Ten Archs Bridgeを渡る蒸気機関車 石橋の先で我々を降ろしてデモンストレーション走行をやってくれる 1月29日、金曜日。 冬場の天候は変わり易い。 集合時間は8時だ。 7時半にアパートを出よう。 天候はどうにか持ちそうに見える。 お茶とスナックをリュックに詰め込み、いざ出発。 ヨルダン・ヒジャージ鉄道のアンマン駅は街の南東部の低地にある。 駅には、既に多くの参加者が集まっている。 定年を過ぎた男たちも子供の如くはじゃぎ気味である。 多くの子供達も参加している。 蒸気機関車は幾つになっても尽きない魅力を与えてくれる不思議な乗り物だ。 今日のイベントを企画してくれた協力隊のK隊員に感謝をせねばなるまい。
アンマン駅構内には、何と立派な鉄道博物館がある。 館内展示は1903年開通のヒジャージ鉄道の歴史を語ってくれる。 当時、サウジアラビアのメッカへ向かう巡礼者達は、2ヶ月にも及ぶ大変な苦難と危険の旅の末、運が良ければ聖地メッカに辿り着いていたのである、途中盗賊や山賊に遭い、旅を続けられなくなった者、或いは命を落とす者も多かったに違いない。 そこで当時の Sultan Abdel Hamid により、全イスラムの民に呼びかけ、鉄道建設の資金が集められた。 7年の建設期間の末、1908年に完成したのが、ダマスカスからメッカ迄の1、303kmを結ぶヒジャージ鉄道だ。 巡礼者達の旅の時間は、2ヶ月から僅か70時間に短縮されたのである。 残念なことに、この鉄道は第1次世界大戦で部分的に破壊され、今日に至る迄全線復旧はなっていない。 航空機、自動車の飛躍的な発展で鉄道の役割は大きく変わり、かつての栄華を取り戻すべくもないが、現在ではヨルダン国内の貨物線として、或いはアンマン - ダマスカス間の客車便として今も利用されている。
9時定刻に、1959年製造日本車両製の蒸気機関車に引かれた、3両編成の列車がアンマン駅を発車した。 列車はアンマン市の外周を徐々に高度を上げながら南に向かう。 アンマン駅の高度は725m、アンマン郊外の最高地点は海抜900mもある。 列車は275mも登らなくてはならない。 アンマン駅を出て15分もしない内に雨になった。 冬場の天候は本当に変わり易い。 大した勾配でもないようにみえるが、蒸気機関車の動力車輪がスリップし出した。 レールとの摩擦係数が小さくなってスリップするのであろう。 スリップすると大量に蒸気を消費してしまう。 スリップする度に暫く停まって蒸気を溜めなくてはならない。 人の心も変わり易い。 先程迄ご機嫌であった人の幾人かから不平が出るのは自然である。 寒い、遅い、車内が汚い等等。 実際、暖房は無い、座席は破れている、窓ガラスは割れて居てはまっていない、塗装は剥がれている、座席は埃だらけ。 およそ普通の日本人の感覚では乗るに耐えない代物であるのは確かだ。
何度かの蒸気溜め停止を重ねて、2時間掛け、900mの最高地点をどうにか越えた。 後は80km南の目的地、ダバア駅(ダバア城)へ向け、緩やかに下るだけである。 幸運にも、天候は持ち直してきた。 予定より約2時間の遅れてある。 お昼は目的地で取る予定であったが車中で取る事にした。 狭い車中だが、やはりお弁当の時間は楽しい。 Yさんが私の為にお弁当を作ってきてくれた。 ありがたい。 デザートのケーキやら果物が方々から配られてくる。 ピクニック気分が更に盛り上がる。
目的地のダバア駅には、2時間遅れの午後2時に到着。 此処で2時間のお昼休憩だったが、お昼は車中で済ませたので、1時間のお城散策休憩となる。 ダバア駅は砂漠の只中にある。 周囲を見回しても家など一軒も無い。 うねうねと砂漠の低い丘陵が見渡す限り広がる。 駅から1km程の小さな丘陵に城のような建造物が見える。 ダバア城だ。 我々日本人は一斉に城の方向に足を向ける。 やがて人影は砂漠の点となる。 列車に乗り込んでいた自動小銃を持った鉄道警察官(兵士?)は、何故あの城に行くのか、と怪訝そうに観る。 皆を呼び戻せとも言う。 あの城は最近建造した新しいもので、本物は駅舎の在る場所にあったのだと言う。 何が本当かは、実はよく判らない。 砂漠を爆走する蒸気機関車 途中、アンマン市を出たばかりの撮影ポイント: 機関車の前で 此処で蒸気機関車の位置をを前後に入れ替える。 ターン・テーブルは無い。 駅の部分だけ線路が2本在り、ポイント切り替えで機関車の位置を前後換えるのである。 蒸気機関車は良く出来ていて後向きにも走れる。 運転台からは、両方の観通しが効くように設計されているのを、この時初めて発見した。 後ろ向きの蒸気機関車は余り格好は良くないが、機能的には全く問題無いのである。 機関車の前で記念撮影
林蔵@Amman Jordan 28/Jan/'06 (Updated on 12/Aug/'08)#215 |
{林蔵地球を歩く}[頁の始めに戻る] |