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北ア:新穂高から槍ヶ岳〜飛騨沢滑降
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1日目:新穂高温泉〜槍平 スキーをかついで出発するも雪はなかなか現れない。白出沢をすぎるとブッシュにスキーがひっかかって苦労した。滝谷出合からようやくシールが使える。槍平では飛騨沢の水が使える。
3日目:槍平〜新穂高温泉 土砂降りの雨の中下山する。白出沢では渡渉にロープを使うくらいひどい雨だった。 GWに槍ヶ岳で合宿という計画は、いつ決まったのかよくわからない。でも、「できるだけ多くの会員が参加できるように」というコンセプトの下で計画されたものだったので、天候さえ良ければ、登頂は容易であると考えていた。昨年からASCでは積極的に山スキーチームを養成してきた甲斐があって、今回の合宿ではテレマーク3人、アルペン2人の、5人のスキーチームを編成することができた。登頂は容易であるので、問題はいかに楽しく滑降できるか、と、天気であった。滑降については、おかげさまで、今ではゲレンデならコブ斜面とアイスバーン以外ではパラレル・テレマークターンができるようになった。 問題は天気である。一週間前から週間予報を見られるが、これがくせものである。一週間先の天気が当たる確率はそれほど高くもないのに、毎日見させられ、一喜一憂するのである。しかし、日にちが近づくと、次第に当たりそうな雰囲気になる。直前の予報では、2日晴れ、3日雨、4日晴れ、5日晴れ、で落ち着いてしまった。 我々の計画では、3日に槍ヶ岳山頂ピストンであるので、その日だけは晴れてほしい。しかし、予報ではその日だけ雨になっている。3日に雨の場合は、予備日を使用して4日に登頂すればいいのだが、それなら2日の出発を3日に延期すればいいという話になる。リーダーの僕は、そのことだけで悩んでいた。しかし、出発の1日夜は、出発直前までバイトだったので、結局メンバーに連絡するのが煩わしく、予定通りになった。 さて、いよいよ合宿を迎えた。5/2に槍平に向かう途中も、次第に曇ってきた。「明日は雨だから停滞だ」とリーダー自らやる気の無い様子である。夜ラジオで天気予報をきくが、谷筋なので入りが悪い。ようやく聞こえたのは石川県の天気予報だった。「曇り後時々雨でしょう。ブツブツ・・・」という声が聞こえた。天気図は取れなかったので、判断に困った。朝から雨ではないらしい。しかし午後には悪化するかも。これは困った。他の4人は、リーダーの僕に完全に判断を任せている様子で、「さあさあ、明日はどうするどうする」と迫ってきている感じである。ここがリーダーのつらいところである。仕方なく僕は決断を下した。「明日は3・5にしよう。出発の時点で雨の場合は停滞して4日にピストンをかける。」3・5とは3時起床5時出発ということである。何しろ日の出が5時である。 さて、翌朝、5時にはどんよりと曇っているものの、尾根にガスがかかっているわけでもない。僕は本当は青空の下を滑りたかったので、出発したくなかったのだが、特に停滞する理由もないので出発することにした。空を見ていると、南の方ほど雲が濃い様子である。これは南岸から前線が近づいているためであろう、と考えた。そのうち、北から北西にかけての空が明るくなってきた。彼方の白山に光があたっていて、そこだけ輝いている。これはいけそうだ。そして、我々がちょうど槍の肩についた時、槍の穂先の上空に青空が広がったのである。穂先の登りは思ったより苦労したが、山頂では青空の下、展望を楽しめた。肩に戻った時にはすでに穂先はガスに包まれていた。なんてgood timingだったのだろう! かなりの急斜面だったが、雪質がちょうどよかったために、飛騨沢は予想以上に快適に滑ることができた。そして槍平に戻ると雨がパラついてきた。その日の夕方は天気図を取った。すると、東北地方に小さな高気圧があった。つかの間の晴天は、その高気圧のおかげであった。天気図を見て、僕は天気予報をした。「南岸を低気圧が通れば、すぐ回復するよ。雨は夜のうちにやむよ、きっと。」 夜はずっと雨であった。そして、朝になっても雨であった。「雨が止んだら出発しよう」と言うものの、一向に止む気配はない。僕の天気予報はあっけなく外れた。ふとテントから外を見ると、土砂降りの雨と真っ白なガスの中、数人の登山者が槍ヶ岳を目指して出発するのが見えた。まるで幻を見ているのような気分になった。もし我々が4日に槍ヶ岳ピストンの計画だったら、中止していただろう。 そのうち、雨漏りするテントに居続けるのも苦痛になってきた。メンバーも「さあさあ、どうするどうする」と僕に決断を促しているように思われ、重圧を感じた。仕方なく、雨の中下山することにした。途中、白出沢の渡渉では、ザイルを使用するはめになったくらいのひどい雨であった。 |