ナイル
@Jul/'06 Ciro, Egypt


ゲジラ島からナイル越しに見るナイル・ヒルトン



アルジェからトリポリへに移動の途中、カイロに立ち寄った。 アルジェからなら、直接トリポリに行ったほうが、一飛びで、時間も費用も安かろうと思うが、帰路のことや滞在費受領等の様々な要件が重なり、カイロ経由になった。 航空券は片道より往復のほうが、ずっと安くなるケースが多いのだ。 当初ガーナにも寄る予定だったので、カイロをハブにして移動するのが、断然有利と思われた。 途中でガーナ行きがなくなったが、それでもメリットは残るので、カイロに立ち寄ることになったのである。

カイロは、この4月にも一度訪れており、土地や街の様子がわかっていて安心感がある。 宿もヒルトンにすれば、オナーズ会員の特典で割安で泊まることができる。 エジプト博物館の横と言い、ナイルの岸辺と言い、地の利は抜群である。 日本人マネージャーのKさんも何かと細かく面倒をみてくれて大変頼りになる。 




エジプト・エアーの翼
空の神Horusのイメージが翼の先端に描かれている



アルジェの国際空港ターミナルは先週新しくオープンしたばかりだ。 流石に内部は立派、床には磨いた大理石が敷き詰められ、掲示板は全て大型液晶デイスプレーである。 カフェ・ラウンジも適度にありゆったりしている。 だが、駐車場の造りの酷さは対照的だ。 オープン前のターミナルの駐車場と少しも変わらない。 でこぼこだらけ、植木のレーンと通路の境がはっきりしなく、土壌は通路に散らばる。 スーツケースを転がして行くのに大変難儀する。 #1ラウンジと”2ラウンジがあり、どうも#1ラウンジは工事中のまま、オープンしたらしい。 入出国のゲートは#2ラウンジしか開いていない。 エアーラインのカウンターは、#1、#2共既に使用している。 エジプト・エアーは#1ラウンジである。 12:30の出発なので、10時前には空港に来るようにとの、エジプト・エアーの街の職員から言われている。 

ホテル、Mouflon D’orを8時にチェック・アウト。 カードで宿泊費を払えるので助かるが、カードの残金確認に30分以上待たされる。 日本や欧州では考えられないことだ。 ようやく、カードの確認が出来、タクシーを呼ぶ。 先週数回利用したSALEH氏に電話を掛けてもらったが、今日は独立記念日でお休みだと言う。 ホテルのカウンターに別のタクシーを依頼した。 10分程で別のタクシーがやってきた。 どうも運転手は私を知っているらしい。 私は、毎日仕事から帰ったあと、歩いて片道30分程度の場所へ運動を兼ねて夕食を取りに出かける。 普通は歩かない距離だ。 ましてや、ホテルの泊まり客は、絶対と言って良い程、ホテルからは歩いて外には出ない。 それほどホテルは辺鄙な場所にあるのである。 ホテルから、毎日、歩いて外に出る泊り客は、さぞ目だったのだろう。 彼は、仏語で、「貴方が歩いているのを良く見かける。 大変スポーテイーだね。」と一応お世辞を言ってくれる。 

2千アルジェリア・デナール(3,000円)程アルジェリア・マネーが残ってしまった。 以前銀行で聞いた時、この国では、現地通貨から外貨への交換はできないと聞いた。 そんな訳で、残さないように気を付けていたのだが、なかなか、ぴったりと使い切るのは難しい。 試しに、空港の銀行窓口で、エジプト・マネーでもリビア・マネーでも良いから変えてくれないかと聞いてみた。 やはり、返事は予想していた通り以外のものではなかった。 そのまま持ち出すことになる。

パス・ポートコントロールの前の安全チェックは入念だ。 ここで不思議なのは、出国カードの保持を問われることだ。 出国カードは外には備えていない。 安全チェックを過ぎた、出国管理室(パス・ポート・コントロール)に置いてある。 持っていないのは当然である。 「持っていない。」と答えると、部屋の隅の方を指差される。 「そこで書け。」と言っているらしい。 酷く狭い場所である。 人の流れは凡そ考えには入っていない。 記入台があり、台の上には出国カードが山高く積まれている。 

パス・ポート コントロールを無事通過し、#2出発ラウンジに出た。 真新しい免税品店やカフェが程良く並ぶ。 エジプト・エアーの出発は、チェック・インと同じ、#1ラウンジである。 カフェでカプチーノとミネラル・ウオーターを注文した。 カウンターのおねーさんが、「クロワッサンは要らない?」と問いかけてくる。 珍しくサービスらしい言葉を聴いた。 「要らない。」と答え、代金150デナール(200円)を支払う。 この程度では、2、000デナールは到底使い切れない。 #1と#2の間は、狭い廊下で繋がっている。 1時間程前になったので、#1ラウンジに移動した。 

#1ラウンジは、免税店もカフェも無く(工事中)搭乗ゲートだけがある。 1時間程度なら良いか、と思い椅子に腰を掛け時間待ち状態となる。 出発時間になってもいっこうにゲートが開く様子はない。 何のアナウンスも無い。 先週、国内出張でオランへ行った時と同じだ。 あの時も、行き帰り共、2-3時間遅れたが、何のアナウンスも無かった。 サービスと言う概念の地位の低さを思う。 結局、出発の時間から1時間後、ゲートが開いた。   



 
カイロ空港の夕日: 駐車場は酷い混雑


2時間遅れでも乗客のクレームらしいものは、何処からも聞こえてこない。 感心して良いのか、呆れるべきか、どちらとも言えない複雑な気持ちになる。  エジプト・エアー機はアフリカ大陸上空を地中海沿いに東へ飛行する。 エジプトとの時差が2時間、飛行時間が3時間半で、合計5時間半、時計の針は進む。 アルジェを2時半に出たので、カイロには7時半の到着だ。 既に太陽は西の空に沈もうとしている。 3時間半のフライトが何と一日掛かりである。 

エジプトに入国するには、一般パスポートではビザが必要だ。 前回4月に訪れた時は、公用パス・ポートだったので、ビザは必要なかった。 さて、ビザは何処でどうやって手に入れれば良いのだろうか。 機内誌には、空港で簡単に入手できると書いてあったが、具体的な記述は無い。 ビザ無しでパス・ポートコントロールの列に並んだ。 さて、私の番になったが、ビザ無しでは流石に、審査官は私を入国させてくれない。 やっとここでビザの入手方法がわかる。 審査官は、呆れた顔で、「銀行でビザを買って来なさい。」と言う。 「銀行?」、 後方を見ると、奥のほうに銀行の窓口が見える。 ここでビザを購入するなら、”VISA”と大きく看板でも掲げて置いて欲しいものだ、と自分の準備不足を棚に挙げる。 15ドルだと言う。 生憎ドルの小銭も、エジプト・ポンドも持っていない。 財布の中を覗くと、UAEのデラハムが幾らかあった。 数えると70デラハムある。 2,400円程に相当する。 これで何とかビザを入手できた。 荷物も無事に出てきた。 カスタムズは割りと簡単。 

ホテルへは、やはりタクシーだ。 カスタムズを出ると、大変な人と荷物で大混雑である。 アライバル・ホールの中程にタクシー案内所がある。 だが凡そ秩序と言ったものはない。 雲助まがいの案内人が、我先に有無を言わせずタクシーの斡旋をしてlくれる。 恐らく、リベートを幾らか貰うシステムなのだろう。 誰に頼んでも料金は一律65エジプト・ポンドである。 一番先に私を獲物にした者、つまり一番に名前を言わせ、伝票に名前を書き込んだ斡旋人が、私の荷物を勝手に空港の外に運び出す。 駐車場に行き、多分ぐるになっているタクシーを捜す。 空タクシーは駐車場に幾らでも居るが、相棒のタクシーを捜すのである。 宿舎のナイル・ヒルトンに到着したのは、既にあたりは夜の帳が下りていた。 



部屋から見るカイロの夜景: ライトアップされている建物はエジプト博物館


カイロでの仕事は2つ。 トリポリ迄の往復航空券と帰路、カイロからトドバイ迄の航空券を購入すること。 それと、ウエスタン・ユニオンで送金してもらってある、リビアでの滞在費を引き出すことだ。 トリポリ往復の航空券は、ヒルトンのKマネージャーに紹介して頂いた、Abu Simbel Travelへアルジェの空港から電話を入れ予約済である。 代金をカードで支払い、航空券を受け取るだけで良い。 

送金のほうは大丈夫だろうか。 銀行は金曜、土曜日閉まっているのは確認済である。 だが、念の為ウエスタン・ユニオンのフリーダイヤルへ電話してみた。 ウエスタン・ユニオンは、通常8時半から夜の10時迄開いているらしい。 そして金曜、土曜も開いていると言う。 金曜日は流石にフル・デーでは無く、午後の3時からだと言う。 夜開いていると言っても、お金を受け取るのに、やはり昼間しか行けまい。 翌日(金曜日)、午後3時にウエスタン・ユニオンの事務所へ出かけ、送金の受領を試みたが、どうした訳か、送金が確認できない。 こまったことになった。 この時間日本は既に夜の9時過ぎ、会社も銀行も閉まっていて連絡のしようが無い。 リビアへ移動するのは、日曜日。 日本の業務が始まる頃には既に、リビアに入っているので、これ以上の処置はリビアに入ってからするしかなかろう。 


 
カイロ空港で買ったエジプト入国ビザ(US$ 15)  


そうと決まれば、観念するしかない。 アルジェで利用したムフロン・ドール・ホテルに比べ、値段は差程違わないが、設備、サービス、清潔さで断然に違いのあるヒルトン生活を短い期間ではあるが楽しむことにしよう。 オナーズ会員であるので、普通のブッキングでもエギュゼクテイブ階に部屋が与えられる。 今は高級ホテルでは常識となりつつある、顧客サービスでリピーター客情報はコンピュータで管理されていて、「前回の訪問は、何月何日でしたね、ようこそお帰りなさい。」とフロントで挨拶される。 悪い気はしない。 日が高くなる前の早朝ウオーク、ナイル沿いのプロムナードを早朝歩くのは気持ちが良い。 その後、有名なヒルトン朝食をゆっくり楽しみ、昼間は暑いので、ガーデン・カフェへPCか書物を持ち込み時間を過ごす。 夕方、陽がかなり傾いた頃、再びナイルを歩く。 何と贅沢な時間の流れか。
 


ナイル沿いのプロムナードは大木が茂り、広く良く整備されている:
タハリール橋の右手の木の陰あたりが宿舎のナイル・ヒルトン


宿舎のナイル・ヒルトンは、カイロのほぼ中心にある。 高級ホテルが集中する界隈である。 マリオット、シェラトン、フォー・シーズン、インター・コンチ、ハイヤット等が至近距離だ。 直ぐ目の前のナイルに浮かぶゲジラ島は、広大な緑のプライベート・ガーデンと各国大使館が犇く高級地である。 少し川上にはローダ島も横たわる。 ゲジラ島とローダ島がナイルで接近する当りのナイル東岸の一角はガーデン・シテイーと呼ばれる。 一際緑の濃い美しい地区だ。 エジプト政府の主要機関がこの一帯に集中する。 日本大使館もこの一角にある。  



ナイルに掛かる橋の一つタハリール橋
対岸にはカイロ・タワーが聳える



夕刻、タハリール橋、10月8日橋等の歩道は、若いカップルで埋まる。 ナイルの川風に打たれて恋を語っているのであろうか。 ナイルの流れには、派手な装飾の観覧船が上へ下へと行き交う。 岸辺には、豪華なフローテイング・レストランが、色とりどりの電飾を輝かせ始める。 ナイルは其の川面の広さと、静かさと、平さと、清潔さが確かにロマンチックな気分を掻き立てるには、良い道具かもしれない。    



   
タハリール橋の上: 両脇にライオン像
右の塔はカイロ・タワー



アルジェやカイロにも野良猫は居る。 アンマンの猫に比べて、この2つの街の彼ら彼女らには共通して違う点がある。 人を恐れないことだ。 近ずいても逃げない。 数もアンマン程多くない。 カイロの猫は何となく気品があると見えるのはひいき目だろうか。 

 

 
ヒルトンの猫: 靴磨屋の台の下に居た      ナイルの猫:ナイルの川岸に居た親子








9/Jul/'06 林蔵 @Cairo Egypt, (Updated on 19/Sep/'08)#225

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