Ai Nikkor 105mm F2.5S

発売 1981年10月
小売価格 46,000
レンズ構成 4-5
全長/重量 69.5mm/435g
最短撮影距離 100cm
フィルタサイズ 52mm
絞り羽根枚数 7枚
その他

photodo rating = 4.2

    105mmの中望遠レンズは、被写体との適度な距離感とその穏やかなボケ描写から、85mmと並んでバストアップのポートレートに最適のレンズである。また、スナップでチョット対象を引き寄せたい場合にもとても便利な焦点距離である。F値も比較的明るく焦点距離もさほど長くないので、カメラぶれしにくく気軽に用いることができる。

   マクロレンズを除くと、現代の100mm付近のレンズ明るさは通常F2である。従ってスペック的に本レンズの魅力は乏しいのであるが、歴史的にはSの頃からの伝統を引き継ぐ由緒正しきレンズである。その昔は大口径105mmとして世間をあっと言わせたらしい。しかし明るさがF2.5に押さえられているため、フィルタ径が52mmでフィルタの使いまわしができて便利である。しかし口径の割には分厚いガラスブロックが多いため、重量は見かけ以上で手に取るとずっしりとくる(435g)。とはいえ、F2.0クラス(560g)に比べればずっと軽いので、携行に苦労しないところが良い。

    さて、このレンズはAi 180mm F2.8Sと並んで、名Nikkorレンズの一つにしばしばあげられる。実際、描写は開放から大変シャープで周辺光量も豊富である。逆光にも大変強くゴースト・フレアは見られない。またこのレンズで特徴的なのが後ボケのまろやかさであり、どんな状況においても後ボケに乱れは生じず、大変立体的な描写をする。実際、「ニッコール千夜一夜物語」によると、

「基本的に近距離収差変動は少ないのですが、ポートレート撮影領域から近距離においては各収差が若干補正不足の傾向になります。特に球面収差の補正不足の傾向は、より背景のボケ味が良好になる傾向を示しています。ポートレートを意識し、そこまで周到に計算された収差バランスになっているのです。」
とある。「かわ」がこのレンズに対して抱いていた印象もあながち誤りではなかったのであろう。以上の様に、後ボケはとても柔らかいのであるが、反面前ボケは若干うるさいかもしれない。現在Nikkorレンズカタログの被写界深度の解説写真にはAF85mm 1.4が用いられているが、以前は本レンズによる作例が使われていた。このレンズのボケ描写に対する自信の表れであったのだろうか?

    このレンズ、近接性能にも優れており、中間リング(PK-12、PK-13)を併用すると簡単なマクロ撮影ができる。「かわ」はせいぜい1/2倍までのマクロ撮影しかしないので、これで事足りてしまうのだ。マクロ域でのボケ描写も見事なもので、これもまた気に入っている。

    しかし開放F値がF2.5というのもちょっと寂しい。Nikonとしては、本当はF2.0クラスの明るいレンズをラインナップしたかったのだけれど、本レンズの出来があまりに良かったがため没にできず、その代わりF1.8のレンズ開発をちょっと無理して行ったのではないだろうか。F1.8のレンズも良いレンズだが、さすがに開放では口径食が大きく周辺光量も不足するようである。AF NikkorではF2.5レンズは没にして、F2.0のDC Nikkorレンズだけになっている。

    このレンズは内蔵フードを装備しているが長さが若干短いので、十分に遮光したいときには、Aiマイクロニッコール105mm F2.8S用のスプリング式フード(HS-14)を使用している。フードの深さ、質感ともに十分満足できるものである。
 

2002/1/20


 戻る