Ai Nikkor 45mm F2.8P


発売 2001年7月
小売価格 48,000
レンズ構成 3-4
全長/重量 17mm/120g
最短撮影距離 45cm
フィルタサイズ 52mm
絞り羽根枚数 7枚(円形絞り)
その他 専用NCフィルタ、
専用フード(HN-35)、
専用フードキャップ、
専用リアキャップ、
専用ソフトケース付属

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    NikkorのパンケーキレンズといえばGN Nikkor 45mm F2.8が有名であり、フラッシュマチック的特殊機能(撮影距離に応じ絞り値が変わる)、筐体の薄さ、及び独特の形状を持つレンズフードで人気が高い。フードもかなりレアらしく、フードだけで5万円の値段が付いているのを見たことがある。ということで、GN Nikkorは中古市場でかなり強気の値を付けている。しかし、フォーカスリングの回転方向が通常と逆であり、そのコンパクトネスには魅力があったものの、「かわ」としてはあまり触手が伸びなかった。

 しかしこともあろうに21世紀にもなって、完全マニュアル機であるFM3Aと共に、GN Nikkorの復活とも思えるパンケーキレンズもリリースしてしまったのであるから、Nikonというメーカは期待を裏切らないというか、ここまでくるとただ呆れるばかりである。

 マウント面からのレンズの飛び出しは僅か17mmであり(パンケーキレンズの典型である、Pentax 40mm F2.8やContax 45mm F2.8は18mm)、各社パンケーキレンズの中ではピカイチの薄さを誇る。また、独特のドーム状フードのおかげで、フードをした状態では他社品よりも圧倒的に薄い。レンズにフードは必需品なのであるから、フードまで考慮したデザインは見事である。

 さすがにGN Nikkorのフラッシュマチック的特殊機能は削除されたが、フォーカスリングの回転方向は他のレンズと同一になり、光学系は3群4枚のテッサータイプであるものの45cmまで近接できるようにリメイクされた(パンケーキレンズの最短近接距離は60cm程度のものが多い)。また円形絞りが採用され、ボケ描写にも配慮されている。こうなったらもう、買うしかないであろう。本レンズの導入で、機材を大幅に軽量コンパクト化できるからだ。まさに薄いことに意義のあるレンズであり、標準域レンズとしては若干F値が暗いが、薄さのためなら仕方ないであろう。F値を欲張って中途半端なサイズになってしまっては、本レンズの意義が薄れるからだ。

 フォーカスリングと絞りリングはアルミ合金製で銀色塗装が施されている。アルミ合金と聞いて安っぽいかと思ったが、なかなか高級感に満ちた仕上がりになっている。数字等は、専用フィルタ、フード等を含めて、全て刻印されている点も好感が持てる。ボディが銀色のため、絞り直読窓を覗くと銀地に黒、青、燈色で絞り値が表示されおもしろい。また、ブラックボディーとはデザイン的にミスマッチと考えがちだが、F2 Photomic A(ブラック)やF4ともデザインマッチングはかなり良いと思う。ピントリングと絞りリングは通常よりも細いため、操作しやすいとはいえないが特に問題にするほどでもなく、すぐに慣れるから大丈夫だ。それよりもレンズ着脱リングが省略されているため、レンズ交換が若干やりにくい。またAi Nikkorファンとしては、絞りリングが無いため、カニの鋏が装着できないのが残念である。

  レンズ外装が銀色であるため、銀色の専用NCフィルタが標準装備されている。ちょっとでもフィルタとレンズの色と違っていると気分がシラけるので専用品は有り難い。また本レンズの場合、GN Nikkorと同様、ユニークなフードが用意されている。GN Nikkorのものと若干デザインは異なり、ドーム状の形状を持っている。さらにおもしろいのが専用フードキャップであり、フードをしたままキャップができるよう設計されている。これらの専用アクセサリはすべて標準装備である。従って箱の中身はにぎやかであり、かなりの購入満足感が得られる。

 F2 Photomic Aに装着してみると、大柄なF2もかなりコンパクトに見える。カメラ+レンズの厚みが小さいため、大幅にバッグへの収納性が向上した。これだったら、普通の鞄に楽々収納できそうだ。また、レンズ重量はNikkorレンズ中最軽量(120g)であり、重量級のF2に装着しても全体で925g程度である。FM3Aであれば、575+120=約700gしかない。こうなると、FM3Aも欲しくなってくる。きっとそのうち購入するんだろうと思う(笑)。

 本レンズはPレンズに区分され信号伝達接点を持っているが、MFレンズである。従って、ピントリングの動きはとても滑らかであり、フォーカシングの動作がすこぶる気持ちよい。本レンズがAFレンズで無くて本当に良かったと思う。尤もAFレンズではこれ程コンパクトに設計できなかったかもしれないが。

 45mmの画角は50mmのそれと大差ないであろうと思っていたが意外と広く、スナップに心地よい適度な画角である。これは思いもよらぬ発見であった。  歪曲はほとんどゼロである。また、口径食はとても小さく周辺光量の豊富さを予感させる。円形絞りのおかげでF5.6までは開口形状をほぼ円形に保つことができるし、レンズ枚数の少なさとスーパーインテグレーティッドコーティングのおかげで逆光にも強い。開放では若干周辺部の先鋭度が若干甘いが、それ以外の領域の領域はシャープである。1〜2段絞ると、画面全域でシャープになる。色乗りもよく、派手目が好きな「かわ」としては好ましい。

 総合すると、趣味性/質感、光学性能、コンパクトネス/軽量性がみごとに合一した一品である。2001年11月には黒バージョンも登場した。白黒(そのうちチタン?)揃えるのも楽しいかもしれない。カメラは趣味なのであるから、こういう楽しみ方もアリだと思う。
 

2002/1/20


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