Ai Nikkor 80-200mm F4S

発売 1981年10月
小売価格 105,000
レンズ構成 9-13
全長/重量 154mm/810g
最短撮影距離 120cm
フィルタサイズ 62mm
絞り羽根枚数 9枚
その他

photodo rating = 3.6

   スペックこそ華々しくないが、我慢できる重さと明るさがうまくバランスした実用性の高いズームレンズである。その昔(70年代後半〜80年代)、本スペックのレンズは各社から発売されていたが、現在はF2.8(大口径タイプ)とF5.6(小口径タイプ)が主流となっている。しかし、F2.8になると重量は1300gを越すし、F5.6ではISO100のフィルムでは苦しいので、F4(中口径)のレンズを見直してCanonの様に最新設計で発売して欲しい。

 Nikonの200mm中口径望遠ズームは、オート時代(1970年)の80-200mm F4.5まで遡ることができる。その後Ai化され、1981年のAiS化の際、1/3段明るいF4の仕様になった。70-80年前半、本スペックのレンズは、ユーザーにとって羨望の的であった。当時のフツーの一眼レフユーザは、カメラと同時に購入した標準レンズ(50mm)を持っていたが、2本目としては望遠系レンズに憧れたものだ。中でも80-200mm F4は広い焦点レンジをカバーする夢のレンズであったが、かなり高価であったため(カメラボディよりも高かった)、所詮高嶺の花であった。その結果、単焦点(200mm F4)を買うのが精一杯であったと記憶している。

  しかし、当時「かわ」は某メーカの小型カメラと共に安く譲り受けたズーム85-210mm F3.5を持っていた。しかしスペックを無理していたためか、開放で描写は甘く周辺光量低下もかなり激しかった。また、F3.5であるため重く、あまり使い勝手の良いレンズではなかった。こんなに明るくなくても良いから、もう少し軽くて開放からシャープなレンズが欲しかった。当時コンパクトな新型80-200mm F4.5が発売されており、良く写りそうな気がして欲しかったが(後年知ったのだが描写は良好らしい)、購入するには10万円近い価格は高すぎた。

 一方Nikonはと言うと、既に書いたように1981年にAiS(F4)となった。カニ爪と銀の着脱リングが美しく、とてもデザインバランスの良いレンズとしてNikkorレンズカタログを飾っていた。やがて時代はAF時代となり、Series-E 70-210mm F4がAiAF Nikkorとしてリメイクされたり、AiAF Nikkor 70-210 F4-5.6が発売されたりしたが、幸いにもこのレンズは1990年代中盤まで生き延びることができた(少なくとも1996年12月のNikkorレンズカタログで確認できる)。

 以前から気になる存在であったので、中古ショップ巡りの際にはウオッチを続けてきたが、最近綺麗なタマが少なくなってきたのに気付いた。廃品種になり約5年が経過しているのだから、当然なのかもしれない。綺麗なのを見つけても結構な値段が付いている。綺麗で手頃なブツを見つけたらゲットしようと思っていたので、都内の中古ショップで格安の綺麗なタマを見つけたときは、思わず店員を呼んでショーウインドウから出してもらった。手に取ってみるとかなり綺麗なタマである。・・・などとチェックをしながら、ズームリングを動して驚いた。なんて確実でスムースな作動感だろう。さすが定価10万円のAiSズーム!すっかり本レンズの虜になってしまい、これを持ち帰ったのは言うまでもない。

 本レンズは、180000番台からナンバリングされており、途中で(恐らくは200000番以降)コーティングが変更されている。1992年のレンズカタログに載っているのは30XXXXであり、「かわ」の物は26XXXXであるので、「かわ」の購入した物は80年代後期から90年代初頭に生産されたものではないかと想像している。購入時のエピソードでも述べたように、リングによるズーミング・フォーカシング動作はきわめて滑らかで、精密感にあふれている。このフィーリングは、以前使っていた某メーカのズームレンズやSeries-E 75-150mm F3.5とは別次元であり、操作していてエクスタシーを感じそうだ。この感触をsilky touchと表現した人もいる。

 描写は開放から極めてシャープだ。Series-E 75-150mm F3.5も相当シャープだったが、負けず劣らず素晴らしい画質を見せた。EDレンズは使用していないはずだが、200mm開放でも画質は相当にシャープだ。F5.6のレンズでは暗すぎるため、F4のレンズを選択した経緯もあったので、開放描写がソフトでは意味がない。ズームレンズにも関わらず、開放でも周辺光量低下は目立たずF5.6でほぼ完全に均一になる。またボケ描写も素直である。200mm域では1.2mまで寄れるので、花の撮影にも重宝しそうだ。6Tのクローズアップレンズでとてもシャープな描写をするとの報告もある。こちらも一度試してみたい。Series-E 75-150mmの場合もう一つ対象を引き寄せきれない嫌いはあったが、本レンズは長焦点側が200mmまであるので不満はかなり解消された。反面、重量はかなり増えてしまったが・・・。
 
 

2002/1/20


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