アンマンの猫は逞しい 夏の乾季の暑さ干燥にも、冬季の寒さにも負けない 都市の動物シリーズは3回目である。 前々回の ”ルクセンブルグの牛” と前回の ”シアトルの豚” はいずれも本物の動物ではない。 街に溢れるオブジェの話だった。 ここの猫は正真正銘本物である。 アンマンには実に野良猫が多い。 34年前と25年前の滞在時には居なかった(気付かなかった)ものである。 お隣の国、シリアでも野良猫は多いらしいが、アンマンではその数、およそ半端ではない。 数軒毎に外に置かれている大きな鉄、或いはプラスチック製のゴミ捨てトランクに必ず数匹の野良猫が住み付いているのである。 アンマンの生活なまゴミは分別せずに捨てる。 そのゴミ捨てトランクは週数回ゴミ回収車で回収されるが、生ゴミが捨てられてから回収される迄の、一夜が猫達の生存競争の勝負時間である。
アンマンの猫は人には敏感でとっさに危険を察知し素早く姿を消す。 だが中には図太いのも居てゴミ捨てトランクにどかりと座り込み逃げようとしないツワモノも居る。 アンマンは言わずと知れた砂漠気候にある。 4月から11月迄雨は1滴も降らない。 その間、野良達はどうして水分を補給するのだろうか。 ラクダは数週間水無しでも生きて行けるらしい。 アラビアン・オリックスと言うカモシカに似た砂漠の動物は20ヶ月水を飲まなくても活きて行けるらしい。 勿論、活動を停めた特殊な環境の下での話であろうが。 この野良達は、普通に活動しているのである。 野良達が水を飲んでいる姿を見たことが無いが、恐らく都市の泉、特にアンマンで酷い上水道の漏水等を利用しているのだろうか。 余談だが、この水の無いアンマンであるが、上水道水は漏水等で未収入分の割合が半分以上もあると言う。
この猫達を見て、どうお感じであろうか。 少し寂しそうな表情はあるが、かわいそうな程に痩せた猫は意外に少ない。 概して栄養状態は良いようである。 毎日が生きる為の真剣勝負である。 知恵と体力を極限迄使い厳しい競争の中で生き抜いて居る身体は、意外に健康ではないだろうか。 生気に満ち、無駄の無い身体をしていると思うのは、人間のひがみだろうか。 冬場、猫達は豊かな冬毛で身を包む 28/Sep/'05 林蔵@Amman Jordan (Updated on 3/Aug/'08)#210 |
{林蔵地球を歩く}[頁の始めに戻る] |