statements

 針穴は光の軌跡を愚直に描き出す。カメラ・オブスクラを使って画家が絵を描いていた時代に、現代のような感光材料があったとしたら、写真はこんな感じだったのかもしれない。

 絵葉書などの写真で多くの人に馴染みのあるパリの風景を題材にし、手作りのカメラ・オブスクラ(暗箱)による映像で、もう一つの光の真実を提示したいと考えた。

 被写体に対して、小さな開口部(針穴)をどこに置くかで決まる映像は、写真の基盤であり、西欧的なものの見方(point of view)の申し子である。

 しかしながら、人間の眼、身体の延長として改造されてきたカメラで写された写真は、当然ながら人間の眼によるpoint ofviewを体現しており、また、レンズの特性により被写体のすべてを公平に捕らえない。

 これに対し、ファインダーなしで無造作に置かれた暗箱が捕らえる針穴写真は、私たちが日ごろ親しんでいる写真とは異なるpoint of viewであり、無限遠の被写界深度を差別なく愚直に映し出す。

 針穴写真はその露出時間の長さもあって、写真とは、即ち光の軌跡を感光材料の上に描き出すことに他ならないことを実感させてくれる。そこに様々な不便さもいとわない針穴写真の魅力があると思う。

                                                       田所美惠子
Another Point of View - Paris / パリ、もう一つの視点
1995年11月13日(月)〜11月20日(月)
コダックフォトサロン 銀座
 
manual/material/monochrome pinhole photography by Mieko Tadokoro
by          Mieko Tadokoro
PINHOLE PHOTOGRAPHY