おすすめの星空 





琴座のみっつのダブルダブルスター

ダブルダブルスターとは、日本語なら二重二重星。つまり二重星が二組並んで見えることを言います。
このダブルダブルスターでもっとも有名な星は、やはり琴座のε(イプシロン)星でしょう。
この星は5p以上の口径で100倍前後の倍率をかけると分かるという、望遠鏡の性能を試す
テストスター的な星です。低倍の双眼鏡では2個の星に分かれ、倍率を上げて行くとそれぞれが
さらにほぼ同じ明るさの2個づつの星に分かれ、さらに口径が増すと、同じくらいに見えていた星の明るさが
微妙に異なっているのが分かってきます。(写真では、星がのびたようにしか写っていません)



もうひとつの琴座のダブルダブルはη星。
3等の明るい星で主星ベガから真東に7度ほど行ったところにあります。
η星自身は明るい不等光の二重星ですが、よく見ると同じ視野の中にもう一組、
暗い等光度の二重星があるのが分かるでしょうか?。
暗い方は15pだとはっきりするのですが、口径が小さいと見えないかも知れません。
写真左下に写っている星とセットでご覧ください。



みっつ目のダブルダブルはΣ2470と2474です。
星図の中には二重星の印しか書かれていないものもありますので、
念のためおおよその位置を言いますと、19時10分、北緯35度のあたりでしょうか。
やや斜めに縦に並んだふたつの星がそれです。
こちらのダブルダブルは、中〜低倍率でも分かれる見やすい星です。
こちらも同じ視野に入ってくる孤立星と合わせて5個の星の輝きをお楽しみください。








散開星団Cr399=コートハンガー

こぎつね座の矢座に近いにところにある明るい散開星団で、かなり明るく7×50でも
その平べったい三角形の星の並びが楽しめます。むしろ星の数が限られているので
倍率を上げすぎると散漫になっておもしろくありません。
この平べったい三角形がコートを掛けるハンガーの形に見えることから、こんな愛称が
つけられたのでしょうが、我々日本人(古い世代の)にはちょっとそのようには見えません。
そんなことを言いながら、私はなにに見えるかというと、あのスターウォーズに出てくる帝国軍の戦艦。
時には斜めから見たときのように、そして時には正面から迫ってくるように見えたりします。
星図によってはこの「Cr399」という表示はなく、4〜7の数字が書かれているかも知れません。
ちなみに「Cr」はP.コリンダーという方の作った散開星団のカタログのようです。
写真に写すと全く目立ちませんが、双眼鏡の視野の中ではとても目立つ星団です。







アルビレオ界隈



アルビレオは白鳥座のくちばし(頭なんだけどね)に輝く2等星、白鳥座β星です。
星のことはあまり知らなくても、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を読んだことがあれば、
その中に「アルビレオの観測所」として登場していますから、名前は印象に残っていることでしょう。
その一節を紹介しますと、

(鳥捕りがジョバンニとカムパネルラに)
「もうここらは白鳥区のおしまいです。ごらんなさい。あれが名高いアルビレオの観測所です。」
 窓の外の、まるで花火でいっぱいのような、あまの川のまん中に、黒い大きな建物が四棟(むね)ばかり立って、
その一つの平屋根の上に、眼(め)もさめるような、青宝玉(サファイア)と黄玉(トパース)の
大きな二つのすきとおった球が、輪になってしずかにくるくるとまわっていました。
黄いろのがだんだん向うへまわって行って、青い小さいのがこっちへ進んで来、
間もなく二つのはじは、重なり合って、きれいな緑いろの両面凸(とつ)レンズのかたちをつくり、
それもだんだん、まん中がふくらみ出して、とうとう青いのは、すっかりトパースの正面に来ましたので、
緑の中心と黄いろな明るい環(わ)とができました。それがまただんだん横へ外(そ)れて、
前のレンズの形を逆に繰(く)り返し、とうとうすっとはなれて、サファイアは向うへめぐり、
黄いろのはこっちへ進み、また丁度さっきのような風になりました。・・・・・


読み返してみると、賢治は実に詳しく「アルビレオの観測所」の情景について書いています。
きっとどこかの天文台の望遠鏡で、実際にこの星を見て感激したのかも知れませんね。
で、このアルビレオ、14倍70oでも楽に分離し、その綺麗な色の対比が楽しめますが、
届いたばかりの15p双眼鏡を30倍にして眺め、あらためてその美しさに息をのみました。
ぽっかり浮かんでいるアルビレオのペアの周りに、小さな星ぼしが無数に輝いていて
さらにその後ろ(?)の空には、星に分解されない「ざらつき」が感じられるのです。
高校生の頃、何ヶ月も小遣いを使わないで貯めたお金で買った8pのアクロマートレンズを
ボール紙を丸めた鏡筒に組み込んで作った望遠鏡で、この星をはじめてみた夜の感激が思い出されました。

アルビレオは天の川の真っ只中にあるので、まわりも星だらけ。↑





南の冠座


射手座の南、高度はサソリの尻尾と同じ位なのですが、
4、5等星ばかりの星座なので、つい見落とされています。
でも、台風が過ぎた後などの低空までよく澄んだ夜に「発見」されて
「何だろう?」ということになるようです。
そのくらいこの「星のカーブ」は印象深いもので、
「冠座」に対比した名前が付けられたのもうなずけます。
ちょうど7倍の双眼鏡の視野にスッポリ収まる大きさの
なんともかわいい星座です。

(上の明るい台形は射手座の南斗六星の升。丸が7倍の視野)



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