| この鳥とはとても不思議な出会いがある。最初に観察したのは京都の鴨川である。暑い夏の日に |
| ふと見るとササゴイがいた。よく見ると魚を探してウロウロしていた。そのうちこのササゴイは何と |
| 羽を丸く広げて影を作って動かなくなった。(完全なドーム形を形成) |
| そのまま3分たっただろうか、突然動いたと思ったら口にはねる魚の姿があった。ササゴイと言え |
| ば疑似餌による魚の捕食が良く知られている。私も幼鳥が何度も練習している姿は観察したこと |
| はあったのだが、こうした捕食方法は初めてであった。アフリカだったか影を作って魚を誘き出し |
| て捕食するサギ類の仲間をテレビで見たことがあるが、まさかササゴイがやるとは思わなかった。 |
| ただこの話をしても誰も信じてもらえないのが悔しい。それを観察したのがちょうど仕事中だった |
| ので証拠写真など撮れるはずもなく。 |
| また数年前の忘れもしない5月5日。昼寝をしているとすぐ近くでけたたましい鳴き声が、飛び起き |
| て外を見ると隣の家のアンテナの上でササゴイが鳴いているのだ。 |
| ササゴイの声を聞くのも初めてであったが、寝起きだけに夢かもしれないので取りあえずあわてて |
| カメラを取り出して写真を撮った。今写真が残っているから夢ではなかったのだろう。 |
| ササゴイは被写体として、サギ類では一番好んで撮影している。今度はどんなシチュエーションで |
| 出会えるかとても楽しみである。 |
| どんなに会いたかったかはとても文章に言い表せません。先日、能勢で長い尾羽をたなびかせな |
| がら私の頭のすぐ上を何度も飛ぶサンコウチョウのオスを見た時の喜びを。 |
| この野鳥ほど私を長年いらつかせたものはありません。野鳥を見始めて12年にもなるというのに |
| 私が行かなかった時に限って必ず、必ず出現したこの憎っくきサンコウチョウの♂。 |
| 一度も長い尾羽を見ることは出来ないと最近はあきらめの境地に到達した矢先での出現でした。 |
| 例えばゴールデンウイークで1週間休みがあって6日間はこの野鳥に会えるかとひたすら同じ所 |
| に通うとします。明日こそは明日こそはと思いながらも見れない。失意が体を疲労させていく。 |
| とうとう最終日、疲れがピークに達して私は外に出れない。と、必ずや出現する彼。これが私の場 |
| 合は12年も繰返されました。12年もですよ。 |
| 3年前にはようやくメスだけは見て、撮影することも出来ましたがやはりサンコウチョウといえば♂ |
| の長い尾羽じゃありませんか。とにかく図鑑を見ながらひたすら出て来てくださいと祈っていました。 |
| ある年などは、ある場所に行く途中で気が変わって違う場所に行っていたら、当初行く予定の場所 |
| に出現ということもありました。どれだけ落ち込んだことか、そして見た人の自慢げな話をどれだけ |
| 延々と聞かされたことか。 |
| ようやく会えた能勢のサンコウチョウは、実は私の口笛に反応して近寄って来たのです。 |
| 「月日星ホイホイホイ」と吹いてみると鳴き返しながらヒラヒラと飛んでやって来ました。会える時って |
| こんなもんなんでしょうかね。 |
| 何か夢を見ているような気持ちで近くにとまっているサンコウチョウのオスを見つめていました。 |
| いつも声しか聞かせてくれなかったサンコウチョウがコバルトブルーの目でこちらを見つつ延々と |
| さえずっていました。本当に尾羽は図鑑のように長かったんですね。やはり本物を見なければ実感 |
| は湧かないものです。いわゆる通販のカタログ写真と実物とのギャップといいましょうか。 |
| いや、通販の場合は写真より実物がいいということはあまりないと思いますので、こんな例えをしま |
| すと怒られちゃうかもしれませんよね、サンコウチョウのオスに。 |
| この鳥はいつもピリリ、ピリリと飛びながら自己主張をしている。俺はここにいるんだぞと。であるのに |
| なかなか観察・撮影は許そうとしないとても困った野鳥の一つである。 |
| 名前の由来はご存知のように山椒を食べて、口の中が熱くてピリリピリリと鳴いているように聞こえる |
| からとの随分こじつけ的なものである。しかしながら、一度その声を聞くと成る程!と手を打ってしまう |
| から不思議なものだ。(私も最初に声を聞いた時、「言いえて妙!」と手を打って叫んでしまった。) |
| そんな私が唯一撮影の機会に恵まれたのが、9月29日の大阪南港野鳥園でのことだ。 |
| 秋の渡りには毎年ここで本を読みながら、来るあてもない渡りの鳥達を朝から待つことにしている。 |
| その日も藤沢周平の小説(だったと思う)を読みながら、石になっていた。私は本を読んでいる時には |
| その存在を消すことが出来るのである。(今までこのシチュエーションでどれだけ撮影してきたことか!) |
| と、何かが頭の上で鳴いた。ベンチの真横の木を見上げると、そこにはサンショウクイのオスがとまって |
| さえずっていた。初めて間近で見たサンショウクイを観察しながらもどうにか写真を撮ろうとするのだが、 |
| 余りに距離が近かった為、動くと逃げられそうな気がしたのでカメラを真上に上げて何とか撮影すること |
| 今年の冬(2001年〜2002年)はどうやら当たり年の気配がする。昨冬は3月にようやく1羽のみ観察 |
| することが出来て、ガッツポーズする位喜んでしまうくらいいなかったのである。 |
| シメの顔はとても恐く見える。目がまるでヘビのように死んだ感じがするし、あのくちばしで挟まれる |
| と地獄の底まで引きずり込まれそうな錯覚まで起こしかねない。それにあの不恰好に短い尾羽と |
| 決していいシチュエーションで撮影させない愛想の悪さ。鳴き声も種が近いイカルに比べると地味〜 |
| と鳴いているようにさえ聞こえてしまう。 |
| であるのにも関わらず、このシメが私は大好きなのである。とにかくこの鳥を写真に撮りたくて撮り |
| たくてたまらないのである。憐れみということではなく、私は心底この野鳥が美しいと思っている。 |
| 地味鳥好みの私にとって、シメはその究極の地味鳥といえるだろう。 |
| この秋にようやく満足させてもらう機会に恵まれた。残念ながらその傑出した(自分で言うなよ)写真 |
| は門外不出のアルバムに封印されたので、当分はお見せできないが最高のシメの写真が撮影で |
| きたことに幸せさえ覚えてしまう。さて、シメはくちばしの色が冬と夏では違っている。当然と言おうか |
| 夏のくちばしの方が魅力的である。しかし綺麗になるといっても鉛色になるのだから、いかにもこの |
| 鳥らしいというところか。(冬のくちばしは肉色) |
| もう1枚、この冬はシメの傑作作品を密かに狙っている。本当に魅力ある素晴らしい地味鳥である。 |
| もうすぐ彼らともお別れの時期である。昨日は雄が結構目の前に出て来てくれた。去年の11月は雌 |
| がセイダカアワダチソウによくとまってくてれて、シャッターを押すことができた。一昨年は山田池公園 |
| の梅林で雄が大サービスをしてくれた。冬鳥で一番最初にやってくるのはいつも彼らのような記憶が |
| あるが、ノビタキの秋の最盛期と重なるので来てくれたという印象が少ない。いつもいつの間にか渡 |
| って来ている雰囲気がある。ジョウビタキは渡って来た頃に、いつも強烈な縄張り争いを見せてくれる |
| 。その縄張り範囲はモズに比べると狭いイメージがある。私が一番印象的に残っているのは今から |
| 数年前で冬への移り変わりの時期だったと思う。いつものように山田池公園のスイレン池に出向くと |
| ジョウビタキの雄がとまっていた。最初は気付かなかったが、見るととてもいい場所にとまっている。 |
| そこで足元に注意しながら近付いた。このジョウビタキのオスは極めて警戒心が少なかったので、近 |
| くにカメラを慎重に置いて、構図を考える。野鳥の撮影は一瞬の勝負だがこの時は不思議に飛ばな |
| い雰囲気があった。バックのボケが最高である。あのドキドキ感は今でも忘れられない。その時の |
| 写真が私の自費出版した写真集に掲載されているジョウビタキ雄の作品である。相当なお気に入り |
| だったで年賀状でも使った。ともかくも毎年知らないうちにやって来てくれて撮影を楽しまさせてくれる |
| 貴重な野鳥である。この冬もありがとう、また秋になったらお会いしましょう。 |
| スズメについては、一度別のコラムに書いたことがあるがとても好きな野鳥なので別の観点から |
| 今回は述べてみようと思う。 |
| 撮影対象としてのスズメについてである。とても難しいことは野鳥撮影されている方にはわかって |
| 頂けると思うのだが、スズメをどこで撮影すればスズメらしくかつ野鳥らしく撮れるかという事である。 |
| スズメは生活基本が人間近くにいて衣食住を全て行う事になっている。だから人間とのツーショット |
| を撮影すればいいのだが、これではちっとも野鳥らしくはない。一方、例えばジョウビタキやルリビ |
| タキがとまるような枝にスズメがとまっても・・・違うんですよね。 |
| それにスズメは留鳥だから季節感を感じさせてくれない。辛うじて幼鳥を撮影すれば夏時期かなと |
| いう程度である。先日もヒマワリの種を食べに、カワラヒワとスズメがやって来た。カワラヒワ等は |
| らしく撮影出来るのだが、スズメはというと・・・・イメージが湧かずでシャッターを結局押すことが出来 |
| なかったのである。 |
| 稲とスズメというのも一つのイメージであろう。また冬の雪の中にたたずむスズメもがらしいのかな |
| と思うが、未だシャッターはそういうイメージで押せていない。野鳥写真家の和田さんの野鳥生活記 |
| の表紙はらしくてとても好きであるが、ああいう集団でのスズメの写真も撮れていない。 |
| そうなのである。敢えてスズメだけを撮りに行こうという気持ちが全くなくて、たまたまそこにいたので |
| 本当に何度みても素晴らしい造形をしている。他の動物を含めてもかっこ良さ選手権では間違いなく |
| 入選出来るし、ひょっとしたら優勝も狙えるかもしれない。 |
| 野鳥を観察して4年目に南港野鳥園で初めてのご対面であった。その時のフィールドノートには |
| 「やっと、ご対面。美しい!」と書かれてある。フィールドノートにはめったに野鳥名以外は記入しない |
| 私がコメントを書いたことからもその感激具合がわかる。あの長い赤い足。是非一度本物に触れて |
| みたいと願うばかりだ。あの長くとがったくちばし。是非一度目を突いてほしいものだ(ウソ、ウソ)。 |
| 白と黒のコントラストが鮮やかなボディはスマート以外の表現を思いつかない。 |
| 以降は結構セイタカシギとも会うことが出来るようになった。中でも嬉しかったのは親子でやって来て |
| くれた時である。幼鳥を見ているととてもセイタカシギのそれとは考えられない地味な装いである。 |
| が、その足の長さを見ると紛れもなくセイタカシギであった。 |
| その時に一緒に観察していた人との会話。「小さいなあ、それに色を見ると子供や思えんなあ。」 |
| 「本当やな」「足も親に比べると短いし」「そりゃあ、体全体が小ぶりやし」「くちばしも短くて、全体に白く |
| て、まるで別のシギみたいやな。」「エッ!?」フィールドスコープをのぞくと、そこにはいつの間にか |
| 親子の間に割り込んだコアオアシシギがたたずんでいたとさ。 |
| 東京に2ヶ月いた時、あまりのセイタカシギの普通種加減(結構、どこにでもいる)にはびっくりして |
| 日本で見られるセキレイの中で、一番のお気に入りです。白と黒のシンプルな体と黒いつぶらな瞳。それ |
| だけでこっちはフラフラになってしまいます。そして日本固有種だというのもいいですね、このシンプル |
| な美は日本そのもののような気がます。初めて会ったのは京都・深泥池だったように記憶しております。 |
| それほど野鳥を知らなかった時期ですので、教えてもらった気がします。やたらに濁った声でそして美し |
| い姿、シッポ振り振りがとても気に入ったことを覚えています。ただ、好きな野鳥はなかなか満足した |
| 写真が撮れないという私のジンクス通りに、見事に理想とおりには撮影出来ていない一種です。出来て |
| いましたら大好きな野鳥ですから、ごり押ししてでも写真集にカットをいれていただろうと思います。特に |
| 一年中に観察出来ますので、幼鳥とも良く出会うことができます。幼鳥は大体が人間に対しては警戒心 |
| がないですね。記録的には必要でしょうが、美しい成鳥でないと私には被写体になり得ないのです。 |
| そんな私が唯一気に入っている写真が、雪の上にたたずむセグロセキレイの写真です。また、池に氷 |
| の張った寒い時期に、飛んできてくれた姿にも満足なカットが何枚かあります。さて、山田池公園では |
| 一般的なセキレイ(セグロ・ハク・キ)の三種類を同時に観察する事が出来るのですが、同一種類同士 |
| 以外の争いを見たことがありません。そのあたりの棲み分けが、彼らには完璧に出来ているような気も |
| します。何はともあれセグロセキレイをこの冬にかけても追っかけ回そうと思っています。本当に美しい |
| 野鳥ですから。セグロの写真でプロのいい作品もあまり見たことがありませんね。チャンスかも。 |