新世紀一発目の更新は、FSSの話ということにあいなりました。
 おそらく、今世紀中にも完結しない作品でしょうから、いち早く作者である永野護氏には延命のためのサイボーグ化手術を受けていただきたいものです。多分、最終的には23世紀くらいまで持つ体が必要になるのではないでしょうか。

 さて、空前絶後のボリュームと価格を誇った副読本『ナイトフラグス』の発売直後より、ファンの間からは一刻も早い連載再開を望む声が悲痛なまでに叫ばれ、喉から血を流したファンの屍が累々と積み上げられている昨今ですが、まだ生贄の数が足りないようで、一向にそういった希望の見える情報は伝えられておりません。いやになっちゃう。

 そんななか今月号、FSSの連載の載っていない月刊ニュータイプ誌をパラパラながめながら、「一ページ独占状態の榊さんに比べて、この大阪の扱いはなんだ!」とか「次のライダーってなんとなくガンダムっぽい」とか「野田宇宙元帥万歳」とか呟きつつ、のらりくらりと気だるい午後を過ごしておりましたら、一枚の広告ページでぴたりと僕の手と心臓が止まりました。

 ……心臓はそのままだとヤバいので慌てて動かしました。
 トイズプレスの広告のページに、「A HAPPY NEW CENTURY」というメッセージを添えて、モノトーンで印刷された、今までに全く見たことの無いMHが公開されていたのです。
 上半身だけの公開です。
 とにかく目を引くそのフェイスマスク。髑髏です。そして左右から長いツノが伸び、途中で死神の鎌のように鋭く折れ曲がっています。
 じっと見ていて思い出したんですが、これとそっくりなデザインのメカが、『マジンガーZ』にいたような気がします。
 それゆえに、こーゆーのがFSSの中でも許されるのか! というショックを受けたのでありました。
 ボディのデザインは、全体に華奢な感じで、MHというよりは永野氏が他の仕事で描いているシェル似です。「じつはこれFSSじゃなくてシェルブリッドなんじゃあ」という妄想もよぎったんですが、このロボットの肩には、ナイトオブゴールドやシュペルターのものと同じ、ナイトマスターの称号が燦然と輝いております。
 ということは、これはもちろんFSSに登場するデザインで、この騎体を駆るヘッドライナーはかなり名のある、つまり僕ら読者が知っているような騎士であるはずです。

 ここにきて、そのMHの横に、帽子を被った女騎士が、カラー付きで印刷されていることにやっと気がつきます。
 ぱっと見て名前が出てきません。しかし、どこかで見たことがあります。手に持った長ドスを肩に担いで、鮮やかなブルーのアイシャドウを塗った瞳は悠然と余所見をし、薄紫のエナメル質感のボディコン服の上から藍色のコートを羽織り、首にはチョーカーふくらはぎはロングブーツ、太腿が剥き出し。
 記憶の隅で引っ掛かったイラストを確認するため、月刊ニュータイプ誌の先月号を引っ張り出します。
 運良く、毎年恒例の豪華イラストレーター陣の描き下ろしカレンダー付録は、そこに挟まったままになっていました。
 このカレンダー、毎年最後の一枚は必ず永野氏が手がけ、しかも大抵の場合は僕らがびっくりするような仕掛けが施されているのです。数年前にプラスティックスタイルのスーツに身を包んだキャラクターがはじめて公開されたのもここでした。
 その今年の一枚、2002年上半期の日付が半年分記されているその上に、やはりこの女騎士のイラストは既出でした。並んで、スタンダードなプラスティックスタイルスーツに身を包んだファティマも一人。
 ここでまたびっくりです。そのファティマの腕には、真紅のダガー、AKDの紋章が刻まれております。このファティマのパートナーはこの女騎士でしょうから、ということはミラージュの騎士でもあるということになります。

 誰だ?誰だ誰だ誰だ?
 ミラージュで、こんな突飛なデザインのMHを駆るような、ナイトマスタークラスの、魔導大戦の時代に活躍する騎士って……。
 あ。
 きっとスパークです。
 イラストの女騎士はぱりっとしたロングヘアーで、スパークが過去に連載に登場したときは壮絶なモヒカンヘアーを長々と垂らしておりましたがそこらへんはウイッグか何かを使っているんでしょう。
 まあ違っているかもしれませんが、間違った予想を立てるのはこのコーナーの習慣のようなものでもありますから、かまわずいってしまいます。

 それにしても、なんという禍禍しいデザインのMHでありましょう。
 名前とかぜんぜん予想できません。AKDの未出MHなら、ひょっとしたら「フレーム・ハカランダ」かなとも思いますが、あれはアイシャが駆るはずですし。


 たった一ページ、一枚のイラストでも、僕らは右往左往させられます。角川書店もイイ商売です。
 ああ、はやくはやく連載を再開してください。



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