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奥美濃/大日ヶ岳〜芦倉山〜丸山スキー縦走
(96年4月6日〜7日)


コースタイム:
4/6 白山中居神社4:50−−9:06大日ヶ岳9:47−−11:12保川コル12:00−−
    −−13:20芦倉山13:47−−16:05丸山16:19−−17:45神鳩宮避難小屋

4/7 神鳩宮避難小屋6:47−−7:43大杉8:05−−10:28中居神社


 石徹白周辺の山々は山スキー向きの山だ。昨年4月上旬に、初めて野伏に登って以来、今年2/15に大日岳、3/20〜21には薙刀・野伏と、集中的にこの山域に取り組んできた。そして、今年のこの山域のフィナーレを飾るスキー山行として、石徹白全山スキー縦走のプランを立てた。それは、東端の大日岳から中央の銚子ヶ峰を経て、南西端の小白山までを踏破するというものであった。今回はロングルートということで、単独で軽量装備での挑戦である。

 4/5夜、コンビニの位置を覚えてしまったほど通い慣れた国道156号を北上、石徹白の白山中居神社横まで入って車中で仮眠する。4月とはいえ、石徹白周辺はまだ雪深い。朝3:50起床。今日のルートは神鳩宮避難小屋までだ。予定では8時間半としたが、古い記録で桧峠から登って13時間というものがあったので、眠いが大事を取って早出とする。スキー場を使えば楽に大日岳に登れるが、車1台では致し方ない。

 4:50まだ暗いうちに出発。大日まではひたすら朝日添林道を登る。最初は除雪してあったが、すぐに林道は雪に埋もれ、シール登高になる。林道はくねっているが、全てショートカットする。空は次第に明るくなり、背後には野伏が輝き始めた。林道を2時間半も歩いてたどり着いた終点付近(1320m)は盆地状で、大げさに言えば涸沢に似ていた。そこからは右側の沢を詰めて水後山に続く尾根に出た。沢は昨日降った新雪が30cmくらいあり、シールがきかず、最後はツボ足である。尾根に出れば、山頂まではあと少し。雪庇が崩壊した後のササに悩まされつつ、9:06、山頂に至る。大日からは360度のパノラマ。別山、白山も大きい。しかし眠い。風も弱まってきたので、ついウトウトしていると、下(ダイナランド方面)からテレマーカーが登ってきた。テレマークにしては幅広の短い板で、回しやすそうであった。来年は板を買いかえよう。
 まだまだ先は長い。天狗山に向けて稜線を下るが、北西斜面はまだガリガリのアイスバーンだ。天狗山は小さいアップダウンが続き、登りはハの字登高で乗り切るが、かなり体力を使う。1596m地点手前で、一旦稜線から外れて北側の沢に滑り込む。巨大なブナ林が圧巻である。かつては奥美濃すべてがこんな林だったのだろうが、現在ではかなり植林が入っている。このころはもう気温も上がって雪が腐り、滑りにくい。ポカポカ陽気の下、転倒すると起き上がらずに眠ってしまいそうになる。150mほど沢を下ってから、再び左の稜線にトラバースし、1408mピークに出る。11:12、ピークを下ったところで昼食とする。

 少し先が稜線上の最低鞍部で、芦倉岳への370mの登りが待っている。既に8時間近く行動しており、疲労も出始めてきた。一歩一歩シールをきかせてゆっくり登る。山頂が近づいて来ると、人が立っているのが見えた。何時間も人に会わない単独行では、途中出会った人と話をするのが最大の楽しみである。思わずピッチが上がる。芦倉山頂には13:20着。山頂には夫婦連れがいて、写真を撮っていた。写真をとってもらえることになり、住所を告げると、お互い江南市の人だったことがわかりビックリ。時々こういう奇遇が山では起こり、よい思い出になる。結局、今回の山行では3人しか出会わなかった。それにしても、芦倉から見る初河山南東斜面の雪崩の跡はすさまじい。

 よし、残るは丸山のみだ、と思ったが、意外な伏兵があった。1669mピークである。ここは、東側の雪庇が落ち、ヤブが現れていたのだ。板を外して歩くが、雪庇の割れ目にはまったり、ヤブに引っかかったりして遅々として進まない。業を煮やして、西側に回り込み、急なルンゼをトラバース気味に登って切り抜ける。この辺の地形図の等高線は間違っているので、気を付けよう。1669ピークの次にもう一つピークがあって、丸山への160mの登りとなる。既に夕方近くなり、再び雪も締り始めた。丸山への急斜面は、右側に全層雪崩の割れ目があり、その脇を板を担いでキックステップで登る。かなり疲れてきて、休み休みでしか登れない。雪庇を乗り越えると、16:05ついに丸山山頂に到着。振り返ると、芦倉から大日まで、今日踏破してきた山々が夕日に映えて連なっていた。今日はもう11時間も行動している。
丸山に向かう、その1
丸山に向かう、その2

 避難小屋まではあと少し、と言っても、距離的には芦倉−丸山間と同じくらいある。丸山北面は急斜面である。斜滑降で下っていると、突然板が外れてしまった。アッ、と思ううちに北側の沢にどんどん落ちていく。しかし、ラッキーなことに、木にぶつかって停止してくれた。3ピンにうまくブーツがはまっていなかったらしい。50mほど下って板を回収し、登り返す。無駄なエネルギーを消費し、疲労に拍車をかける。ここから小屋の間も小さなピークが連続し、ハの字登高で乗り切る。1680mピークに出ると、ついに避難小屋が見えた。1572m地点から登り返し、尾根を南に50m滑るとようやくにして小屋に到着。17:45、出発してから実に13時間もかかってしまった。小屋の入り口は雪に埋もれており、裏の窓から入らせてもらう。中は誰もいないが、快適。すっかり疲れて、シュラフを出して早々に眠ってしまう。夜8時頃、目が覚めたので食事とした。外は風が強く、小屋の有難みが身にしみる。登山者ノートを読むと、結構面白い。残念なことに、既に記入するスペースがなかった。また今度きたらノートをもってこよう。


避難小屋から願教寺山方面の夕景


雪の避難小屋

 翌朝、外は明るかったが、それは雪明りで、実際はガスと雪であった。視界は20mくらいで、雪も激しくはないが、天気予報通りならすぐにはやまないだろう。それに、昨日あれだけ行動して、もうすっかり満足(疲労?)しており、ガスの中敢えて銚子ヶ峰から野伏へ縦走することもあるまい、ということになり、そこから石徹白の大杉を経て下ることにした。小屋付近ではクラストの上に新雪5cmくらいの滑りやすい雪質だったが、下部ではグサグサの雪の上にドロドロの湿雪が積もって、もうやってられない。大杉の手前からは歩いて下った。大杉は、思った以上に大きく、鈴鹿の杉峠の杉を大きくしたような感じで、威厳を感じさせた。林道は長く、傾斜も緩いので滑らない。ときどきデブリもあったりしてやっかいである。今年は中居神社まで全く除雪されていなかった。下りてみれば、雪どころか、既に日も差し始めていた。銚子ヶ峰−願教寺−野伏−小白の縦走は、また来年のお楽しみとしよう。