Ai Nikkor 35mm F1.4S

発売 1982年2月
小売価格 86,000
レンズ構成 7-9
全長/重量 62mm/400g
最短撮影距離 30cm
フィルタサイズ 52mm
絞り羽根枚数 9枚
その他 近距離補正方式採用

photodo rating = 3.9

    焦点距離35mmは、その画角が人間の通常の視野に近いためスナップに最適なレンズである。50mmは標準レンズと呼ばれているが、「かわ」にとっては穏やかな望遠レンズという感じがする。実際35mmを標準レンズとして用いている人は多い。「かわ」も最近50mmの代わりに35mmを携行することが多くなった。明るさもF1.4であるから50mmに対して遜色無いし、なんと言ってもその画角が心地良い。

    さてAi Nikkor 35mm F1.4Sは、Nikkorの35mmレンズの歴史の中で最大の明るさ(F1.4)を誇る。1980年代前半、Nikonは35mmレンズをなんと5種類もラインナップしていた。このうちAi 35mm F2.8、Series-E 35mm F2.5、PC35mm F2.8は廃品種になったので、現在F1.4とF2.0の2種を楽しむことができる。さすがにF2.8は35mmと言えども暗すぎて現代まで残れなかったようだ。35mm F2.0を大口径と呼ぶ人もいるようだが、35mmの場合F2.0は中口径であり、F1.4が大口径と呼ぶにふさわしい。今でこそ35mm F1.4レンズは各社から発売されているが、以前はNikonとContaxからしか発売されておらず、「かわ」にとって憧れのレンズの一つであった。

    とはいえ、Ai Nikkor F2.0のレンズもその起源は古く描写も定評があり、どちらを購入するか最後まで悩んだ。安価で軽量なF2.0か、少々重くて高価であるが魅惑の大口径F1.4か?ネット上の情報では、F1.4の方がボケ描写、周辺光量、逆光性能、ちょっと絞った時の超高解像度に優れているとあり、レンズデザインもF1.4の方が独特の魅力があったので、F1.4に決定した。う〜ん、この選択は本当に迷った!!

    さて、撮影してみた印象であるが、うわさ通り開放では若干フレアが出て眠い描写だ。しかし1段絞ってやると俄然描写はシャープになる。ただし同じにシャープと言っても、Ai 28mm F2.8Sのようなカリカリのシャープ感とはちょっと異なる。しっとりとした感じと言ったら良いのであろうか?このような描写特性は50mm F1.2Sに通じるものがある。

    周辺光量はとても豊富で、開放でも周辺光量低下があまり気にならない。また嬉しいのが逆光特性の強さである。太陽をモロに視野内に入れても、フレアはおろか、ゴーストすらほとんど出ないのは極めて優秀だ。広角レンズとはいえ、大口径であるため背景はかなりボケる。絞り込んでシャープな描写を楽しむのも良いが、背景がふわっとボケた感じも良いので、開放付近で使うのも楽しいレンズである。

   重量はF1.4の大口径だけあって400gと若干重い。50mm F1.2Sが360gだからそれ以上なのだが、適度な重量感が心地よい。また50mm F1.2程ではないにしろ、鏡筒はちょっと太くなっており大口径らしいグラマラスなデザインになっている。とはいえ、CanonやContaxに比べれば十分コンパクトだ。前ダマは50mm F1.2並に大きく(AiS 35mm f2.0も大きいがAFレンズは小さい)、その反射が美しい。広角レンズらしいドーム状の反射である。また後ダマもかなり大きく、大口径レンズとしての貫禄万点だ。ピントリングが絞りリングよりも太くて全体的に大柄なため、F2に装着した時のデザイン・重量バランスが良い。F4Sとも相性が良好だ。「かわ」の場合、カメラとレンズのデザインバランスを大切にしているが、このレンズはかなりの上位に入る(レンズメーカ製のレンズを使いたくない理由の一つが、デザインアンバランスだ)。フードはメタル製のHN-3だ。28mm用のHN-2と同様、ナイフエッジ加工と無反射塗装が内面に施されている。コーナーが少しラウンドしていて、シャープなデザインのHN-2とは雰囲気が若干異なる。

    F1.4の大口径であるためファインダー像はとても明るく、また背景がうっすらとぼけて妙に立体的で、ファインダーを覗くのが楽しくなる。ピント合わせも容易だ。また別に不思議でも何でも無いのだけど、絞りリングには1.4の指標が刻まれておりこれが妙にうれしい。広角レンズなのにF値1.4という感覚がとても不思議なのだ。Nikon AiAF 28mm F1.4やCanon FD 24mm F1.4のオーナーも、同様の感慨に耽っているのであろうか。
 

2002/1/20


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