+風の吹かない場所+
たとえ誰が許してくれなくても構わない。ただ僕は、やらなければいけないんだ。 |
長いまつげが少女の白く透き通る肌に月の影を落とす。 部屋には、少女と、ベッドの上に微かな気配が感じられるのみ。 街の喧騒も、鳥の羽ばたきも、虫の鳴き声さえも届かない。 静かな、夜だった。 窓辺の椅子に腰掛けた少女は、月が明るすぎて星の見えない空を見上げていた。 くくく、と突然低い笑い声が漏れ、部屋に広がる闇の一角が不自然に揺れた。 「あいつは誰に許しを請いている?」 少女は答えない。答えがあるとも思えなかった。 「死んでいるのかと思えば」 「……なるほど。人間とは不便なものだな」 魔法の力を借りた夢の世界で、少年は誰に許しを請いている? 男は闇そのものであり、闇は男そのものであり。 少女はよくそれを理解していたが、再び訪れた静寂に胸をなでおろした。 (あいつは誰に許しを請いている?) 人でないものの声が耳に残って離れない。 ただ、静かすぎる夜は、思うことをやめさせない。 「セラ」 穏やかな声で名を呼ばれる。 「もう魔法でも無理みたいだな」 (……ああ) 「まあいいさ……あと少しだ」 「窓を、開けてくれないか」 「……ありがとう」 セラはベッドのそばまで近寄ろうとして、ふと足を止める。 「許されるのなら最後まで……」 ……いいことないよ、と少年はわずかに苦笑した。 |
「たとえ誰が許してくれなくても構わない。ただ僕は、やらなければいけないんだ」
詠唱される言葉を、セラは夜空の月を見上げながら何度も反芻する。 私は、この方の優しさにすがっている。 (せめて、この方から夢見ることまで奪わぬように) 風の吹く未来まで奪わぬように。 |
注意。ネタバレしてます。未プレイの方、読まないほうがいいです。 私が書くと、ユーバーさん、ものすごくいい人です。 3のルックがあまりにも孤独に思えたので、それはいかん。彼は彼の楽園を持っていなければ。 最後ですが、よかったらゆんさんもらってやってください。 ベストエンディング、あることを願いまして。 2002・9・9 金田
追記。 志水アキさんの漫画版3の補完ぶりがすばらしいです。おすすめ。 |