚く。 川面は洗剤の泡で覆われ僅かに見える程度である。 水は生活排水、汚水等で濃い茶褐色をしている。 これでも下水処理場を出た水だと言う。 日本の基準だと、下水処理場に入る前の水質より酷いらしい。 


 
汚染の激しいザルカ川(ヤコブ川)
下水処理場を出た水だが、日本の下水処理場の入り口の汚染度より酷いと言う



イルビットの街に差し掛かった。 此処には我々の仲間シニアー・ボランテイアー4名がヤルムーク大学内でで活動している。 イルビットはヨルダン第二の都市、ヤルムーク大学はヨルダン大学に次ぎ、国内第2の規模を誇る。 創立は1985年だとガイドのアボ・ローミ氏の説明である。 私が始めてヨルダンを訪れたのは1971年だから、当時は存在しなかった。 2回目に訪れた1980年にも、未だヤルムーク大は無かったことになる。 私の人生も、かなりの年月を経ていることを変な意味で感じてしまった。 

イルビットの街を抜けて暫く行くと、樹齢1000年を越すオリーブの樹があると言われるオリーブ畑に差し掛かった。 見事なオリーブの老木が列を作る。 オリーブは、この辺りが原産かと思いきや、ローマ人が持ってきたと、ガイドの説明である。 広く間隔をとった木の間には、そら豆等のマメ科植物が植えられていて、紫の花をつけている。 



樹齢1000年以上と言う神々しいばかりのオリーブの木
木の間に生えているのは空豆



10時32分、アビール村に到着。 観光客等、先ず来ない村である。 バスの運転手も来たのは初めてだと言う。 金曜日で学校は休みなので子供達がバスの回りにわっと集まる。 観光バスや外国人を見たことが無い子供達ばかりであろう。 バスから降りて歩き出すと、ぞろぞろと後をついてくる。 其のうちに我々の中に割り込む者も現れる。 オリーブ畑の中は一面黄色や紫のお花畑である。 ロバが1頭オリーブの木に繋がれていた。 元気の良い男の子(小学高学年?)が、素早く縄を解いて、ロバを操りだした。 ”スーラ”と叫ぶ。 ”写真を撮れ”と言っているのだ。 慌ててシャッターを切ったが乗っている姿は旨く撮れなかった。 


 
元気な少年とおとなしいロバ、少年は写真を撮れとせがむ 


少年達に比べ、田舎の少女達は以外にシャイである。 宗教上のこともあるが、イシャール(スカーフ)を被っていない年齢の少女でも、酷く恥ずかしそうに我々を遠巻きに囲む。 酷く愛くるしいので写真を撮ってあげようと、”スーラ” と言っても向こうを向いてしまう。 やっとシャッターを切ったのが下写真である。 3人姉妹であろうか。 小奇麗な服装をしている。 




恥ずかしがりやの少女達: なかなかカメラの前に来ない


足元を見ると、綺麗な薄紫色の小さな花が地面を覆っていた。 自然の色はかくも美しいものかと、思わずレンズを向けた。



名も知れぬ、薄紫の小花が咲き乱れる


眼を少し遠方にやると、黄色や赤の草花が一面に春の野を埋め尽くしている。 ここは地上の楽園であろうか。 羊や山羊の群れもその景色の中にある。 


   
足の踏み場も無いほどに咲きこぼれる野花、羊や山羊の群れもその景色に溶け込む



さて、ここのお目当ては、ルピナスだ。 以前先輩SVのFさんから見事なルピナスの自然群生写真を見せて頂いたことがある。 あのルピナスを実際にこの眼で確かめたい。 ここが其の場所だと言うのである。 何処だろう。 どんどん奥に足を進める。 オリーブ畑の端、崖になる寸前のところに、ラベンダー色に輝く一角が見えた。 あれに違いない。 近くへ行くと見事なルピナスの群生が広がっていた。
 



見事なルピナスの自然群生
昨年から、これは何処にあるのだろうと探していた


ルピナスを見た後は、ワジ・ナウムへ向かう。 お昼過ぎにワジ・ナウムを見下ろす地点に辿り着いた。 バスは此処までだ。 バスを降りて、谷底に向かって赤いアネモネやその他様々な野花が咲く道無き山肌を下る。 そして谷底で遭遇したのが、冒頭の写真の羊飼い御バーさんである。 てっきりムスリムかと思いきや、後で知ったのだが彼女はクリスチャンだそうだ。 同行の他のボランテイアーの話に寄ると、昨年もこの同じ場所に、この羊飼いの御バーさんは居たそうだ。 実に闊達としていて、人に媚びるでもなく、カメラを向けると自然とポーズと取る等、さもこのシンプル・ライフを誇りに思っているかの如くだ。 ここでお昼にする。 羊や山羊に乳牛も加わって賑やかである。 のどかな風景と綺麗な空気の中で各自、それぞれお弁当をひろげる。 今日も、あちらこちらから様々な物がおすそ分けで廻ってくる。 御夫婦でボランテイアーに来られている方々は、ピクニックのお弁当も凝っているのだ。 自家製のスナックやデザートを大量に用意して来ている。 私など毎回そのおすそ分けの恩恵に預かるのであるが、実にありがたい。


 
Ajilun城跡(カラート・アル・ラバド)の前でアラビック珈琲を売るおじさん(0.5JD:約80円)
手なれた注ぎ方は将にプロの技だ


ワジ・ナウムの次は、アジルーン城跡(カラート・アル・ラバド)へ向かう。 アジルーンは一年を通じて緑が絶えない森や林に囲まれた美しい田舎街だ。 私の活動のカウンター・パートであるM氏の出身地でもある。 城は、この辺りでは一番高い急峻な丘の上に建設されており、城からの見晴らしは360度の素晴らしいパノラマが楽しめる。 城が建設された当時は、パノラマを楽しむ等と言う悠長な考えは全くなかったのであろうが。 城の目的は十字軍に対する防衛拠点である。 見通しが効くのは敵の動向をいち早く見つける為と、仲間への連絡を容易にする為である。 そう言う意味で改めて周囲を見渡すと、此処は将に絶好の戦略地点であることがわかる。 エルサレム、ヨルダン渓谷、カラック、ヨルダン川西岸、ゴラン高原、ヤルムーク高原全てが視界内にある。 昔ながらのアラビック・珈琲を売るおじさんから、砂糖を入れないアラビック珈琲を一杯頂いた。 0.5JD、観光地にしては安い。 

素晴らしい自然と天候に恵まれたお花見ピクニック第2弾は、ヨルダン滞在で心に残る1ページとなった。 幹事に、ヨルダンのい自然に喝采。
 

  

 
 Ajilun城後内部: 狭い通路で部屋と部屋が繋がっている 
十字軍に対するイスラム側の最大の砦であった、伝書鳩やのろしが通信伝達法として使われた
1260年のモンゴル軍の来襲や地震等で相当破壊されたが、今尚その堅牢さが伺われる







24/Feb/'06 林蔵 @Qalat Al Labat Jordan (Updated on 18/Aug/'08)#217

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