Iraq Al Amir
@Feb/'05 Amman, Jordan


道端の斜面に育つアーモンドの樹に咲く、桜に似た花



アンマンの郊外、西にヨルダン渓谷を10km程急な下り坂を下ったところ、斜面にへばりつく様にこの小さな村はある。 2月の初め、アンマンは未だ冷え込みも厳しい真冬であるが、地底の世界ヨルダン渓谷は既に春爛漫である。 仲間と仕事の一環で出かけた。 

アンマンはヨルダン渓谷の東側、900mの高台に開けた街である。 近年街が急速に発展し、その輪郭が既に高台の西端迄押し寄せている。 第8サークルを直進すると、急に下りの勾配がきつくなる。 高台が終わったのだ。 地底の世界、ヨルダン渓谷へ駆け下るのである。 今はヨルダン渓谷は既に春。 「ローズ」(アーモンド)の白い花が急勾配の道端に育った樹に桜のような花を満開に付けている。 谷底には夏場でも枯れることのない小川が、-400mのヨルダン川へ流れ下る。 急斜面は緑の絨毯で覆われ、絨毯は赤や黄色の花々でアクセントされ、さながら桃源郷と言った感を漂わせる。


 


夏でも枯れることのない小川


渓谷の中ほどに、一寸した起伏の多い台地がある。 Iraq Al Amirである。 この村には、土地の主婦達が共同作業をしている工房がある。 繊維工房、セラミック工房、紙工房、何れも王立系財団の工房であったが、現在は王立系の財団が手を引いたので、注文が極端に減少し経営状態は決して楽観はできない状態にあるらしい。




セラミック工房で働く地元の主婦



これらの工房の内部、完成製品を見せて頂いたが、お世辞にも品質が良いとが言えない。 これでは一般の外国人観光客の購買意欲を掻き立てるには如何にも物足りないというのが率直な感想である。 外部情報不足、資金不足、改善意識不足と何れも厳しい事業環境で、彼女たちの工房を維持継続していくのは、無理ではないかと言う感じすらする。 設備償却費とか人件費に関する感覚に乏しく、経営状況の把握さえおぼつかいないのでは無いかとも思える。

村には小規模な遺跡もある。 洞窟住居跡、2世紀頃のアモン族の住居館跡だ。 この館はピラミッドを組んでいる石よりも大きな巨石で作られており、四角い柱、ファサードを飾るライオン像の顔が他とは違うので有名である。 この館はビザンチン時代(東ローマ帝国)にも改修され大いに使用されたらしい。 



2世紀頃のアモン族の館跡: 巨石建造物



遺跡の学術的な詳細解説と工芸品の質の向上を図れば、この小さな桃源郷は、当国が推し進めようとしている観光産業の一粒の真珠にきっとなるに違いないのだが。 




林蔵 15/Feb/'05 @Amman Jordan (Updated on 15/Jul/'08)#192

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