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奥美濃/前谷川遡行〜大日岳(99年8月1日)


コースタイム:

 魚返り橋5:50−9:05 1046m地点−11:00 1300m地点−12:40稜線1590m地点13:05−14:50桧峠−15:35魚返り橋


 チョックストーンと大釜を持つ5mの滝を左から巻くが、かなり嫌らしい。トラバースを続けて右側に回り込み、沢への下降路を探す。ふと、前方を見ると、素晴らしく豪快な幅広いナメ滝群が連なっているのが目に入った。「なんじゃこりゃー、すげー・・・・」沢に入ると時々こういう言葉が口をつくが、前谷川でも思わず口走ってしまった(写真)。


 大日岳の南側を流れる前谷川は、以前から気になる存在であったが、なかなか実行に移せないでいた。地形図で見ると、入渓点の橋から、大日岳山頂まで標高差1000mもあり、しかも水平距離もかなりのものがある。さらに、『奥美濃百山百渓』の遡行図によると、滝が大量にかかれており、しかも「力量のそろったパーテイで、ザイル、三ツ道具必携で入渓されるよう切望する」とある。

 ここで僕を悩ませていたのは、日帰りで行くべきか、それとも泊まりで行くべきか、という点であった。標高差が1000mもあって、しかも滝もたくさんあるとなれば、かなりの時間を費やさざるを得ない。とすると、我々の実力では日帰りは難しいかも。しかし源流部は激ヤブである。重い荷物での激ヤブは避けたい。そうこうするうちに、赤石沢のトレーニングの一環として、8/1に夜発日帰りで行くことに決めた。メンバーは四人限定として、登攀のスピードアップのためユマールも準備した。

 7/31夜、麓のドライブインの駐車場でテントを張るが、時々雨が降ってきて明日が思いやられた。しかし朝になると、曇天模様であるが、何とか天気は持ちそうだ。遡行開始。橋から降りると、もうそこはナメ滝の連続である。天気がよかったらきれいなのにと思いながら進むと、大釜を持つ5m滝。ここは高巻くしかない。左か、右か迷ったが、左から巻くことにする。すると、冒頭のような景色に出会うことになった。さて、豪快なナメ滝を目の前にしたが、沢に降りられない。しかたなく懸垂下降することにした。一見すると、続くナメ滝は直登できないかも。そこでまず僕が一人で偵察に行くことにした。垂直な岩を10m懸垂下降する。息をはずませて上流へ進むと、本当に素晴らしいナメ滝だ。こんな滝が奥美濃にあるなんて!!。滝も何とか登れそうなので、全員に懸垂して降りてきてもらう。ナメ滝は意外にフリクションがきき、楽しく登ることができた。

 しかしやはりここは奥美濃で、奥秩父の笛吹川のように延々とナメが続くことはなく、喜びはつかの間だったが、それでもいい気分で登っていく。この沢は、遡行図で見ると滝の連続だが、実際に登ってみると滝の間にはかなりゴーロが続くため、体力がいる。堰堤のような幅広直瀑や(写真)、赤木沢の大滝を一回り小さくしたような滝、ひねりの入った滝など、それぞれの滝は個性的で見応えがあり、楽しく直登できるものも多い。しかし高巻きになると、岩が脆かったり、滑りやすい草付きだったりして、気が抜けない。ザイルを使用した滝も2カ所あった。

 最後の滝を右から巻くと1300m地点で、左から支流が入っている。この支流は大日山頂と鎌ヶ峰の中間の鞍部に出る沢だ。時間を見ると12時40分。結構いいペースで来れた。ゴーロの部分はかなり速く歩いたし。これで今日中に下山できそうだと一安心。

 この地点から支流の上を見ると、ガスの間から稜線が見えた。我々は、藪こぎを少しでも減らすため、この支流を詰めることにした。出だしから藪っぽいが、二股となって右を登ると滝になっている。この登りは結構悪かった。その上は激ヤブになる。密生した人差し指ほどもある太いササが我々の体を縛る。「動けーん」うめき声がこだまする。足は濡れたササの上に置くので滑るし、手もササを掴んでいるので滑る。かなり腕力を消耗する。こんな激ヤブは久しぶりである。それでも何とか1時間で予定の鞍部に出ることができた。

 尾根上は風があって涼しく、救われた気分だ。山頂までまだ少しあるが、あえて行くこともないだろうということになり、桧峠に向けて下山開始。鎌ヶ峰周辺は非常に眺めが良く、いろいろ花も咲いていて高山気分か味わえる。緩い尾根をどんどん下るとウイングヒルズスキー場に入る。閑散としたスキー場の脇を下っていくと、桧峠横の非常にさりげない登山口に着いた。このころには天気も回復し、夏の日差しのもと車道をトボトボと下って入渓点に戻った。