Ai Nikkor 28mm F2.8S
photodo rating = 4.1 |
28mmレンズは、その画角が人の広めの視野に近く、また不自然な歪みやパースがつかないことから、広角のスタンダードとなって久しい。その昔は35mmが広角のスタンダードと呼ばれており、やがてスタンダードが28mmに移行し、そのうち24mmがその位置を占めると思われたが、未だもって28mmがスタンダードであることから、この焦点距離の応用性の広さが伺える。「かわ」の場合も例外ではなく、大変好きな焦点距離である。どれか一本持って行けと言われたら、スナップ系の場合は35mm、ネイチャー系の場合は28mmレンズを持って行くであろう。 1980年代前半、Nikonのレンズカタログには28mmレンズが5種ラインナップされていた。即ち、F2、F2.8、F3.5、PC F3.5とSeries-E F2.8の5種である。F3.5の描写も悪くないらしいが、何しろF値が3.5では暗すぎる(単焦点レンズとしてスペック的に悲しい)ので現在ではカタログから姿を消している。また、Series-Eも時代の流れと共に姿を消した(本レンズは初期のAF Nikkorとしてリメイクされたとの噂もある。)。それでも現在MF28mmレンズとして3種がラインナップされているのだから、Nikonというメーカは大したもんである。PC 28mmは特殊レンズなので、通常使用用途ではF2とF2.8の2種から選択することとなる。F2レンズの描写も優れており、重量も345gであるのでさほど大きな物でもない。それではF2.8レンズの魅力は何かと考えると、それは最短撮影距離(20cm)と価格であろう。価格はさておき、最短撮影距離の5cmの違いは予想以上に大きく、接写域におけるF2.8レンズの利用価値(撮影倍率=1:3.9)は極めて高い。接写であればマクロレンズ(Nikonではマイクロレンズ)を用いれば良いと考えがちだが、通常マクロレンズはの焦点距離は50mm、100mm、200mm辺りであり、28mmとはパースペクティブが根本的に異なる。わかりやすく言うと、ある物体をアップにしながら、周りの景色をとりこめるのである。このような接写能力は近距離補正方式(CRC)の賜物である。これはフォーカシングの際レンズに一部を独立に動かして収差補正をする方式である。残念ながらこの方式、AF28mmでは採用されていない。そのためか、AF28mm F2.8Dでは最短撮影距離が25cm止まりになっている。CRCは機構的にコスト高になるからであろう。この高い近接性能と描写力を評価してか、Ai Nikkorの中でもこのレンズの人気はかなり高い。
さて光学性能であるが、太陽を直接画面内に入れると若干ゴーストが発生する。しかし、うまく角度を選んでやれば目立たなくすることも可能である。広角レンズで気になる周辺光量であるが、開放では若干不足するものの一段絞ればほぼ問題無くなる。画質は開放から十分シャープであり、絞り込むと本当にカリカリでシャープな描写になる。ああ、これがNikkorの味なんだろうなぁと思う。
フードはしっかりした金属製のねじ込み式のHN-2だ。内面にはナイフエッジ加工と無反射塗装が施されている。800円の低価格フードだが、仕上げに全く手抜きはない。フードと共にこのレンズをF2に装着すると、デザイン・重量バランス共に軽快にまとまる。
2002/1/20
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