Ai Nikkor 50mm F1.2S

発売 1981年9月
小売価格 59,000
レンズ構成 6-7
全長/重量 47.5mm/360g
最短撮影距離 50cm
フィルタサイズ 52mm
絞り羽根枚数 9枚
その他

photodo rating = 4.2

    「かわ」の保有するレンズの内で最大の明るさを誇るレンズ.....というよりも、Fマウント用Nikkorレンズの内で最も明るいレンズである。以前はNoct NikkorもF1.2の明るさを誇っていたが、廃品種になったので事実上本レンズが唯一のF1.2レンズとなっている。55mm F1.2は1965年からリリースされていたものの、50mm F1.2になったのは1978年であり50mm化はかなりの難事業であったと推測される。この前年1977にNoct Nikkor 58mm F1.2が発売されている。標準レンズの大口径化に力が入っていた頃であったのだろうか?

    絞りリングからフロント部にかけて鏡胴が徐々に太くなっており、独特の美しいカーブを描いている。この前広がりの形が大口径高級レンズであることを強烈に主張している。そして、そのフロント部には、F1.2の大きな前玉が収まっている。前ダマは照明にかざすとキラキラと輝き、まるで宝石のようだ。このようなレンズの輝きは写真とは何ら無関係、いやむしろ有害であるはずだ。というのは、輝きが強いということはレンズ表面での反射が多いということであり、逆光条件で画質に悪影響を及ぼすからだ。しかしレンズの輝きを楽しむのも立派な趣味の一つであり、大口径レンズオーナーにのみ許された贅沢なのである。

    前ダマも大きいが、後ダマも物凄く大きい。とはいっても、前ダマの大きさには設計の自由度があるが、後ダマの大きさはマウント径で決まってしまうのでやたら大きくはとれない。従って、なるべく大きくとれるよう工夫するしかない。このレンズの場合この苦心が容易に見て取れる。つまり、絞り連動レバーや開放F値連動ピンに光束があたらないよう考慮されており、大きな後玉は完全な円形ではなく、連動ピンを避けるような複雑な形に削られている。このため電気接点のあるAF Nikkorでは本スペックのレンズは作製不可能とのことである。前ダマの美しさと共にレンズ交換時巨大な後ダマを鑑賞するのも、このレンズの所有の楽しみの一つである。

   さて肝心の画質であるが、 さすがにF1.2開放ではフレアが多く遠景描写は甘い。しかし近景ではかなりシャープな像を結ぶのが驚きだ。F1.2開放で遠景を撮ることもないだろうから、この近景の性能には十分満足できるものである。後ダマを限界に近く大きくしているにもかかわらず、開放では周辺光量は低下する。が、F2まで絞るとかなり改善される。遠景描写もF2まで絞るとかなり改善され、F2.8まで絞り込めば相当シャープな像を結ぶ。50mm以上のレンズではボケ味が気になるが、このレンズは合格である。F1.2では条件によっては2線ボケになるが、F2以上に絞り込めば前ボケ、後ボケとも変な癖が無い。「かわ」は背景をうっすらとぼかすのが好きなので、日中であれば大概はF2.8からF5.6の間の絞り値で使っている。しかし、祭りの屋台などの低光量下で、F1.2〜F2.0の絞り値を使う時、大口径レンズのありがたみをつくづくと感じる。

    ところで、F4のファインダースクリーンでは、絞り値2.8以下のボケが全くわからないのは大きな問題である.。例えば、絞り値を2にしてプレビューボタンを押しても、ボケに何の変化も見られない。つまりF4のスクリーンでは、絞り値2.8以下でのフォーカス精度に問題があるということである。F2のスクリーンではこのようなことは無く、ボケもかなり正確に反映されている。その結果、F2を使うようになって、このレンズの開放近くでフォーカスをはずす確率が激減した。

    さてこの50mmレンズ、F1.2の大口径だけあってF1.4に比べるとかなり大きい。しかしF2やF4などの大柄のボディには、これくらいボリュームがあるレンズの方が良く似合う。一方、F3やFM2ではバランス的にF1.4の方が美しいであろう。専用フードはゴムラバーのねじ込み式(HR-2)とスプリング式(HS-12)の2種が用意されている。2種も揃っているところは、さすがアクセサリに手をぬかないNikonである。いずれもコンパクトさ優先のための形だけの浅いフードではなく、深さも十分あり、特にHS-12は金属の質感が抜群である。また、F2とのデザインバランスは、プロフェッショナル的な一種の凄みがある。この凄みは他メーカでは得られないNikon独特の魅力である。
 

2002/1/20


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