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楽譜(参考運指つき)
楽譜(音の高さと長さの情報以外はほとんど削除した状態)

フランス組曲 1番 ニ短調 BWV812 〜 アルマンド

曲集の冒頭ってのは、あなどれないものが多い。

というわけで、このフランス組曲の1番はけっこう難しいです。
全6曲中では5番の次ぐらいか(5番のジーグは自分には絶対弾けない)。
さらにアルマンドだけ取り上げるなら、他の5曲のどのアルマンドよりも難しい気がする。
ずいぶん前におぼえた曲で、バッハの鍵盤曲中でも特に付き合いの長い一つですが、いまだにうまく弾ける自信がありません。
初期の段階で、無駄に速く、雑に弾くクセがついてしまい、いまだにそれが抜けていないようです。
当時はベース、ドラムと一緒にオーバードライブをかけたオルガンで演奏していたので、多少のミスは気になりませんでした。

いうまでもなく(なんて言い方が通用するのどうか)あの三人組が演奏していた曲です。
ヤナーチェクからのパクリ主題をもとにゴツゴツと不器用に進行して行く歌、間奏に入ると、ニセモノくささ満載のジャズ風フレーズ、それに続くのが、この圧倒的に流麗なバロック舞曲。
ずっこけてしまうほど、感動的です。

このアルマンドの美しさはただごとじゃありません。
何というか、洗練されきっていない美しさ(←注1
何か言っているようだけれど、何を言っているのかわからない美しさ(←注2
何から何まで中途半端で、無駄のかたまりのような美しさ(←注3

これはバッハの到達点の一つではなかろうか。
そりゃフーガの到達点、カノンの到達点に比べれば問題にもなりませんけどね。
ただ出来がよすぎるフーガ、カノンってのは、バッハと時代の関係が不明瞭なんですよ。
バッハがまぎれもなくバロック時代の作曲家だったことを、それも凄く優秀なバロック音楽の作曲家だったことを、このアルマンドは示しているように思えます。
優秀すぎて、けっきょくこれも舞曲としては使い物にならなかったんじゃないかという気がします。


注1) バロックを未熟な古典とする失礼なものの見方です。
注2) フーガでもカノンでもない、これは舞曲だということを忘れたものの見方です。
注3) これぞバロックです。