+戦いの前に+
「フッチさん?どうかしたんですか?」
グラスランドの大地と太陽に愛された少年は、暗い遺跡の中にあってもその輝きを失わない。 「いや、なんでもないよ」 フッチは微笑み、周囲の硬い雰囲気を打ち壊した。 (この道の先に、彼がいるはずだ) 行かなければ、いけない。 何度も戦いを経験した。 けれど、あの頃の自分はもういない。 確かめなければいけない。 |
「変なの」
高まる緊張感とともに誰もが静まり返っていたため、大きく響いた。 「……何が、変なんだ?」 「だって、ルックくんを倒さなきゃいけないなんて、おかしいよ」 ぴたりと一行の足が止まる。 「あの仮面は……そんなにいいやつだったの?」 オレはそれを、知っていなきゃいけない気がするんだ。 クリスはじっと目の前に立つ少年を見た。 真の紋章を宿したものたちの苦悩。 「……かつての炎の英雄は」 これから起こることのすべての責めを負い、それでも愛する一人の女性との生を選んだ。 「当時は理解できなかった。だが今は、少し分かるような気もする」 「時間はみんなに優しいよ。だから大丈夫だよ」 黙っていたフッチが、一歩前に出る。 「ヒューゴ。ルックの友人の一人として僕が望むことは、これ以上彼に破壊を繰り返させないようにすることだ」 ヒューゴはしばらく目を閉じて沈黙した。 「行こう」 ヒューゴはみなに短く告げ、扉に両手を掛けた。 |
+ + + |
崩れ落ちる遺跡、行く手を塞ぐ、モンスターの群れ群れ群れ。 フッチは大刀を振り下ろし、一匹一匹となぎ倒していく。 キリがない小競り合いに、苛立ちと焦りが募る。 前に進まなければ、と頭では分かってはいたが、どうしても後ろが気掛かりだった。 「好きにすればいい」 素早い動きでモンスターの足をなぎ払いながら、ヒューゴがこちらに向けて走ってきた。 ビッキーが何かを踏んづけ尻餅をついた拍子に、先が見えないほど通路を埋め尽くしていたモンスターの群れの一角が消え失せた。 |
ルックは崩れ落ちてくる瓦礫を避けようともせず。 ただ目を閉じて、ぼんやりと夢を見ていた。 かつて、仲間と呼んだ人たちがいた。その夢を。 うざったいのに、こちらに近づいてくる彼らに向かって。 顔をしかめて、呟く。 「……何か用?」 大きな音を立て、最後の建物が崩壊した。 |
注意。ネタバレしてます。未プレイの方、読まないほうがいいです。 書き終わってまず思ったこと。 完全攻略本が出ましたね。そしてエンディングはあれきりだということで。 今回はヒューゴとクリスとゲドをそれぞれ活躍させて、かつビッキーを可愛く書くということに気合いれてみました(フッチはなに)
金田・藍 2002・9・18 |