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鍵盤用作品の難易度ってのは大体どれを見ても胡散くさいものばかりです。
自分で書くのも何ですけど、前ページで示したものにもいくつかウソがある。
平均律1巻1番のフーガ、2巻9番のフーガは、本音をいえば☆☆またはそれ以下です。
曲のつくりが複雑なのでおぼえるのは大変ですが、いちどおぼえてしまえば難しいと感じる箇所はほとんどありません。
単純で動きの速い組曲の間奏曲のほうが間違いなく弾きにくい。
それでも相手は鍵盤楽器の聖書とまで崇め奉られている平均律曲集。
初心者用の曲や組曲の軽い間奏曲あたりと同列にあつかうのはあまりにも恐れ多いってことで、リスペクト加点により☆☆☆としただけのこと。

こういう何だかわからないリスペクト加点は、他の難易度表でもよく見かけます。
たとえばショパンの「雨だれ」は上級用として扱われることが多いみたいですけど、どう考えたって子犬のワルツのほうが難しいですよ。
モーツァルトのイ短調ロンドとトルコ行進曲くらべたら、もちろんトルコ行進曲のほうが難しい。

何だかわからないリスペクト加点という言い方は実のところ正しくなくて、音楽としての中身の違いってものがたしかにあるんですけどね。
雨だれと子犬のワルツ、イ短調ロンドとトルコ行進曲、きき比べればその中身の違いは素人耳でもわかります。
「こりゃまるっきり格の違う音楽だろ」と。
でも、自分のような凡人(またはそれ未満)素人鍵盤弾きにとっての難易度ってのは、そういった音楽としての中身や格の違いじゃなく、どれだけ指の運動能力を要求する曲なのかってことなんで。

(トルコ行進曲は本気で難しいと感じています。こんな曲を難しいなんて言っているボンクラ野郎が、人類の宝といわれるバッハのフーガやゴルトベルク変奏曲を紹介するなんて恥ずかしくないのかと、まあ恥ずかしくはないけどごめんなさいというか恥ずかしくなくてごめんなさいというか)

以下、個人的な体感とは別に、どこかの国の権威筋みたいなところが示した難易度表の一部をのっけておきます。
組曲はまとめてなんぼじゃなく、細かく一曲ずつばらして示してくれたりしてとても親切。
いっぽうで平均律曲集なんかは、48曲まとめてグレード7に押し込んだうえ、その中で難易度順に並べる、みたいな大雑把な示し方。
全体としてはかなりトンチンカンな印象を受けます。
組曲では何といってもサラバンドが高すぎ、クーラントが低すぎ。
難しいサラバンドなんて存在しません。簡単に弾けるクーラントなんてありません。
ついでにフランス組曲5番のアルマンドや6番のジーグが平均律48曲のどれよりも難しいなんて信じられません。
(仏5番ジーグは確かに難しい。一生弾けない気がする)



イギリス組曲



フランス組曲



インヴェンション & シンフォニア



平均律クラヴィア曲集