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北ア/奥穂高岳
(97/11/1〜11/3)


11月の穂高は厳冬の装い

 11月上旬の三連休に奥穂に行って来た。僕は本来山スキーがお好みだが、11月や12月は雪が少なくてスキーどころではない、ということで、歩いて登る雪山をこの季節に登ることにした。メンバーは谷、Yさん、Nさんの三人である。

 今回は車ではなく電車である。夜行の「ちくま」で松本に向かうが、いつの間にかデラックスな車両になっていてびっくり。電車、バスと乗り継ぐ。バスの中でウトウトしていると、「チェーンをつけるのでしばらく止まります」と言う。雪はチラホラ舞っているが、こんな雪もないのにチェーンなんてつけて・・・と眠ってしまった。ふと目をさますとビックリ仰天!一面の銀世界ではないか。バスターミナルの積雪1cmなり。

 バスターミナルでは峠の会のパーティもいた。最初からプラブーツで歩き出す。雪だけでなく結構風もあって、寒い。横尾までは積雪はほとんど変化しないが、横尾を過ぎると急に増える。本谷橋を渡ると20〜30cmくらいで、アイゼンをつけた。ところが、僕はアイゼンをつけた一歩目でいきなりひっかけて転ぶという失態を犯してしまった。登山者は多く、トレースバッチリの中をへーこら登る。眠い眠い。まったく夜発はつらい。ようやく涸沢に着いた頃には、雪はやみ、ガスも晴れてきた。50CMくらいの雪を踏み固め、テントを張る。周囲には10張り程度のテントが。

  ここで僕の気を悪くする事態が起こった。水は小屋で分けてもらえるのだが、僕以外のメンバーが小屋に水を汲みに行ったまま、暖かな乾燥室で居眠りをこいていたのだ。気象通報の時間になっても戻ってこない二人を心配して、テントから乾燥室に行くと、ぐーすか眠っている二人がいた。いいかげんにしてほしいよ、まったく。気象はとれなかったが、次第に天気は回復し、稜線も見えてきた。明日は晴れるに違いない。

 翌朝、出発準備の遅い二人にまたイライラさせられる。出発は結構遅くなった。しかし,先頭のパーティはほぼ夏道通しで登っているが、腰くらいのラッセルを強いられている様子で,出発は遅くても問題なかった。涸沢カールにも次第に日が射してきた。紺碧の空をバックに穂高の稜線では雪煙が舞い、劇的な美しさである(写真)。先頭のラッセル部隊は、苦労してザイテンに取り付くとそのままザイテンを登っていった。ガイドブックなどを読むと、11月上旬にはあずき沢を登ることが多いというようなことが書いてあるが、その時の状況によるのだろう。

 正直なところ、僕はアイゼンでの岩尾根歩きにあまり慣れておらず、GWの槍の穂くらいである。それでもなんとか岩雪まじりのザイテンを登り切ると奥穂山荘に出た。ここから見る前穂北尾根は際立ったスカイラインを持って屹立している(写真)。小屋からは、奥穂への一層すごい岩稜になる。気持ちを引き締めて取り付く。どこかの大学山岳部が訓練のためかザイルを張って登っている。これがめちゃくちゃ遅い。日も当たらない斜面で長時間立ち止まっているのはかなりたいへんだろう。我々は途中で先に行かせてもらう。だいたい梯子になっているので、慎重に登ればそれほどの困難はない。凍てついた岩壁を登ると雪壁になり、ついでトラバースとほぼ夏道通りに進むとついに3192mの奥穂山頂である。僕は三度目だが、晴れているのは初めてだ。これまでずっとジャンダルムが見たかったのだが、初めて目にするジャンダルムは想像以上に厳しく美しい姿であった(写真)




 この山行は、僕に歩きの雪山もいいなぁと感じさせるのに十分な山行だった。