山のちスキー時々岩
トップページ 特選山行記録 クライミング日記 家族登山
スキー日記 エリア紹介 リンク

鈴鹿/御在所藤内壁・中尾根(99年8月25日)


メンバー:谷謙二(記)、F

 藤内沢に入ってしばらくでテスト岩に着く。右手は前尾根の取り付き、左手の一ルンゼには一壁への踏み跡がある。藤内沢を登るには左手にルートがある。藤内沢右岸の踏み跡を時には手を使って登っていき、前尾根のP5あたりの高度まで行く。左手に注意すると、上部に固定ロープが垂れているのでそこを目指す。数メートルであるが結構怖い登りである。固定ロープの上が中尾根の取り付きである。

 藤内の中尾根は先年あたりからずっと行きたかったのだが、アプローチがよくわからなかったこと、一緒に行く人がいなかったこと、フレンズがあった方がよいという話をきいたこと、などでなかなか行けないでいた。今回、フレンズを購入したことと、たまたまFさんが休みだったということがあり、ようやく挑戦の機会が巡ってきた。

 中尾根は北面になるため、日があたらないために夏でも涼しい。今日は風が強く、8月だというのにかなり寒い。暑さを予想してテルモスに氷入りのお茶を入れてきたが、はっきり言って熱いお茶の方が良かった。

 1ピッチ目20mW+(写真)、取り付きでツルベで登ることに決めて、谷リードで登り出す。上部にチッョクストーンが挟まったチムニーである。出だしはクラックだが、前尾根とは違ってアイゼンの穴がないので、W+というグレードがそのまま体感できる。チムニーの中間では、ザックがひっかかってなかなか登れず、ザックを残置して登りたくなったが、そういうわけにもいかず苦労した。上部のチョックストーンは、潜ろうかとも思ったか、フレンズをセットしてチョックストーンの左手を越えた。越えると確保支点があったのでピッチを切る。中尾根は、確保支点だけは新しいボルトで整備してあるが、中間支点はハーケンで、腐ったものも多い。

 2ピッチ目10mIV−、Fリード。2mフェースを登るとチムニー状で、ステミングを使って2m登るとあとは容易になる。

 3ピッチ目25mIV(写真)、谷リード。この岩はツルムと呼ばれている。正面から見ると一枚岩だが、側面から見ると薄い岩で、塔のように見えるのである。ここもチムニーで、下から見ると容易そうだったが、ルートが長いため、だんだん疲れてくる。前尾根のヤグラのチムニーよりも傾斜があって難しい。支点も古いハーケンが多く、時にフレンズをかませて登る。左手はハンドジャムが多く、右手はフレークのガバが多い。疲れたころに確保支点が現れる。ツルムからはツルムのコルへ5mの懸垂下降が必要。ツルムのコルは、岩に挟まれて伊勢湾が眺められて絶景(下写真)であるが、風が強くて寒い。


 4ピッチ目40m、III〜IV、Fリード。三角形の岩を登る。下部は少し崩れているが、左にトラバースしてから50°くらいのバンドを右上する。トラバースはホールドがなく、ついA0を使ってしまうが、左手をいっぱいに伸ばすとホールドがあるので次回はA0なしで登りたい。バンドの右上は容易で気分がいい。この岩はクラックを使って直上するルートもあり、新しいボルトが打ってあるが、X級以上はありそうだ。通常三角形の岩の頂点で確保するようだが、登っていくと、Fさんはなぜかその10mくらい上の岩で確保していた。

 5ピッチ目10mV、谷リード。Fさんが余分に登ってくれたおかげで、すぐ上が「オニギリ」と呼ばれるピークのてっぺんである。前尾根から見るとこの部分はオニギリ型のピークで、明瞭に分かる。ここはX級だが、新しいボルトが打たれているので安心する。クラックを登って行く。上部はかぶり気味でパワーがいるが、ホールドはガバなので思い切って直上できて気持ちいい。

 中尾根はその上にもう1ピッチV級のチムニーがあるが、ここで終了することにした。完登を祝って握手。

 下降は当初歩いて一壁の上に出ようと思ったが、中尾根バットレスの上で踏み跡が不明瞭になったので中尾根の東側を懸垂で下ることにする。25mの懸垂2回でツルムのコルに出る(写真)。今回50mシングルロープだっだので、下まで届くかどうか非常に心配だったが、ぎりぎりの(ちょうどよい?)長さだった。さらにツルムのコルから東側に1ルンゼ右俣を懸垂25mで、中尾根バットレス北面の下になり、あとはルンゼを歩いて下ると一壁の西側に出た。

 中尾根は、前尾根に比べてワンランク上で、ザックを背負ったままチムニーを登るのでけっこう消耗する。5ピッチ全て一人でリードすると負担が大きいので、同等の力量の者同士でツルベで登った方がよいと思う。今回は、よいパートナーに恵まれて、マルチピッチのクライミングを堪能でき、素晴らしい一日となった。