Aqaba in Summer
@ Jul/'05 Aqaba, Jordan

Al Qusurawi Cafe の2階テラス席からモスク越しに青く輝くアカバ湾と対岸のイスラエルの街 エイラートを望む


午前6時、外気温23.6度、快晴。 アンマンの朝は真夏と言えどもあくまで快適である。 此処が中東とは思えない程だ。 従ってアンマンの夏は隣国や湾岸からの避暑客で溢れる。 唯でさえ渋滞の酷い大都会である。 渋滞が輪を掛けて酷くなる。 これも、中東では珍しく自然資源の乏しい当国に取って、重要な外貨獲得の一つと思えば、我慢し甘んじなければなるまい。 

勿論ヨルダンはアンマンのような中東の軽井沢と呼ばれる処ばかりではない。 冬場でも海水浴のできる地底の世界 ”死海” とか、僅か紅海に開けた海港都市 ”アカバ” 等もある。 そうだ、真夏のアカバへ行ってみよう。 アカバの夏はとても外へは出られない灼熱の地だと言う。 海には面しているものの、紅海の細く長い湾が辛うじてアカバ迄届いているにすぎない。 もっと広く海に面して居れば、幾分海水の冷却効果で、気温も緩和される筈であるが、此処ではその効果も望むべくもない。 それでも青く光る海を前にしていると、暑さも幾分和らぐ気分になれるだろうか。 これは我が身で確かめるしかないだろう。 

そんな思いで、シメサニからJD 4.65(約700円)のチケットを買い、国営JETTバスに乗り込んだのである。 寒い。 手元の腕時計に付いた寒暖計によると、車内気温は19.6度。 エアーコンの吹き出し口からは容赦なく冷気が肌に吹き付ける。 乗客の多くは私と同じような半袖シャツ一枚と言った服装である。 皆寒くないのだろうか。 誰も文句を言わない。 これからデザート・ハイ・ウエーを4時間走り、アカバへ行くのである。 その内太陽も高く昇り、急上昇する外気温に負け車内温度は上がるのであろうか。 バスに同乗しているヨルダンでは珍しい女性パーサーに、ネス・カフェを注文する。 暖かいネス・カフェで寒さを凌ぐ。 1時間くらい走ると社内温度は人の熱気もあり、21.5度迄上昇した。 救われた思いである。



アンマン-アカバ間を走るセルビス・バス(帰路に利用):  東欧で退役した大型バスが再利用されている



教訓: バスに乗るには防寒着を持つべし。 

アンマンを出発して2時間、デザート・ハイ・ウエーの最高地点、約1、520mの峠に差し掛かる。 この峠を超えると眼下に雄大な盆地地形が広がる。 ハイ・ウエーは一気に700mの高度差を盆地へ駆け下る。 対向車線には、アカバ港で荷揚げした貨物を満載した大型トレーラーが歩くようなスピードで坂道を登って行く。  この多くの貨物はアンマンを素通りし、隣国イラクへ、ア国軍隊の為に運ばれるているのだろうか。 はたまたイラク国民の為の貨物を運んでいるのだろうか。 中身を知る由は無い。 この道は通称イラク街道の一部でもある。 下り切った盆地を30分位走ると、両脇を険しい岩山に挟まれたアカバへ向かう山間道路になる。 女性パーサーがネスカフェの代金(30ピアスタル:45円)を回収にくる。 山間の道を更に半時間程下る、標高700mの地点にアカバ経済特区に入るチェック・ポイントがある。 軍の兵士により身分、持ち物チェックがある。 ここで問題が発生するのである。 私は身分を証明する何らの書類を身に付けていないことに気付く。 パスポート、運転免許証、ボランテイアー・カード、職場カード、どの一つとして持参していないのである。 腹をくくって、兵士には一瞬会釈をし、後は何も言わないでいた。 幸運なことに兵士は何も要求せず背を向けてくれたのである。 兵士は一般に英語はできない。 見た感じで私は明らかに外国人と判るし、身なりからして(豪華ではないが清潔感のする身なりだと自分勝手に思っている。) 変な東洋人でもなさそうとでも判断したのであろうか。 当の私は胸を撫で下ろす思い出あった。 ここで兵士にしつこく質問されると、大変面倒なことになるのは目に見えていたから。

教訓: 身分証明は何処に行くにも持参すべし。


10:50、バスはアカバの国営JETTバス・センターに到着した。 帰りのチケットを買っておこう。 が、しかし、又しても前回と同じ問題に遭遇する。 学習効果の全く無い、我が脳みそを恨めしく思う。 2つあるバス会社のどの便も今日のアンマン行きは全て満席だと、つれない返事しか聞くことが出来ない。 前回程慌てることは無い。 セルビル・バス(乗り合いバス)で帰ろう。 時間は少し余計に掛かる(5時間)のと、車内の汚さと、前の席との間隔が狭いのと、車体の古さと、殆どメンテをしていない車両と、運転手の運転の荒さと、車内テレビ・モニターが前に1個しかないことと、乗客に喫煙者が多いことと、エアーコンの効きが悪いことと、騒音が酷いことと、女性パーサーが同乗して居ないことと、車内ドリンク・サービスが無いことさえ気にしなければ、料金はJD3.85(約600円)と少し安いし。 

そう覚悟が決まれば、後は計画を実行するだけである。 どれ程暑いのか、アカバの町を日中歩くのである。 馬鹿げたことに違いない。 私はやはり、少し変わり者だろうか。 海岸通りから一筋入った道路沿いにあるカフェ・レストラン Al Qusurawi Cafe の2階テラス席に座り、青く輝くアカバ湾を見下ろしながらこの原稿を書いて(打って)いる。 日陰に居るとこの熱気が気持ち良いくらいだ。 これなら逃げ帰る程ではない。 腕から外しテーブルの上に置いた腕時計の温度計は36.6度を示している。 今日は比較的気温は低いのであろうか。 1時間ばかりテラス席で時間を過ごし、簡単な昼食も済ませた。 チーズバーガーにフルーツ・カクテルと水で1.5JD(200円)は安い。 時間は午後1時、気温が最も上昇する頃だ。 アンマンに戻る前に、少し外を歩いてみよう。 海岸通りを歩く。 夏場は流石に観光客が多い。 地元の観光客に外国からの観光客も混じる。 それにしてもア国人と思しき観光客の数が多いと思うのは私だけだろうか。 隣国で困難な任務に就いている多くのア国軍人が居る。 ここにその人影をみても少しもおかしくは無いと言うことだろうか。 はたまた、物騒な荷を満載し、ひっきりなしにイラク街道を往復するトラックの群れを少しでも カムフラージュする影の意図か、と勘ぐるのは、下種の何とかだろうか。



パブリックビーチ手前の植え込みとアカバ湾



炎天下を歩くと、流石に汗が噴出す。 アンマン行きのバスに乗る前にトイレに行っておこう。 綺麗なトイレはマックの入っているロータリーを取り巻くレストラン街にある。 マックでアメリカン珈琲を注文しトイレ休憩を済ませる。 アンマン行きのセルビス・バスが発車するムジャンマ・アフアーナへ(アフアーナ バス・センター)向かった。 



アカバ、ダウンタウンにある水タバコ台アルギーレを売る店
 



14:10、 満席になったので、乗り合いバスはアカバ、アファーナ・バス・センターを出発した。 途中、乗客の要求で数箇所で停車、燃料補給、定期休憩等を経て、アンマン南バスセンター、 ムジャンマ・ジャヌーブには、19:10に到着。 さて、ここからどうしてアパート迄帰ろうか。 タクシーに乗るのが一番手っ取り早い。 或いは別のバスを乗り継ぐか。 それでは、余りに普通で芸が無い。 そうだ、歩こう。 多分2時間以上は掛かるだろうが。 既に、陽は西の空に隠れようとしている。 暑さからは開放される。 




黄昏のPrince EL-Hassan通り: 此処からダウンタウンの谷へ急坂を駆け下りる


 

前回はタクシーに乗ったので、大体の方角は判る。 北西の方角に大通り Prince El Hassan通りを歩き始めた。 南バス・センター(ムジャンマ・ジャヌーブ)のあるRASAL-AIN地区は台地状になっていて、道は割と平坦である。 大通りの両脇には、様々な小規模工場や事務所、店舗が居並ぶ。 小規模工場や事務所の内部は乱雑を絵に描いたような状態であるが、大変活気のある下町の感がある。 家具工房も多く見かける。 数km歩くと、道は急に勾配が増す下り坂になる。 King Tatal通り、Omar Matap通りと Prince Al Hassan通りが谷底で合流する三叉路への ジェットコースターのいような下り道である。 谷底を右へ折れ、King Tatal通りを行けばダウン・タウンの中心、King Hussein モスクやローマン・シアターへ辿り着ける。 今日はこのこの三叉路を左に折れ、少し登りになった広い一方通行になっている Oman Mtap通りを西に向かう。 1km位行くと、信号器のある四つ角に差し掛かる。 これを右に折れ、急な上り坂になっている Abdula Munem Riyadh通りを登りきれば、大きな立体交差になった五叉路、通称第3サークルである。 ここはジャバル・アンマン(アンマンの丘)の稜線を走るメイン通り Zahran通りのスタート点でもある。 この辺りは、昔からアンマンの高級地として知られる。 現在は5つ星ホテル Hotel Royalが建ち、そのバベルの塔に似せた巨大な螺旋状円形タワーが 異様なイルミネーションに光っている。 ここから放射状に伸びる5つの道の内の一つ、北西に真直ぐ伸びる Al-Hussein Bin Ali通りに出る。 この真直ぐな道は、一旦谷底に下り、そしてシュメサニの五叉路に向かい長い登りになる。 



街のいたる処に居る、道路を清掃する外国人労働者



シュメイサニの五叉路迄lくれば、もう我が家の庭に戻った感がする。 アパート迄は後30分くらいの距離である。 時計を見ると21時、南バスセンター、ムジャンマ・ジャヌーブから此処まで約2時間掛かったことになる。 ほぼ予定通りだ。 歩き慣れたシュメイサニの路地を通り、Maysaloon通りの我が家には21:30に戻った。 大変健康的な一日を過ごす事ができ、元気な体とヨルダンの夏に感謝。



ジャバル・アンマン(アンマンの丘)第3サークルにそびえるバベルの塔に似せた高級ホテル  ロイアル





30/Jul/'05 林蔵@ Aqaba Jordan (Updated on 30/Jul/'08)#206

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