九月号発売から約二週間、ようやっと今月の「読み解け」に辿りつきました。
FSSという作品の最大の属性はやはり「ロボットマンガ」であるということを教えてくれた今回の内容、さっそく見ていきましょう。
表紙
少年のような面差しの女性のモノクロイラストです。
直感ですが、先月号で手首だけ登場した女性騎士ナイアス・ブリュンヒルダかと思います。違うとしても、ぱっと見ジャコーやユーゾッタ、クリスティン、ダイ・グ、ズームらと同じ100歳(地球年齢で二十歳)前後のキャラクターのようですから、これから彼と彼女らの紡ぐメインストーリーに絡む人物なのではないかと推測されます。
それにしても、これくらい足首の美しい女性が、現実のどこかに居ないものでしょうか。
最初のシーン:ワックストラックス店内にて
今回は、一ページ、一コマごとに丁寧に見ていくのではなく、物語の流れに即したシーンごとの読み解きで行きたいと思います。これだけ遅くなっちゃったんですから、いつものように、スピード+細かさを売りにする必要はないですよね。
戦争の中継を見て盛り上がる血気盛んな騎士達を、アイシャとジョルジュが横目で眺めています。
騎士達は、重楷や斧で武装したAトールを実剣で次々と捌く黒騎士のデコースに感嘆の声を上げていますが、アイシャやジョルジュから見れば、スピードに勝る実剣の方が的確に敵MHの急所を大きな貫通力で攻撃できるのですから、デコースのやっていることのほうが当然なわけです。
二人の後ろにはジャコーと三条香が無言で控えています。元々、ワックストラックスのマスター、ジョルジュ・スパンタウゼンはジャコーが現団長を務めるイオタ宇宙騎士団の騎士なのですから、この繋がりも当然です。
ジョルジュが店を閉めてまでついてくるかは解りませんが、この後、アイシャとジャコー達が行動をともにする可能性は高いと思われます。ジャコーもアイシャもミラージュ騎士で、ミラージュの所属するAKDは表向きこのハスハ動乱を静観することになっていますが、実際にはこのように個人レベルで多くのミラージュがハスハ入りするようです。
ところで、六コマ目のアイシャの背景で基本的なマンガの表現技法であるところの「カケアミ」が使われております。中学時代にひたすらこれをやった経験のあるてなしもは、なんだか懐かしかったです。
こういった技法で表現される、終盤の、晴れ渡った大空の元で軍事国家同士の主力軍団があいまみえるシーンと、この暗い地下の酒場のシーンの明度の対比が面白いです。
二つ目のシーン:アララギ・ハイトの脱走
顔はカイエンに似ているものの、騎士としての能力はてんで低く、おまけに性格も悪そうな騎士警察アララギ・ハイトが、ハスハで起こっている大乱戦のニュースを聞いて、戦に乗じて一旗上げてやろうと職務を放棄して脱走します。
単騎で大国の騎士団を相手に大暴れするデコースのニュースは、こんなふうに星団中のあちこちで、野心ある若者達に火をつけてしまっているのです。
このハイト、このあと意外な活躍をするらしいので要注意です。
三つ目のシーン:バキン・ラカン帝国の参戦
ところを夜のバキン・ラカン帝国に移して、展開されているのはハスハの危機を救うべく騎士団を派遣したいと申し出る騎士団長ママドア・ユーゾッタと中立を守ろうとする若き聖帝ラ・シーラの押し問答です。
何かにつけてまだ未熟であるとまわりの人から評価されてしまうラ・シーラは、今回も母親の前聖帝ミマスの助言を丸のみする形でユーゾッタの出陣を許してしまいます。なんだか頼りないぞ聖帝。
騎士の登録と任命を司る、ある意味で星団でも最も権威のあるお人なのですから、おそらくはこの後、成長を重ねていって立派な人物になるのだとは思いますが、現時点では立場に振りまわされる子供そのもののように感じられます。がんばれラ・シーラ。
今回の最終シーン:大平原に展開するメヨーヨ朝廷軍と、フィルモア精鋭軍の対峙
さて、今回の目玉シーンです。
まず紙面に登場したのは、なんだか凄いことになっちゃってるクラーケンベール・メヨーヨ大帝です。コミックス六巻でファティマ専用の超高級売春宿の迷惑客などをしていた彼ですが、美少年顔はそのままに、髪は当時以上に半刈り、戦の興奮がおさまらないのか目蓋から額にかけてのイレズミはまだくっきりと浮かび上がっていて、オマケに鼻の下には細い二本のドジョウひげです。
狂気を孕んだ武人の性とこのカブキっぷり、日本の戦国時代の雄である織田信長を連想させます。
その戦闘力はさすがに確かなもので、ナカカラ王国国境の防衛騎士団を苦も無く粉砕した様子です。MHから降りてこれからの戦略を、指南役と思われるパイドル卿と相談しています。このパイドル卿というのは、やはり初代黒騎士ツーリ・パイドルの血筋の者なのでしょう。二人の背後には、メヨーヨ朝廷が正式採用したというドラゴントゥース抜きのMH新型アシュラテンプルと、そのスペシャル版にしてクラーケンベールの専用機、ブランベルジュテンプルことMH姫沁金剛。
なんだかものすごくあてずっぽうな作戦を立てて、クラーケンベールは進軍を指示します。これが許されるだけの実力をこのメヨーヨ朝廷軍が持ち、また、そういう指示がゆるされるくらいにクラーケンベールは兵達から支持されているということがわかります。
と、そこの前方に「超ド級エネルギーフィールド」が発生します。
大軍団のテレポート・アウトです。
発せられるエネルギー波を集めて、敵の割り出しを行うクラーケンベールのファティマ・アンドロメーダが、あることに気が付いて絶句します。敵は、わざわざテレポートの母船から星団識別信号を発信してきたのです。
思わずクラーケンベールが「相当でかいぞ!!」と声を荒げます。「来た! どこだ!!」
アンドロメーダが叫びます。
「フィルモア帝国ですっ!!」
テレポート・アウトの光の中に、細く、昆虫めいた、殺傷力のカタマリのようなシルエットが浮かび上がります。
右肩に、その歌声で船乗り達に死を呼ぶ海の魔物サイレンの図案が大きく描かれ、全身の各部には、レーダー王家の紋章であるウォータークラウンが刻印されています。
轟音と共に右足を前に踏み出し、姿勢は低く、右手の黒い長剣は横に伸ばされ、左手の盾と一体化した短剣は、これも前に向かって斜め下に突き出されています。
正視することもままならぬ光の中から歩み出してきた、これがフィルモア帝国最強MH、Vサイレン103・ネプチューンです。
その後ろには、長大なポールに大きくフィルモアの紋の刻まれた旗をなびかせる、重MHアルカナサイレンのハートとダイヤが従い、そのさらに後方には、ざっと数えても40騎近い、重装甲のサイレンD型が長大なランスを天に向けて陣形を築いています。
この大迫力の軍勢に、さしものクラーケンベールも「フィルモア帝国とは……」と冷や汗を垂らします。続けて「これは願ってもない……」と来るところが、さすが大帝と申せましょうか。
パイドル卿も、まさか皇帝騎Vサイレンがいきなり前線に投入されるとは思っていなかったようで、かなり慌てています。
皇帝騎Vサイレンは、103ネプチューンと104プロミネンスの二騎があり、そのどちらかにフィルモア皇帝が、そしてもう一方には皇帝と同権力をを持つ皇帝代理騎士ハイランダーが騎乗しています。
美しいブロンドを獅子のたてがみのように広げた美女、クリスティン・Vが、クラーケンベール・メヨーヨ大帝に対して、ハイランダーとして宣戦を布告します。
「引かぬ場合はフィルモア騎士団がお相手いたす!」
この時点で、フィルモアがこのハスハ動乱においてどこまで自国の野心を満たそうとしているかは解りませんが、とりあえずこの場面では、フィルモアはハスハの味方となりました。
サイレンのコクピットから立ち上がり、見栄を切る下着姿のクリスティンの勇ましさよ。
このまま行くなら、クリスティンとユーゾッタも同じ陣営に所属することになりますから、二人のファンとしてはほっと一安心です。
まとめ
今回の内容は、もう「ネプチューンの登場シーンの格好良さ」これに尽きるでしょう。
ロボットはやはり、止め絵で見栄を切ってナンボです。今月号を見てしまうと、ぐっと構えて相手を睨みつける姿勢で心を震わせてくれないようなロボットには、お金を払う気にはなりません!
手短ですが今月はこれにて。
すぐに十月号の読み解けでお会いしましょう。
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