ワジ・ラム登山
@ Apr/'05 Wadi Rum, Jordan


ジャバル・ハッシュの奇岩ワジ(枯れ谷)を歩く


2度目のワジ・ラムである。 昨年の5月以来ほぼ1年ぶりだ。 ワジ・ラムは、ヨルダンでワジ(枯れ谷)、砂漠、岩山の自然が最も美しく見える場所だと言われる。 何度訪れても飽きることは無い。 季節、時間により、その景観は様々に変貌する。 前回はジープ・ツアーがメインであったが、今回は登山(と言う程本格的では無いが。 山歩きと言ったほうが適当であろうか。)に挑戦である。 前回と同じ先輩ボランテイアのFさんの引率だ。 Fさんは実に2年間に数十回に及ぶ引率小旅行を企画実行している。 正にボランテイアの中のボランテイアと言える存在である。 本当にありがたく思う。 今回も車4台、18人の大勢のパーテイだ。 シニアー、海外青年協力隊混合チームの年齢層は広い。 アンマンの事務所前を6時に出発、途中デザート・ハイウエーのSAで休憩を取り、ワジ・ラム・ゲートには9時45分に到着した。 前回訪問時ゲートは工事中だったが、既に立派に完成している。 入場料1JD(ヨルダン外務省発行の政府ボランテイア証明書を見せると、 ローカルの人と同じ料金で入場できる特権をフルに活用させて頂く。)を支払いゲートをくぐる。 



 ワデイ・ラム ゲートの看板


ゲートを潜り、2kmくらい保護区域内の舗装したドライブ・ウエーを進むと、昨年昼食を取ったレスト・ハウスに辿り着く。 Fさんが予約してあったガイドが、ジープを揃えて待っていた。 10分間のトイレ休憩の後、午前10時、ジープ2台とランド・クルーザー1台に分乗し砂漠に向かう。 ガイドは若いが国際ガイド・ライセンスを持ったロック・クライミング専門のガイドだ。 このクラスになるとガイド料金も並ではない。 高度な技と知識がが必要な専門職なのである。 私は丁度ガイドが運転するランドクルーザーの助手席に乗せて頂いた。 彼は、この6月には結婚すると嬉しそうに話していた。 結納金の半分は既に払い込んであり、後残りの半分を今月払い込むそうだ。 この結納金はもし離婚した場合の慰謝料にもなるやと聞いている。 コーランの教えにはこのような現実的な事まで細かく及んでいるらしい。 こちらの結婚の条件は結納金を支払うことと新居を準備するのが最低限らしい。 結納金も新居も此方の人に取っては大変な大金の筈である。 多くは親や親戚のヘルプ無しにはまかなえないのではないだろうか。 このガイドは高額のガイド料を稼いでいるので、どうも自前らしいが、これはむしろ例外ではないだろうかと勘ぐる。 新居はワジ・ラムの保護区内にあるベドウイン村の一角に建てたと言っていた。 費用は、家具別で1万JD(150万円)程度だと言う。 こちらの人々の平均給料が200JDから300JDだから、これは大変な大金になる。 



レストハウスのドアー:
世界各地から観光客がやってくる、国際色豊かなステッカー類



11:10 レストハウスを出て1時間余り南下し、サウジ国境に近いジャバル・ハッシュの登山口に到着した。 腕時計の高度計が1、350mを示している。 レスト・ハウスでは、950mくらいだったから、400mも昇っていることになる。 昇っている感じは全くしなかったが砂漠の地形は平行感覚を麻痺させるのだろうか。 



ジャバル・ハッシュへの登山が始まる



ジープとランド・クルーザーから降りて登山の始まりである。 登山と言っても軽い山歩き程度なので、全員適度に体を動かす楽しさを味わえる。 リーダーのこのような気配りも大変ありがたい。 軽いピクニック気分で日本の山とは全く異なる奇岩の連なる、全く木の生えて居ない岩山を、プロのガイドに先導してもらって、パーテイはよじ登る。 山登りの基本は、体力の一番少ない人、その日の体調の良くない者をガイドの直ぐ後ろを歩いてもらうのである。 ペースを最低の人に合わせる為である。 驚いたことに年に数度しか雨が降らない砂漠地帯であるが、今は春、岩の割れ目や砂地に可憐な小花が咲き誇っているのである。 生物の生命力の強さに感動さえ覚える。


 
乾燥した砂地に咲く小さな草花


13:45、 ジャバル・アッシュの一つの頂上に到着。 眺望が素晴らしい。 腕時計の高度計は1、575mを示している。 上り口で1350mを示していたから、225mしか登っていないことになる。 それでも見渡す眺望は素晴らしい。 眺望を楽しんだ後は昼食休憩地点を目指して下りだ。 急峻な岩の割れ目を一気に、足を踏み外さないよう、石片を落とさないように慎重に下る。 岩の割れ目を降りると谷底は平坦な砂盆地のようになっている。 日陰が無く、容赦なく照りつける太陽は地面の温度をどんどん上げる。 映画、「アラビアのロレンス」を思い出す。 暑いのである。 



この山羊たちは、灼熱の砂漠で僅かの草を食み少量の水を飼い主から与えられているに違いない、
日本の山羊たちとh何と違った境遇にあるのだろう



14:10、 盆地を横切ると岩山の影がある。 救われた気分になる。 そして其処が昼食の休憩場所でもあったので、2度安心したのであった。 ガイドの相棒がシープで昼食を作って待っていてれた。 同じガイド照会所のお客で、若いフランス人男女3人パーテイと合流する。 彼らは、昨夜今夜我々が泊まるテントに泊まっており、登山後、今日中にアンマンへ戻るらしい。 砂漠の登山中にしては豪華な昼食を頂く。 トマト、オリーブ油ベースの濃い野菜スープ、ツナ・ホブツサンドイッチ、ゆで卵、ソフト・チーズ、ジャム、甘い紅茶、バナナ、オレンジ。 昼食後は、1時間近く岩陰で昼寝。

15:15、 運転手達が砂漠に散在する枯れ木を集めてジープに積んでいる。 夕食を作る薪にするらしい。 2台のジープと1台のランド・クルーザに分乗し、ランチ・サイトを今夜泊まることになっているベドウイン・テントに向けて出発。 ジープは深い細かい砂にタイヤを取られながら、うなりを上げて低速ギアーで前進する。 



ジャバル・アッシュの頂上付近からサウジ国境方面を見る



頂上からの眺望を楽しむ



途中、自然が作った造形美、ウンム・フルートの石橋に寄る。 ここはメインの観光コースにも入っており、他のグループが2組既に石橋登りを楽しんでいた。 グループの一員に話しかけてみるとこちらもフランスからのグループだと言う。 荒々しいヨルダンの自然は実に素晴らしいと言っていた。 
 

 
ウンム・フルートのロックブリッジ、                   ロックブリッジを下る。     


17:45、 今夜泊まるテントに到着した。 この辺りはサンセット・ポイントとして絶好の場所で、よく見るとあちこちの岩陰に黒いテントが見える。 それぞれのデザート・キャンプ・オペレーターの観光用ベドウイン・テントである。 それらのテントは近くに見えても、人影は小さく個別認識はできない。 砂漠は近くに見えてもかなり遠いのである。 今日は空気が澄んで居て、夕焼けは見られそうにない。 真っ赤に染まる夕焼けは水蒸気や雲がないと見えないのである。 ガイドの仲間(多分兄弟)が我々の夕食をテントで準備している。 日もとっぷり暮れた頃、夕食の準備ができた。 テントの中央に設けられたファイヤー・プレイスにアルミ・フォイルで包んだ、鶏と野菜の蒸し焼き料理が旨そうな匂いをテント内外に放つ。 甘い紅茶と野菜煮込みご飯が出る。 旨い。 ほの暗い、石油ランプの下で山歩き後の食事を楽しむ。 



キャンプ場での、山歩き後の夕食は旨い


昨年は、5月でも少し寒かったが、今年はすこぶる気持ち良い外気温である。 毛布無しで寝たが大丈夫だった。 外の方が気持ち良いので、マットと寝袋を外に持ち出し、岩の上にある平らな部分で寝た者も多く居た程だ。 トイレは無い。 その辺の岩陰がトイレに早代わりする。 同行の女性たちも意外と平気である。 こんなことに驚いていては途上国でボランテイア活動は出来まい。 そう言う意味では気構え十分で見上げたものである。

今回も、自然の素晴らしさ、人間の弱さと、やさしさと、あるいは強さに感動した旅であった。 人間と自然に喝采。



テントサイトから見る雄大に立ちはだかるジャバル・カッタール
岩の壁は実に700mもの高さがある




映画「アラビアのロレンス」でお馴染みのレストハウスから見る Seven Pillars of Wisdom







21-22/Apr/'05 林蔵@ Wadi Rum Jordan (Updated on 20/Jul/'08)#197

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