「菜の花マラソン」
@Mar/'02 白浜 千葉


海岸遊歩道に海鳥の模型


”白浜町”と言うと、関西人の私には和歌山の白浜を思いださせる。 白い砂浜が見渡す限り続くイメージである。 南房総の白浜は、イメージとはちょっと違っていた。 砂浜と岩場が複雑に絡み合う海岸だ。 砂の色も関西の海岸に比べると、黒味掛かっている。 この辺りまで富士山の火山灰の影響があるのだろうか。 海岸沿いの遊歩道に鵜の模型が幾つかアート風に設置されている。 海をみると、いくつかの岩礁は鵜に占領されて、黒茶色の岩肌が鵜の排泄物で白く変色している。 鵜の模型の側には、コンクリートに石磐を合わせた、ちょっと気の効いた掲示板がある。 読んでみると、安房(あわ)の由来が書かれていた。 その昔、天野由布津主命(あまのゆふつのぬしのみこと)が上陸した地とある。 四国阿波の国から忌部族が忌部の神々を連れ来航したのだそうだ。 食料生産のほかに麻、穀(ゆう)を広く作るよう指導したとある。 忌部の神々が四国の阿波を懐かしんでこの地を「あわ」と呼んだのが「安房」の始まりと言う。

3月3日、ひな祭りの日は、毎年この白浜町で ”菜の花マラソン大会” が催されている。 バイクで出かけることにしたが、冬場、早朝にバイクのエンジンを掛けるのは近所迷惑でもあるので、前日の2日から出かけることにした。 2日の土曜日は、平年より10度近く気温が高く、4月の下旬頃の陽気。 近くでキャンプをしようと思いキャンプ用具1式をバイクの荷台に縛りつけての出発だ。 午後2時頃家を出たが、途中東急ハンズ町田店に立ち寄ったので、久里浜の東京湾フェリー乗り場には、4時20分着になってしまった。 4時40分発のフェリーに乗りこむ。 利用車は少ない。 自転車1台、バイク2台に乗用車が10台程度。 他に車無しのお客も10数名居る。 船は、 ”久里浜丸” 2,600トンだ。 2,200馬力のエンジンを2基備えている。 対岸の金谷港には5時20分に着いた。 国道127を南下する。 館山の手前で、既に夕闇がすっかり辺りを覆ってしまった。 これからテント設営は気が進まない。 館山は高層ビルが無い、落ち着いたたたずまいの港町。 JR館山駅の前にあるビジネスホテル “マイグランド” で空き部屋を尋ねたら満室とのこと。 フロントで、近くの宿屋を紹介して頂いた。 駅の直ぐ近で線路の海側にある 「館山ビジネスホテル」 に宿を取ることにする。 食事は付いていない。 荷物を部屋に運び揚げ、早速駅前の適当な食堂に入り夕食。 食後、7-11で翌朝用のおにぎりとお茶にポテトチップスを仕入れホテルの部屋へ戻った。

翌朝、気温は低めだが内陸部に比べると随分ましだ。 心配していたバイクのエンジンは難なく掛かり、県道86号館山白浜線を ”白浜町” へ向かう。 30分位で海岸沿いの南房 ”白浜町” に到着。 既に道には、マラソン会場のサインが出ている。 サインに従い進むと、会場の 「フローラルホール」 に着いた。


 
ハーフマラソンスタート


始めて 「菜の花マラソン」 に参加した。 参加人数は1070名と程良く、町の手造りイベントと言う感じが出ていてとても良い。 町民400名のサポートスタッフで大会を盛り上げてくれる。 関東近辺のあちこちのマラソン大会に参加していると、他の会場で見かけたランナーを見掛ける気もする。 きっと、この中の何人かは別のマラソン会場で会ったランナーに違いない。 私と同じような行動を取るランナーが、他にも多く居るはずだ。 フローラルホールの内部は、既に多くのランナーでむんむんとしている。 家族でレースを楽しんでいる光景も見える。 ランナーの子供達(と言っても既に20才台の社会人らしい)に、私と同年齢位の母親がさかんに冗談を飛ばしながら応援に来ているもよう。  ふと、うらやましい気分が沸く。

コースは、海岸に沿って細長く伸びる町の中程を横断する。 町のほぼ中央部にある多目的ホール ”フローラルホール” をスタートし、町の東端まで走り、折り返して今度は山側の国道R410を町の西端迄走り、再び海岸通りを走り中央の ”フローラルホール” に戻ってくる。 これで丁度ハーフマラソンの距離21.1kmになる。 まさに町を端から端まで駆けぬけるのだ。 レースがスタートすると、町の防災放送で、町民にお知らせが流れる。 例の非常にゆっくりした口調ではっきりと喋る放送が流れる。 「こちらは ぼうさい しらはまです。 ただいま なのはなマラソン ハーフマラソンのぶが スタートしました。 ランナーが みなさんの おうちのまえを はしります。 ランナーの かたがたが おうちのまえに きましたら あたたかいおうえんを おねがい いたします。」 走りながら、このような防災放送を聞き、何とも嬉しく思い、一寸した感動を感じる。



 会場のフローラルホール


15kmの距離表示板を過ぎた時だ。 急に左膝が痛くなった。 やばい。 スピードを下げ、左足をかばいながら走る。 相当後ろの方を走っていた筈だが、更に後続ランナーに次々に抜かれる。 構わずマイペースでゆっくり止まらないように走った。 折り返し点で国道から海岸沿いの脇道に入る。 後2.5kmの看板。 遂にゴールのフローラルホールが野島崎灯台の左手前に見えてきた。 やれやれ、どうにかゴールできそうだ。 ゴールのタイムは1時間57分。 後半スピードダウンした割には、2時間を切れたので大満足。

靴に付けたRCチップを返却し、芝生広場で振舞われている無料お汁粉を頂く。 走った後の疲れた身体には甘味がなんとも旨い。 ゴール地点の近くに設けられた記録係りのテーブルで完走記録証をプリントアウトして貰い、フローラルホールのフロアーで帰途の支度に掛かった。 バイク乗りのコスチュームに着替え、駐車場に行った。 やおらエンジンをかける。 うむっ、、、 エンジンが掛からない。 数回セルを押している内にバッテリーが弱くなってくる。 遂に回らなくなった。 朝は一発で掛かったのに、海岸沿いの吹きさらしの駐車場で車体が冷えきったらしい。 大会本部に救助を求めた。 若い一人の大会関係者が心良く、「白い車が来ますから」と行って、直に姿を消した。 ほんの1分もしない内に、白い大きなバンが駐車場にやってきた。 助かった。 ジャンパー・ケーブルを繋げばバイクのエンジンは一発で始動した。

13:30会場を後にし帰途についた。 フェリーの発着する金谷港の手前の ”道の駅鋸南” で昼を取ることにした。 道の駅の駐車場は広い。 小さな長屋風の海産物市場とその同じ棟に、あまり綺麗でない小さな食堂 ”ふく丸” がある。 店中を覗くと数組の先客が居る。 引き戸を開け、中に入った。 大きなテーブルに長椅子の2卓と座敷席が2卓。 店の中には、およそ日常の生活道具が雑然と投げ置いてある。 お世辞にも食堂の店内とは思えない程の雑然さだ。 漁師屋の ”かまや(台所)” と言ったほうが言い得ている。 安っぽいテレビがテーブルの横に無造作に置かれている。 画面には琵琶湖マラソンの実況中継が写っている。 家族風の4人客が既に座しているテーブル卓の反対側に席を取った。 マグロ丼を注文(¥1,000)。 数分後、注文の品が運ばれてきた。 旨い、しかもマグロの量がたっぷり。 これはお勧めだ。 金谷発15:45のフェリーに乗りこんだ。 昨日午後と違い、反対方向の今日は車も人も多い。 大型観光バスがフェリーの甲板に天井すれすれの背丈で居並んでいるのが目立つ。 事故も無く快適な南房のマラソンイベントに喝采。



ゴールの会場のフローラルホール





3/Mar/'02 林蔵 @白浜 千葉(Updated on 8/Mar/'08)#078

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