Nikon F2 Photomic A


カメラがステータスであった頃の最高級機。
最近、メカニカルカメラの最高峰として人気が高まっているようです。

 
小売価格 107,000
重量 805g

 
    所謂Nikon Fシリーズの2代目である。伝説的FとロングセラーF3の影に隠れて、これまであまり注目されていなかったが、近年Fシリーズにおける機械式カメラの完成形として評価が高まっているようだ。F2に関する冊子も最近数多く出版されている。正当に評価されるのは大いに結構だが、中古価格の高騰が気になる。最近タマ数も減ってきているようだが、気のせいであろうか。特にフォトミックAやフォトミックASのようなAi対応のバージョンが特に少ないような気がする。

    さて、F2は「かわ」にとって特別なカメラである。196X年生まれの「かわ」としては、多感な少年時代がF2の現役時代と完全にオーバーラップしており、他のカメラ好きな少年たちと同様F2は憧れのカメラだった。カメラ業界の現状からすると少々奇妙に聞こえるかもしれないが、当時Nikonはカメラメーカの中でも別格の存在であって、しかもF2はそのNikonの最高機種として君臨し、本当に雲の上の存在だった。1980年以降にカメラを始めた方々には、Nikonが特別なカメラメーカという認識はきっと無いと思う。しかし1970年代は、カメラに限らず腕時計、ライター等がステータスになりえた時代であったのだ。古き良き時代の話である。
Fと異なり、F2は内蔵露出計使用が前提となっていたから、アイレベルファインダーではなくフォトミックファインダーが標準仕様だった。1977には懸案のAi化が行われ、レンズの着脱がワンアクションで行えるようになった。以降フォトミックファインダーに代わって、Ai対応のフォトミックAファインダーが標準仕様となった。ところで、このフォトミックAファインダーを装着したF2は他のカメラと一風変わった風貌で、それが何とも言えず魅力的であった。通常の一眼レフでは、ペンタプリズム形状を反映してファインダー頂上はとがっているのが普通であるが、F2フォトミックA(S、SB、ASも同様)では何とも無骨な形をしている。それがとても個性的であり、当時少年であった「かわ」はそこにプロ機の威厳を感じていた。最近フォトミックファインダーを分解して分かったことであるが、この独特の形は必然であって、単なるデザイン上の戯れではないということだ。視野率100%を確保するため、それなりにペンタプリズムは大きいのであるが、そのプリズム上に直径4cm程度の煽動用リング抵抗が取り巻いているのだ。また、ファインダーの中はまさに精密機械で、各種の部品が所狭しと並んでいる。特に、絞りやシャッター速度情報を機械的にリング抵抗に伝えるための歯車類が多い。さながら、機械式時計の中と言ったところである。ファインダーが高価であったのもうなずける。当時フォトミックAファインダー単体で35,000円であり、フォトミックASファインダーに至っては59,000円であった。フォトミックASファインダーの値段で、ASAHI Pentax MXを買っても約1万円のおつりが来るわけだ。

    というわけで、F2の価格は当時の少年にはあまりにも高すぎた。Nikon F2 フォトミックAの標準小売価格は当時¥10,2000であり、ブラックボディーだと¥10,7000、50mm F1.4レンズ付で¥13,8000だったのだ。当時、既に中級機のFM、FEなども発売されていたが、やっぱりNikonは一流メーカー、量販店での値引率も低かったため実売価格は高く、結局Nikonが欲しくてもあきらめざるを得なかった友人が多かったと記憶している。当時売れていたのは、Olympus OM-1、Canon  AE-1、Pentax MX, MEだった。いずれも定価で5万円前後のカメラであった。

    「かわ」もその例に漏れず、初めての一眼レフは某メーカの小型一眼レフだった。機能的には悪くは無かったけど(プレビュー機構、高い視野率等)、小型化の弊害からかシャッターユニットの信頼性が低く2度も故障に見舞われた。2度とも低速シャッター速度の不調だった。これには本当に頭に来た。今風の表現を用いれば、キレたと言ったところである。また、質感・デザイン的にもオモチャっぽくてどうも気に入らなかった。というわけで、今度カメラを買うとしたら絶対にNikonのF一桁であると堅く心に誓ったものの、写真に対する興味も失せ、学生で金も無かったし、社会人になって1992年にNikon F4を購入するまでカメラからは遠ざかっていた。

    F2を購入したのは20年以上経過したつい最近のことだ(1999年8月)。発売後22年が経過しており、修理に不安があったためである。しかし部品交換を伴わないオーバーホールであれば未だNikonで受け付けているし、関東カメラサービスではプリズムをはじめとした各種部品、露出計のCdS交換まで受け付けてもらえる。ここまで修理体制が整っていれば安心して使える。この辺の修理体制の充実は、さすがNikonのF一桁シリーズといったところだ。面白いのは、シリコンフォトダイオードを使ったF2 Photomic ASの露出計修理は受け付けてもらえない。シリコンフォトダイオードの出力増幅用にICが用いられているためだ。CdSに比べシリコンフォトダイオードの劣化は少ないが、このようにICが壊れたらもはや修理ができない。びくびくしながら使用するのは精神衛生上良くないので、CdSを用いたPhotomic Aを選んだ。

    カメラとしての性能はさすがNikon F2、基本はしっかり押さえられている。
 

1. 10万回以上が耐久性があり、ブラックアウトが短くタイムラグの無いシャッター

パシッと歯切れの良いシャッター音。スナップ等で気になるときがあるが、シャープな感触がとても良い。タイムラグの短さは歴代Fの中でも最短だそうである。低速ガバナーも安定しているし、1/2000秒もポジで使っているが露出に問題はない。
2. 中間シャッターの使用可
F2ではX接点(1/80秒)以上での中間シャッター値が保証されている。X接点のシャッター速度が遅いので、この機能はとても実用的である。F4のようにX接点=1/250秒だったら、使用機会がかなり限られてしまうに違いない。X接点シャッター値が遅いのも、役に立つことがあるものだ。
3. フォーカシングしやすいファインダーおよびファインダースクリーン
F一桁の伝統に従い視野率は100%を誇る。そういう意味では、F4もF5も視野率は100%なのだが、何と言ってもF2の美点は、単焦点レンズでのフォーカシングのしやすさ(ピントの山のつかみやすさ)であろう。F2の時代は単焦点レンズ中心であったから、フォーカシングスクリーンが明るい単焦点レンズにオプティマイズされているようだ。例えば、F値が2より明るいレンズを装着しフォーカシングを行うと、ボケの中からフォーカス面が浮き立つように現れてくる。マニュアルフォーカシングにエクスタシーと言っても良いであろう。反面、F値が2.8を下回ると途端に画面が暗くなる。一方F4やF5では、フォーカシングスクリーンがズームレンズにチューニングされているためか、暗いレンズではフォーカシングがやりやすいのに対し、明るい単焦点レンズではいまいち微妙なピントがわかりにくい難点がある。とはいえ、F4やF5(特にF4)のファインダーはAFカメラ中最高のものの一つである。
4. 露出計指針、絞り値、シャッター速度表示が一箇所に配置された情報集中ファインダー
ファインダー視野下部に、直読式絞り値、露出計指針、シャッター速度が集中表示されている。多くのAF一眼レフが採用しているように、ファインダー下部は視線が自然に集まる特等席であり、この位置がとても見やすいことは言うまでもない。
5. スムースな操作感のフィルム巻き上げレバー
F3ほどではないにしろ、F2の巻き上げ感も大変にスムーズであり、好感の持てる物である。
6. 質感の高いボディー
分厚い金属の質感は最高と言って良いであろう。信頼性と同時に趣味性も十二分に満たしてくれる。
7. 交換式ファインダー
F一桁シリーズ伝統の交換式ファインダーである。Fと同様、F2も交換式ファインダー機能を利用し進化を遂げてきた。しかし何と言っても、ファインダー交換式のメリットは、ファインダースクリーンの清掃がしやすいことではないだろうか。ファインダー内にゴミが入ってもノープロブレム!ガチャッとファインダーをはずし、シュシュッとブロアーでゴミを飛ばして、清掃終了!ところで、ファインダーはおろか、ファインダースクリーンさえはずせないカメラで、万が一ファインダー内にゴミが入ってしまったら、どうすれば良いのであろうか?心配で夜も眠れなくなってしまいそうだ。
2002/1/15


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