アズラック小学校
@ May/'05 Azraq, Jordan


元気な5-6年生クラスの男子生徒


5月24日、アズラックの小学校へ行った。 同僚のH氏御夫妻が課外活動で、小学校の生徒を相手に日本の子供達の遊びや学びを紹介しながら、日本を伝える活動をしているのを聞き、今回御一緒させて頂いた。 今回が5回目の訪問になるらしい。 アズラックはヨルダン最大のオアシス。 過つては数十万羽の渡り鳥の中継地でもあった砂漠の中のオアシスであったが、1990年の渇水を境にオアシスの水位は下がったままだ。 今では水位が地下レベルになり、表面は干上がってしまっている。 渡り鳥も来なくなった。 水位の低下は自然の渇水のみが原因ではないことは明らかだ。 ここには巨大な地下水汲み上げポンプ場がある。 アンマン市民の上水道の3割はここから供給されていたのだそうだ。 今は汲み上げ量を制限していると聞く。 水位が地表迄上がるべく、様々な施策が取られているとも聞く。 そのお陰で、一部の地表には水が戻ってきているようだ。 渡り鳥達も戻って来てくれる程度には回復して欲しいと切に願わざるを得ない。  




Umayad王朝時代の砂漠の出城Ak-Kharaneh



アンマンから国際道路番号M40を東に向かう。 砂漠に伸びる1本の道。 通称イラク街道。 聞きしに勝るトラックの多さに、隣国の厳しく困難な状況をつぶさに感じる。 ア国軍の軍事・生活物資であろうか、或いはイ国民の為の緊急生活物資であろうか。 中身を知る由は無い。 16輪トラックの群れにまぎれ、荒涼とした砂漠地帯をひたすら東へ走る。 

1時間くらい走ると、前方に地平線に構造物の影が見えてくる。 砂漠の中にある出城、Qasr Al-Kharanehである。 休憩を兼ねて見学する。 遺跡の敷地は金網で囲われ、観光客用のゲートも新設されている。 観光案内所兼事務所らしき建物は無いが、ゲートから少し離れた処にベドウインの黒いテントが一張ある。 よく見ると人影がある。 コカ・コーラの販売機らしきものが内部に見える。 遠目にもポスト・カードと思えるものも有るようだ。 この黒いベドウイン・テントが観光案内事務所なのである。 やはりこのような風土にはベドウインのテントが良いのだろうか。 Umayad Fortと案内板には書かれている。 この当たり一帯を支配していたウマイヤード王朝時代の出城だったのであろう。 造りは、以前訪れたシリア、ダマスカスの国立博物館で見た、砂漠の城の模型に似ている。 

Al-Kharanehを出て、再び東に伸びるイラク街道M40を大型トラックにまぎれて30分程度走ると、前方に緑の線が地平線に見えてくる。 Azraqである。 かつては豊かな地下水がこんこんと地表に湧き出ていた場所である。 現在は水位が地下レベルになったは言え、地下には豊かな水があるのは変わらない。 緑をたたえた木々が育つのである。 幹線M40はAzrakで定規で測ったような90度の三叉路にぶつかる。 サウジアラビアへ伸びる幹線M30との分技点である。 ここまでくれば目的地の小学校は直ぐ近くらしい。 校長先生との約束時間は10時である。 時計を見ると10時5分前。 約束の時間に間にあって良かった。 日本人の時間を守る姿勢を見せることができた思いに一安心する。




砂漠の盆地に緑の ベルトが広がる



小学校は小さい。 生徒数50人程度であろうか。 校舎も日本のそれに比べると随分と粗末である。 しかし子供達は明るい。 そして活発である。 我々の車にわっと押し寄せてきた。 5,6年生になると先生もかなり手を焼いているのではないだろうか。 先ずは校長先生の部屋に通される。 校舎と違わず粗末な小さな部屋であるが、我々5人を暖かく迎えてくれた。 ふと見ると校長先生が1DJ札の束を手にしている。 アラビア語で他の先生に何やら指示をしてその札束を手渡した。 後で聞くとそれは、アズラック市から生徒達へのお小遣いだそうだ。 それぞれの生徒に1JDが現金で手渡されるのだ。 

今日のプログラムを校長先生に説明した。 今日は、H氏が持参した日本の子供達の絵を20点ばかり生徒に見せる。 前回迄に取った子供達の写真をスライド・ショーで見せる。 T氏が準備した折り紙紙飛行機の作成、と結構盛りだくさんだ。 午前中の授業時間を使わせて頂く。 今日は5-6年生を対象にすることにした。 2階の教室に5-6年生全員に集まってもらった。 Hさんが持参した日本の小学生が描いた絵を一つ一つ取り出しては見せる。 皆興味深深である。 実は前回訪問時に、ここの生徒達にも絵を描いてもらったそうだ。 その絵は、今愛知県で開催されている愛知万博のヨルダン館に展示されているとのことである。 こちらでは絵とか音楽、体育と言った情操教育がややもすると疎かにされがちだ。 中東で資源の乏しいこの国は、生き残り作戦として人材資源を高く評価しているのは正しい選択であろう。 だが、頭脳の訓練だけでは健全な人格の形成は難しいのではないだろうか。 情操教育を見直すきっかけが何処かに在ればいいがと祈っている。 




 日本の小学校の生徒達の絵を披露するH氏


次はT氏の折り紙飛行機の時間だ。 細かい手作業は頭脳の発展に大変効果がある筈。 また忍耐力や細部への注意力喚起等様々な効用があるのが折り紙のように思う。 気をひきつける題材を選ぶのも折り紙作業を成功させる工夫かもしれない。 紙飛行機は飛ばして遊ぶことができるので格好の題材になる。 細かい作業が出来ない子も居るが、中には一生懸命手本の折り方を見ながら、自分で折る子も居る。 彼ら彼女達の内、ほんの一握りでも大人になった時、日本人のシニアーが学校に遊びに来てくれたことを思い出してくれれば、 そして日本のことに興味を持って関わってくれれば我々の訪問は大成功に違いない。



紙飛行機の作り方を指導するT氏



そして最後は、これまで訪問した4回分の写真をプロジェクターで見せた。 これは少し失敗。 始めは子供達に大変受けたが、少し時間が経つと、だれてきて教室が騒然となってしまった。 写真は厳選して数を減らし、もっと短くすべきだったかもしれない。 或いはアラビックで面白いコメントを加えながら見せないとやはり飽きてくるのは仕方がないと反省をしている。 


 
前回迄の写真をスライドで上映する: これは枚数が多く時間が長すぎた
 

今回は私にとって始めての小学校訪問だったが、子供達の屈託の無い姿に接することができて大変嬉しかった。 子供は宝、磨けば玉であるが、持続性ある地球の発展の為に健やかに育って欲しいと切に願う。 学校は来月から2ヶ月の夏休みに入る。 9月の再会を約束して小学校を離れた。


 

5-6年生の女子生徒








24/May/'05 林蔵@ Azraq Jordan (Updated on 23/Jul/'08)#199

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