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中ア/越百山〜空木岳縦走
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96年の年末は鳳凰三山、97年末は白峰三山、98年末は黄蓮谷の氷瀑と、年末の山行は続いてきたが、今年はどうしよう?。そこで二年前から暖めていた、越百から空木を経由して木曽駒まで抜ける中央アルプス縦走の計画を実行に移すことにした。縦走路は無雪期に歩いてあったが、危険個所の下見として、秋には越百〜南駒間を歩いておいた。さらに核心部と考えた宝剣岳も、12月に南陵から北稜へとたどり、また同行予定のN君と阿弥陀岳南陵を含んで毎週雪山に登るなど、縦走成功へと向け、着々と準備を進めた。 出発直前の週間予報でも、年末まで晴れが続き、縦走の成功を確信して出発日を迎えた。 12/27 伊奈川ダム〜越百小屋 伊奈川ダム9:25−−10:16登山口10:30−−15:45越百小屋 出発前の二日間は冬型だったが、今日からは緩むはずだ。日の出前からJR中央線に乗り、須原駅へと向かう。途中、快晴の空の中で真っ白な御岳が見え、中央アルプスの稜線の美しさに心をはせた。 須原駅からタクシーで伊奈川ダムに向かう。ダム付近の積雪は意外と多く、すでに5cm程度ある。登山届を提出して出発する。約1時間の林道歩きで登山口着。尾根に取り付く。出だしでは雪は少なく、トレースもあって小屋までは簡単に着きそうだ。あまり早く着きすぎると暇だから、のんびり行こう。 しかし登るにつれて雪は増えていき、標高2000mを過ぎるとトレースもかなり薄くなってきた。膝前後のラッセルが続き、全く予想外だ。N君と交代で軽いラッセルを続ける。眺めはほとんどないが、途中で真っ白な南駒や仙涯嶺が望める。明日はあそこを通過するんだと思うと、わくわくしてくる。 予想外のラッセルのため、小屋到着は16時近くになってしまった。ここで積雪50cm〜1mほどである。避難小屋は開放してあり、中でテントを張った。他に登山者はいない。夕日で真っ赤に染まる稜線を眺めつつ(写真)、明日の越百山までのラッセルの苦労を思った。 12/28 越百小屋〜越百山〜南駒ヶ岳手前 越百小屋5:45−−8:35越百山8:50−−11:29仙涯嶺−−15:00南駒ヶ岳手前 予定では今日は空木岳山頂まで進むはずである。越百山頂で日の出を見ようと、6時前にハーネス・ヘルメットを装着して出発した。下見の時は小屋から35分で山頂に到着したので、1時間もすれば着くだろうと思ったのだが・・・。小屋付近のラッセルは膝程度だったが、積雪は次第に深くなり、膝上〜腰までのラッセルへとひどくなっていった(写真)。僕とN君とで15分交代でラッセルを続けるが、一向にはかどらない。森林限界はまだか〜。周囲は明るくなり、背後の御岳にも日があたりだした。 結局、標高差250m登るだけなのに、越百山までは3時間近くかかり、日の出を見るどころではなかった。しかし標高2613mの越百山からの眺めは最高で、これからの快適な稜線漫歩を夢見て縦走へと出発した。(写真) ところが、稜線といえども、かなり積雪が多い。特に岩の周囲は吹き溜まりになっていて、そのたびにラッセルになってしまう。さらに予想されたことだが、風も強い。時折立ち止まって強風に耐えなくてはならない。もちろん目出帽にゴーグル着用である。 無雪期には越百〜仙涯嶺間は1時間ほどだが、その日は3時間近くかかってしまった。ただし、要注意箇所の岩峰を木曽側を巻く仙涯嶺の下りは、鎖も出ていてロープも使用せずに通過できた。でも登りにとるとラッセルがきつそうだ。(写真) 続く南駒ヶ岳への登りはその日のハイライトになった。夏道は伊那側を巻いているのだが、東側の吹き溜まりはかなりの量になる。おそらく腰以上のラッセルだろう。それなら稜線を忠実に登った方が楽そうだ。ということで、夏道をはずれて岩稜の稜線をたどることにした(図)。 まずは岩峰を左の木曽側から巻きつつ登る。予想通り雪は少なく快適に登れる。やがて左側も岩場となり、中間の浅いルンゼをキックステップで登り、上部で右側の岩場に移って越える。その上はもう山頂手前のピークかと思ったが、意外にも上には岩のリッジが続いていた。岩の左右は雪面で、それほど切れ落ちているわけではないが、雪上に入るといきなり腰まで潜ってしまう。岩のリッジはホールドに乏しく、右側を巻いたり上に戻ったりして進む。なかなか面白いルートだ。 しかし進むにつれ、前方に高さ20mほどの岩峰が見えてきた。いったん深い吹き溜まりのコルに少し下り、岩峰の基部に着く。左右とも巻けないが、中間部までハイマツの生えた左上バンドが走っていたので、天の助けとそこを登る。しかしバンドは途中でなくなってしまった。見上げると垂直に近い壁だが、右上のクラックから登れそうだ。でも確保なしではとても登れない。ハイマツを支点にN君にビレイしてもらい、登攀開始。7〜8mほどだが、3級のクライミングを楽しめた。上に出るとちょうどピナクルがあり、そこを支点にフォローを引き上げる。ここからコンテで進むことにする。 さらに先を見ると、すぐに5mほどの高さのドーム状の岩がある。左右とも切れていて巻けないが、岩の間の雪壁から上に登れそうだ。軟雪の雪壁を掘り崩しながら苦労して登り、上に出た。が、どしたことだろう。岩峰の先は切れ落ちていてクライムダウンできない!!。こういう時はあわてず懸垂下降だ。しかし直径4cmくらいの貧弱なハイマツしか支点がない。これだけでは危険だ。周囲の雪を掘り起こすと、何とか同じような太さのハイマツが見つかったので、荷重を分散して支点工作した。強風にあおられて横になびくロープを10m懸垂する。途中はハングしていて、アイゼンを着けてハングを懸垂したのははじめての経験だった。ここにシュリンゲ3本残置した。 さらに岩峰が続くが、これは右から巻けそうだ。雪面と岩の接する部分をへつるように進むが、最後のリッジに抜ける部分が一歩難しい。僕がコンテで先行して、リッジの反対側で確保態勢にはいると、おやっ、ロープにテンションが。N君はスリップして雪面に落ちたらしい。 その地点はちょうど右下から夏道が合わさる地点だった。夏道をみると、一面吹き溜まりで、ラッセルしていたらかなり労力と時間がかかっただろう。しかし稜線上を行っても確保や懸垂でかなり時間がかかったので、ひょっとしたらどっちでも同じだったかな? 楽しく面白いルートを登れたことに満足しつつも、すでに時間は15時である。予定の空木まではとてもとても無理である。仕方なく、南駒ヶ岳の少し手前の小ピーク付近にテントを設営した。しかし風が強い場所で、テントは一晩中バタバタと風にあおられ続けた。この夜携帯電話で家に電話したが、こちらからは風がうるさくて何も聞き取れなかった。しかし家の方では、バタバタという変な音のする電話がかかってきたと不審に思ったらしい。 今日も誰にも会わなかった。明日のトレースも期待できそうにない。この時点で、4泊5日の行程では木曽駒まで縦走はほぼ不可能であることが判明し、空木から池山尾根を下山することに決めた。 12/29 南駒ヶ岳〜空木岳〜池山避難小屋 テン場7:07−−7:28南駒ヶ岳7:45−−8:48赤椰岳9:05−−11:06空木岳12:30−−16:45池山避難小屋 朝食をとり、テント撤収だ、と外に出ると、あれ〜、ガスってる?。おかしいな〜、といいつつ、強風下テントを撤収し、南駒に向けてコンテで出発。しかし歩き始めるとみるみるガスが晴れてきた。朝日がガスに赤く反射してとても美しい光景を作り出す(写真)。南駒に着く頃には、昨日と同様な素晴らしい快晴へと変化した。しかもきのうよりも風はかなり弱そうだ。 南駒から一旦150mほど下り、また100m登ると赤椰(なぎ)岳に着く。ここの登りはクラストしていて、これまでよりもかなり快適だった。たぶん、稜線上に大きな岩が無いので吹き溜まりができないからだろう。山頂に着くと風はさらに弱まり、ゴーグルもはずして行動できるようになった。 さらに最終目的地となった空木岳へ向かう。夏道は稜線の西側に着いているが、当初予想したより雪が多く、ところどころラッセルになる。 しかし不思議なことに、稜線上なのに動物の足跡(カモシカだろうか?)が南駒ヶ岳からずっと続いている。我々はアイゼンなど重装備で寒さに対処しているのに、山に住む生き物は自分の毛皮だけで行動できるらしい。ところどころ小便がしてあるところをみると、縄張りを主張しているのだろうか。真冬の見回りご苦労さんである。 空木の手前のクラスとした急登を快適に登り、小ピークをいくつか越すとついに空木岳に到着。お互い握手する。快晴の山頂には人影はなかったが、人間の足跡があり、下りの池山尾根のトレースは期待できそうだ。 眺めているうちに、木曽駒まで縦走したい欲求にかられたが、無理矢理押さえ込んで下山開始する。今日は池山避難小屋まで下ることにしたが、水がないといけないので、山頂直下の駒峰ヒュッテで今晩用に水を作った。そこに1時間以上いたが、それでもポカポカと暖かい日であった。 池山尾根のトレースを時々ズポッとはまりながらも順調に下る。入山してはじめて人とすれ違った。途中の大地獄・小地獄のトラバースは若干緊張する。初心者の場合はアイゼンをつけた方がよい。池山避難小屋は見落としそうな小屋で、かなりボロかった。ただし水は流水がある。 12/30 駒ヶ根に下山 池山避難小屋6:45−−8:30菅の台 今日はもう少し歩くだけである。朝は快晴で、もう四日間快晴が続いている。やはり年末は天気がいい。下山して温泉に入ろうと思ったが、なぜか今日に限って休業日になっていた。そういえば一昨年の白峰三山のときも温泉に入れなかったなー。 帰りの交通のことは何も考えていなかったが、駒ヶ根から飯田線で飯田に行き、ハイウェイバスで名古屋に戻った。飯田線からは縦走した越百山〜空木岳が非常に美しく輝いていた。 今回の合宿は、縦走を少し甘く見ていたかもしれない。稜線上といえども、先行パーティがなければかなりのラッセルで体力を消耗する。特に中央アルプスでは小ピークが多いため、疲労感がつのった。4泊5日の計画だったが、木曽駒まで縦走するには5泊6日+予備日1日は必要だった。技術的な面では、南駒ヶ岳の南稜が一番面白かった。簡単なバリエーションだが、岩場に懸垂下降まであって、たんたんと夏道をたどるよりもはるかに楽しい。宝剣岳南陵よりも難しいと思った。 N君は冬山一年目だが、よく頑張って歩いたと思う。また残りの空木〜木曽駒間に挑戦してみたい。 |