独白

傷つけることを恐れない、自分のこれは何だろう。
鋭利な刃物のような。
ここにあるものは何だろう。
この止まらない感情を飲みこむことのできない自分が。
自制のきかない、優しくできない、こんな気持ちで溢れてるのに。
涙のような、気持ちが。

そんな顔で見上げないで。
いつも晴れ渡る笑顔でいる君が好きだよ。
だから、その顔は反則だろ。
どうして急に、傷つけられた顔になるの、どうして。
全然気にしてないよ、平気。大丈夫。って笑ってくれないの。
いつもみたいに。前みたいに。
え?もう終わりってこと?

始まるときにはもう終わりを想像していたよ。
それは二人並んで棺桶に入る夢だったり、君に先立たれて墓を掃除に来る僕だったり。
言ってみれば、平和的なさよなら。

強く君の肩をコンクリの壁に打ちつけて、僕は酷く後悔した。
君を嫌な女にさせてしまったのは僕だ。そう気付いてしまった。
馬鹿だったのは僕で、これは僕のわがままだった。
僕が笑ってあげればよかった。
そうか、しょうがないね。って君に、笑ってあげればよかった。
君が好きな僕なのにね。

自分の歯痒さに噛むばかり。
傷つけるつもりなんてこれっぽちもなかったよ。そんな顔させるつもり……
笑った顔が好きだから。だから。
矛盾、してるんだよ。
君に優しくしたいのに、甘えてる。自分の気持ちを押し付けて。

男の特権を利用して君をこんな風に追い詰めてる。
さらっていきたいよ。殺したいよ。
いっそ、このまま……

僕は腕の力を緩めて君を解放した。君は戸惑いながら僕を見つめ返したけど、
「行っちまえ!!」
なんて酷い言葉しか掛けられなかった。ごめんね。
幸せにしてあげられなくてごめんね。
最後まで一緒にいれなくてごめんね。

 

「……んとねえ。あなたの心の中には泉があるんだわ」
泉?
「そう。きれいな、優しい癒しの泉」

 

笑った君の顔が浮かぶ。 ……違う、僕の中にナイフがあるんだ。
君を傷つけて僕を傷つけて、研ぎ澄まされた刃先はいつも僕のここに。
触っただけで、鮮やかに切れる。

僕は痛みに泣きたくて、吐き出してしまおうとしたけど、止めた。
ごめんね。と僕の心に重ねた君の声をいつまでも再生していた。
いつまでも。

 

 

 

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