死海
@Aug/'72 Dead Sea ヨルダン
仲間と死海へ下る途中海抜“0”m地点
死海、イスラエルとヨルダンの国境に横たわる、南北80km、幅17kmの地底湖。 実に湖面は-399mである。 (現在は更に低くなり、-401mだそうだ。) 空気も400m分濃く、酸素が10%も増える。 暑い砂漠地帯の気温も更に高い。 バイブルの死海古書でも名高い。 湖の塩分は半端ではない、33%に及ぶ。 この高い塩分濃度で、いかなる動植物も生息し得ない。 湖名の由来でもある。 また、豊かなミネラル分を含んだ死海の泥は、様々な医療や美容(死海ドロ・パック)に用いられたりする。 空気の濃さも、ある種の治療に効果があるそうだ。 地表(0m地点)から400m追加の空気層は、紫外線を殆どカットしてしまう。 したがって、炎天化で日光浴をしても、日焼けをしないのである。 何もかもが、余りに日常と違う現実が、そこにはある。 (最近は、湖水面の低下に警鐘が鳴らされ、対策に地中海の海水をパイプで注ぎこむプロジェクトが現実化しつつあるとか。)
1972夏、ヨルダンに出張中の休みを利用して、死海へ遊びに行った。 目的は2つ、一つは死海で泳ぐ、二つ目は温泉。 東岸から死海に注ぎ込むマイン川そのものが温泉になっており、その温泉に浸かりに行くこと。 通勤用のマイクロバスで、仲間と一緒に滞在先の首都アンマンから広大な地球の割れ目であるヨルダン渓谷にゆっくり下って行く。 途中、道路脇に、海抜0mのポストがある。 さー、ここからは、地底の世界に下ってゆくのだ。 バレーを下ると、ヨルダン川が流れる肥沃な、緑豊かな平野が広がるヨルダン川東岸に辿りつく。
西岸はイスラエルに占領されたまま(現在はパレスチナの自治が一部に許されているが、 相変わらずイスラエルの強引な政策は目に余る。)で、ヨルダン川が国境になっている。 首都アンマンの乾燥した砂漠地帯とは、想像できない程豊かな土地がここには広がる。 聖書に出てくる地名の街村ベソレヘム、ジェリコ、ガラリア湖、マダバ等が、そこかしこに点在する。
死海に浮かぶ筆者(中央)
死海にやってきた。 昔、社会の教科書に両手両足を海面から挙げて本を読んでいる写真を思いだす。 あれをやって見よう。 早速湖水に入ってみた。 何だかぬるぬるする。 それもそうだろう。 塩分濃度が33%もあるのだ。 少しずつ沖に向う。 腰まで浸かると、もう殆ど足が地に着かない。 泳いでみよう。 ウオ-、うまく泳げない。 もともと泳ぎは苦手だが、尻がぷかぷか浮き、バランスがうまく取れない。 面白い。 暫く死海の水と戯れる。 一つだけ注意、死海の水は絶対に目に入れてはいけない。 その濃すぎる塩分他多くのミネラルは強烈だ。 痛いなんて騒ぎではない。 死海から上がると、塩分を拭わなければならない。 シャワー設備等有る訳がない。
(現在は、リゾートホテルが立ち並び、シャワーも、淡水プールも有るらしい。) アンマンから通勤バスに乗せてきた、ポリタンクの真水をやかんに移す。 やかんの簡易シャワーである。
ヨルダン川東岸で客先スタッフとピクニック
塩分を適当に拭い去りった後は、カバブのバーベキューが始まる。 羊肉のミンチにスパイスをたっぷり混ぜ、金串にちくわのように巻き炭火で焼く。 これがなかなか旨い。 葡萄やメロンの果物もふんだんにある。 中東の乾燥地帯のメロンは絶品、あまくて旨い。 何やらあやしげな草も出る。 ハーブの一種で独特の匂いと味がする。 はっかのような刺激がある。 麻薬の一種ハッシッシも出る。 ハッシッシは中東では、そこいらに見うける。 そのままはんだり、水タバコに混ぜたりする。 麻薬をやっていると言う感覚か全く無い。 乾燥高温地帯で長い歴史を通じて培われた生活の知恵の一つなのであろう。 このような場で最も活躍するのは運転手だ。 やかんのシャワー、バーベキューの炭起し等、全て運転手がこまごまと動き回るお陰で、スムーズにことが運ぶ。 客先のスタッフも一緒だが、殆ど何もしない。 いや、おしゃべりが彼らの役目だ。 にぎやかなおしゃべりが、延々と続く。 ヨルダンは比較的開放的イスラム国家で、女性は、ブルカを被らず、西洋と同じ洋服姿の人が多い。 このピクニックにも、客先スタッフの奥さんや娘達も何の抵抗も無く自然に同伴している。
死海での海水浴後のバーベキュー
腹を満たした後は、温泉に行こう。 ザルカマインがその地名だ。 死海の東岸(ヨルダン側)から死海に流れ込む温泉川。 土地の人達も、古くから湯治に使っているとのことだ。 特に皮膚病、神経痛、リューマチに良いらしい。 我々は、再び海パン姿になり、温泉滝・川に入ってみた。
なるほど温泉である。 このあたりには火山こそないが、ケニアからシリアに掛けて、その昔地殻が盛り上がり真っ二つ割れた地球最大の溝、シリア・アフリカ地溝帯に位置する。 温泉が湧き出てもおかしくないであろう。 滝・川の岩は黄色い硫黄のかさぶたを何重にも被っている。 童心に帰り、中東の露天温泉を心ゆく迄楽しんだ。
滝の如く流れ落ちるマインの川温泉
10/Aug/'72 林蔵 @Amman Jordan (Updated on 22/Apr/'08)#124
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