Nikon FM3A


 

 
 
小売価格 96,000
重量 570g

 
F3、FM2が生産中止が発表され、いよいよ良き時代の終焉かと思われた矢先、突如現れた。その後、Pentax LX、Olympus OMシリーズの生産中止が相次いだため、結局小型金属MF一眼は、 FM3AとLeica R6.2だけ(他にもありますか?)になってしまった。 FM3A発売の経緯で興味深かったのが、「かわ」の記憶が正しければ、F3、FM2の生産中止のアナウンス後、 しばらく経ってからFM3Aの発売が公表されたことだ。普通に考えると、ユーザーを安心させるためには、 FM3A の発売のアナウンスはF3とFM2の生産中止のアナウンスと同時かそれよりも前にすべきであった。ところが実際はそうではなかった。この空白の期間は、Nikonのしたたかなマーケティング戦略であったのではないかと推測している。つまり、 NikonがMFを放棄すると他社に思わせ、他社のMFカメラ生産を集結せしめるものであったのではないか?そうすれば他社MFカメラユーザも取り入れることができるであろうから。
 
 

 発売の経緯はともかく、今時金属製のMFカメラを新調してくれるとは誠に有り難いことである。ここまでしてくれるのはNikonだけだと思う。中級機であるので質感や信頼性はF一桁にはかなうべくもないが、New FM2やFE2の持つ美点を受け継ぎ、全速ハイブリッドシャッター機として生まれ変わった。FM3Aは単なるノスタルジアではない。ロングセラーであったNew FM2に電気シャッターを搭載し、AE機能、TTLストロボ機能を追加しつつ、サイズの巨大化と操作性の複雑さを避けスマートにまとめたのであるから、これは格段の進歩と言って良いであろう。小型のボディに必要最低限の機能が詰め込まれており、凝縮感と機能美に溢れたフォルムではないかと思う。少々使った上でのインプレッションを述べてみたい。
 
 

  • F一桁に比べ、軽くてコンパクトであり、20年前のFM、FEの思想を正しく受け継いだカメラである。特にAiP 45mmとの組み合わせはとても軽快だ。おかげでF2が巨大なカメラに見えてきた。カメラのサイズに対する感覚が1980年頃に戻ったようだ。
  • AEが使えるのでスナップの便利。X=1/250secなのでTTLストロボも生きる。AEロック&絞りリング回しで露出補正も簡単(露出補正リングなどは使う必要なし)。とにかく軽快にスナップできるフィーリングがよい。但しAEロックボタンは、もう少し左側が良かった。間違えて押しそうになる。まあ、このへんは慣れの問題か。
  • 追針式露出計はマニュアル時に便利。しかし、表示の裏側が素通しになっているためか 、背景が暗いと見にくい。F2 PhotomicAも針式(定点式)であるが、そのようなことはないので、 背景をF2と同様、光をディフーズする白板にすれば改善される?
  • ファインダースクリーンは良質。プレビューでF2までボケの変化が確認できる。但しボケ方は素直ではなく、スクリーンの回折パターンが見えたような感じ。New FM2と同様、光学系の色収差のため視野の隅では像が甘い。この辺のクオリティーはF一桁に及ぶべくもない。
  • 個人的にデザインは好み。尖ったペンタ部は、直系ではないが、F(エフ)の末裔であることを主張しているようだ。デザイン的なアンバランス、間延び感がなく、高機能がキュッと凝縮された感じがとても好印象。いろいろ言われているロゴの斜体も、個人的にはそれほど違和感は無い。欲を言えば、プレビュー、セルフタイマーレバーは金属の方が良かった。
  • Photo equip社のグリップ(写真参照)を付けるとホールディングが安定する。「かわ」のように手の大きい人にとって、FM3Aは少々小さすぎる嫌いがあるのでグリップはオススメ。180mm F2.8のような重いレンズを付けても問題なし。
  
 中古品であれば、70〜80年代のコンパクトな金属カメラを見つけ出すことができる。しかしこの頃のカメラは既に古く、メンテナンス不可の物が多い。本カメラは 現行品である。Nikonもロングセラーにしたいと宣言しているし、生産中止後のNikonの手厚いサポート体制も考慮すれば、今後かなりの長期間に渡り修理の心配無く安心して使うことができる。このカメラの修理が不可になっている頃は、世の中はデジタルカメラにすっかり席巻されていることであろう。
 
2003/5/17


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